パニック障害は治る? 薬に頼らず不安を克服する仕組みとは【医師解説】

突如、動悸などの症状を引き起こす「パニック障害」は、決して珍しい疾患ではありません。重症化を防ぐには早期の治療が必要で、治療法は大きく分けて薬物療法と精神療法があります。今回は、パニック障害の精神療法について、「シモキタよあけ心療内科」の副島先生に解説していただきました。

監修医師:
副島 正紀(シモキタよあけ心療内科)
編集部
パニック障害でおこなう精神療法とはなんですか?
副島先生
認知行動療法や曝露療法などの総称を精神療法と言います。薬物療法は体に対して直接働きかける治療法ですが、精神療法は医師や治療者が心と体の両方に働きかけるという特徴があります。精神療法をおこなうことで誤ったものの見方が改善されたり、行動の癖が修正されたりすることで、薬に頼らなくても症状が良くなる効果が期待できます。
編集部
認知行動療法や暴露療法について、もう少し詳しく教えてください。
副島先生
認知行動療法は、ストレスで凝り固まった思考の癖を修正し、気持ちを楽にして自由に行動できるようにする治療法です。一方、暴露療法は簡単に言うと不安に慣れる治療法のことです。パニック発作が起きやすい場所をリストアップし、少しずつ難易度を上げながら苦手なものに慣れていきます。例えば、電車に乗っている時にパニック発作が起きやすいなら、まずは駅まで行ってみる、次は電車の近くまで行く、それから電車の中に入ってみるというように、段階を追って少しずつ身体を慣らしていくのです。
編集部
そういう治療を繰り返すことで、パニック発作が起きなくなるのですか?
副島先生
症状に応じて2つを組み合わせて治療していきます。実際、完治までには時間がかかりますが、根気よく治療を続けることでパニック発作が起きないようになっていきます。
編集部
再発を予防するために、何をしたらいいのでしょうか?
副島先生
パニック障害は一進一退を繰り返しながら、少しずつ改善していく病気です。そのため、発作が起きなくなった、病気が治ったと思っても、必ず医師の指示に従って治療を継続することが大切で、それが再発予防にもつながります。
編集部
そのほか、予防のために気をつけるべきことはありますか?
副島先生
発作が起きたときに、どうして発作が起きたのかを冷静に考えられると恐怖感が減ると思います。例えば「今、動悸がしているのは昨日遅くまで残業してしまったからだ」「昨晩、お風呂に入らずリラックスする時間を取れなかったからだ」など、振り返ってみるのです。そうすれば「今日はあまり残業をせず、早く帰ろう」「今夜はお風呂に入ってリラックスしよう」など、対策を講じることができます。このようにして、自分を俯瞰的に捉えるトレーニングが予防には有効だと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
副島先生
パニック障害は動悸などの症状がみられるため、「まずは内科で体に異常がないか診察してもらう」という人が多く見受けられますが、内科で「異常がありません」と診断され、そこで受診をやめてしまう人が多いのも事実です。「内科で問題がなければ、心療内科や精神科を受診してみよう」という考えに至る人はそれほど多くありません。しかし、内科で異常が見つからなければ原因は心にあるのかもしれません。もし、動悸などの症状に悩んでいて、内科で異常がないと言われた場合には、ぜひ心療内科や精神科を受診して、本当の原因を確認してほしいと思います。
※この記事はメディカルドックにて<「パニック障害」が起きるキッカケや初期症状はご存知ですか? 薬物療法・精神療法も医師が解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。




