「慢性腎不全・慢性腎臓病」の前兆となる症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

※近年では腎不全の用語は使用しないため、慢性腎不全(慢性腎臓病)・急性腎不全(急性腎障害)と表記しています。
「腎不全」とは腎臓の機能が低下して正常に働かなくなる状態をいいます。
「慢性腎不全」(慢性腎臓病)の場合は数か月から数十年という時間をかけてゆっくりと病気が進行している状態のことです。
腎臓は「沈黙の臓器」といわれるように悪化するまで自覚症状が出ないことがほとんどですが、治療により回復する場合はあります(脱水の補正など)。
自覚症状が出る頃にはかなり悪化していることが多く、気づかないうちに進行する恐ろしい病気です。
しかし、健康診断の尿検査や血液検査で早期発見できる場合もあります。慢性腎不全(慢性腎臓病)の特徴や症状、前兆や悪化した場合について詳しくみていきましょう。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
※この記事はMedical DOCにて『「慢性腎不全・慢性腎臓病(CKD)」とは?原因・食事・症状についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
目次 -INDEX-
慢性腎不全(慢性腎臓病)の特徴や症状
慢性腎不全(慢性腎臓病)はどのような病気ですか?
- 慢性的な腎臓の病気を抱えている人はおよそ1,300万人いるといわれ、新たな日本の国民病といっても過言ではありません。
- 腎臓の病気は自覚症状が出にくいといわれますが、進行するとさまざまな症状が現れます。腎臓には主に心臓から送り出された血液をろ過する役割があり、血液中の老廃物を尿として排出しています。このろ過機能が60%未満となった状態となった状態が「腎不全」という病気です。
- 数日から数週間で急激に機能が低下した場合は「急性腎不全」(急性腎障害)、数か月から数十年の長い時間をかけてゆっくりと働きが悪くなった場合は「慢性腎不全」(慢性腎臓病)となります。
どのようなことが原因になりますか?
- 慢性腎不全(慢性腎臓病)という名称は病名ではなく腎臓の機能が低下した状態全般を指すものです。以下のようにさまざまな病気が原因で起こります。
- 糖尿病性腎症
- 慢性糸球体腎炎
- 腎硬化症
- 原因としてとくに多いのが糖尿病に起因するものです。人工透析治療を始めた患者の4割が糖尿病性腎症といわれ、生活習慣病と密接な関係がある病気です。
前兆はありますか?
- 自覚症状が出にくいものですが、初期段階から尿検査で尿タンパクが陽性になり、血液検査でクレアチニンの値が上昇するという兆候が現れます。
- この数値は定期的に健康診断を受けることでも分かります。腎臓の不調の早期発見につながるため、健康診断は機会があれば積極的に受けましょう。
- その他、比較的自覚しやすい症状がむくみと血尿です。むくみは足・手・顔がパンパンに腫れあがるほど重度で、これは腎機能の低下によって余分な水分や塩分を体の外へ排出できなくなることで起こります。
- 血尿は泌尿器が原因の場合もありますが、腎臓の糸球体に何らかの障害が起きている可能性があります。
どのような症状があるのか教えてください。
- 急性腎不全(急性腎障害)の場合は「乏尿」や「無尿」という尿の出が悪い・まったく出ないといった症状がありますが、慢性腎不全(慢性腎臓病)の場合は腎機能の低下が軽度の間はほとんど自覚症状がありません。
- しかし、病気が進行するとさまざまな症状が現れます。
- 尿量の増加:夜間の尿量の増加が著しくなり、日中のトイレの回数が増加
- 尿毒症:疲れやすい・食欲の低下・息切れ・皮膚のかゆみ・頭痛・動悸・呼吸困難
- その他:目の周りや足のむくみ・高血圧・貧血・骨がもろくなる
悪化するとどうなりますか?
- 腎臓の機能が通常の15%未満に低下すると「末期腎不全」となります。
- ここまで悪化すると人工透析や腎移植が必要になるため、末期段階にできるだけ近づかないように健康管理をすることが重要です。
- また、脳卒中・心不全・心筋梗塞など命に関わる心血管疾患も起こりやすくなります。
編集部まとめ
慢性腎不全(慢性腎臓病)は長い時間をかけてゆっくりと腎臓の機能が低下する病気で、原因は糖尿病や高血圧など生活習慣病によるものが多いです。
腎臓の機能は一度低下すると回復が難しいため、早期発見や進行を遅らせることがとても重要となります。
慢性腎不全(慢性腎臓病)の予防は生活習慣病の予防にもつながるため、バランスのいい食事を心がけることや日常生活に適度な運動を取り入れるなど、自分でできることから改善して行きましょう。
参考文献