「低置胎盤」の症状・原因・なりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/03/21

胎盤は、母体から胎児へ栄養や酸素を送る大切な役割をもっています。通常は子宮の上の方に作られますが、作られる位置に異常がみられた場合は注意が必要になってくるのです。
そんな胎盤の位置異常のひとつに、胎盤が子宮の下の方に作られている低置胎盤が挙げられます。
この記事では低置胎盤とはどのような状態なのか、症状・原因・前置胎盤との違いについても解説しています。

監修医師:
前田 裕斗(医師)
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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
※この記事はMedical DOCにて『「低置胎盤」の赤ちゃんへの影響・出産リスクはご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
低置胎盤の症状と原因
低置胎盤の症状を教えてください。
- 低置胎盤とは、胎盤が内子宮口(子宮の出口)の近くにある状態のことを指します。内子宮口と胎盤の最も近い部分が2センチ以内になると、この診断がなされます。痛みなどの自覚症状はほとんどなく、妊婦健診の際に指摘されることがほとんどです。
- ただし急な出血がみられることがあるので、性器出血がみとめられた場合には速やかに受診することが必要です。
- 妊娠30週未満の場合は、子宮が大きくなるにつれて胎盤の位置が上方に移動し、症状が改善されることがあります。妊娠32~34週頃になっても症状が改善されない場合は、帝王切開での出産が予定されることもあります。
低置胎盤を引き起こす原因を教えてください。
- 胎盤は、受精卵が着床した場所に作られるもので、通常だと受精卵は子宮の上の方(子宮体部)に着床し胎盤を形成していきます。
- その受精卵が何らかの形で子宮内の低い位置(子宮下節)に着床したことで、胎盤の位置が通常より低い低置胎盤となりますが、なぜ受精卵が下の方で着床するのか、詳細な原因はわかっていません。
- また、胎盤の形成が正しく行われなかった場合にも発生する可能性があるといわれています。
前置胎盤との違いを教えてください。
- 低置胎盤と前置胎盤の違いは、胎盤が内子宮口を塞いでいるかどうかという点です。
- 胎盤が内子宮口の全部もしくは一部を塞いでしまっていると、前置胎盤の診断となります。
- 前置胎盤と診断された場合は全て予定帝王切開での出産となります。
- 一方低置胎盤の場合は、胎盤は内子宮口を塞いではいないものの両者が非常に近い場所に位置している状態です。
- 明確な定義はありませんが、内子宮口と胎盤の一番近い距離が2センチ以内の状態にあることが目安となっています。
- 予定帝王切開になるケースもありますが、状態によっては経膣での分娩が可能です。
どのような人がなりやすいのですか?
- 低置胎盤は、以下の要素を持っている人がなりやすいといわれています。
- 経産婦
- 帝王切開・子宮筋腫・流産手術・人工妊娠中絶手術など、子宮内の手術をした経験がある
- 高齢妊娠
- 喫煙
- 多胎妊娠
- ただしはっきりとした原因は分かっていないため、上記の項目に当てはまっていても必ず発生するわけではありません。
編集部まとめ
低置胎盤は、内子宮口とそれに最も近い胎盤の位置が2センチ未満の場合に診断されます。
ただし妊娠30週未満の場合は週数とともに胎盤の位置が上がり、症状が解消されることが多いことも特徴のひとつです。
胎児の成長に影響を及ぼす症状ではありませんので、もし診断されても心配し過ぎず安静にして過ごすように努めてください。
安静期間は不安な気持ちになりやすいと思いますが、なるべくリラックスして穏やかに過ごしましょう。
症状によっては経腟での分娩も可能です。経腟分娩を希望している場合は出血などのリスクを充分に考慮して、主治医とよく相談のうえ分娩方法を決定してください。
参考文献