「無症候性心筋虚血」は”痛み”がない?原因となりやすい人も医師が解説!

無症候性心筋虚血とは、心筋に血流の不足があるのにもかかわらず症状がない状態をいいます。
症状がないため知らず知らずのうちに重症化し、突然心筋梗塞を起こしたり突然死の原因となったりする重大な病気なのです。
今回はこの無症候性心筋虚血について質問にお答えしましょう。
※この記事はメディカルドックにて『「無症候性心筋虚血」の症状・原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
無症候性心筋虚血の原因と症状

無症候性心筋虚血とはどんな病気ですか?
無症候性心筋虚血とは心筋に送られる血液が虚血(不足)している状況でありながら、自覚症状がない病気です。
自覚症状がないので健康診断などで発見される場合が多く、また重症化してしまい突然死の原因にもなる虚血性心疾患の1つです。主な虚血性心疾患には次の病気があります。
いずれも心筋に必要な栄養分(血液)を送る冠動脈が閉塞してしまうことで、心筋へ送られる血液が不十分になり起こる病気です。
狭心症も心筋梗塞も突然に起こることに違いはありませんが、少なからず前兆のようなものがあります。
ところが無症候性心筋虚血はまったく自覚症状がないので突然心筋梗塞や狭心症の発作を起こす可能性が高いのです。
何が原因で起こる病気なのでしょうか?
虚血性心疾患は心筋への血流が少なくなる・途絶えてしまうなどが原因で起こり、無症候性心筋虚血も同様の原因で起こる疾患です。
心筋へ血液を送る冠動脈が詰まることが大きな原因ですが、冠動脈が詰まる・狭まる原因には次のようなことが考えられます。
- 動脈硬化
- 冠動脈炎症
- 糖尿病など合併症
- 加齢
冠動脈が詰まる原因は動脈硬化ですが、冠動脈の炎症や重度の貧血などでも起こる場合があります。
また無症候性心筋虚血は糖尿病などの合併症によって自律神経に障害が起きることが原因ともいわれています。
加齢が原因で冠動脈の閉塞が起こりやすくなるとともに、高齢になると痛みを感じにくくなることも無症候性心筋虚血の原因の1つです。
無症候性心筋虚血の症状を教えてください。
心筋に血液を送る冠動脈が詰まったり狭まったりして、心筋への血流が不足した状態が続いていてもまったく自覚症状がないのが無症候性心筋虚血です。
胸の痛みや動悸という症状がないため、突然心筋梗塞を起こしたり狭心症で倒れたりする可能性が高いのです。
また知らないうちに重症化することもあり充分な注意が必要になります。
無症候性心筋虚血と似た症状の病気はありますか?
狭心症・心筋梗塞は同じ虚血性心疾患の病気として似た症状となります。
動脈硬化を要因として起こる病気ということも同じです。
動脈硬化を引き起こす原因となる高血圧や脂質異常症・肥満・糖尿病などはそのまま虚血性心疾患の原因でもあり、無症候性心筋虚血の原因でもあるのです。
その他にも脳卒中・大動脈瘤など動脈硬化が原因となる病気は無症候性心筋虚血と似た症状の病気といえるでしょう。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの基礎疾患のある人は無症候性心筋虚血になりやすいといわれています。
また狭心症や心筋梗塞の既往歴がある人もなりやすいので充分に注意が必要です。
生活習慣を見直し、食生活にも注意をすることが大切です。
たとえば喫煙や偏った食事は発病のリスクを高めます。
ストレスをためることも無症候性心筋虚血の発症につながるのでできるだけストレスをため込まないようにする必要があります。
特に高齢者は発症しやすくなるためより気を付けるようにしてください。
編集部まとめ

今回は心筋に送られる血液が虚血状態にあるにもかかわらず自覚症状のない、無症候性心筋虚血について解説しました。
自覚症状がない疾患のため、重症化すると突然死や心不全などを起こすことも考えられる病気です。
怖い病気ではありますが定期的に健康診断を行うことで発症を抑えることができ、適切な治療を行い生活習慣を見直すことで完治も可能です。
特に高血圧や糖尿病などの基礎疾患のある人は、動脈硬化を起こさないよう充分注意してください。