アトピー性皮膚炎を悪化させない! 保湿剤の選び方と日常のスキンケアのポイント【医師解説】

現在、アトピー性皮膚炎に悩まされる子どもが増えています。症状の改善のため、さまざまなことを努力している保護者も多いと思いますが、その中でも症状改善のための生活習慣のヒントについて、武蔵小杉皮ふ科の山本先生に教えてもらいました。

監修医師:
山本 亜偉策(武蔵小杉皮ふ科)
編集部
入浴後の保湿はどんなことに気をつけたら良いでしょうか?
山本先生
必ず気をつけてほしいのは、保湿のタイミングです。入浴後の皮膚からは水分がどんどん蒸発しており、乾燥しやすくなっています。そのためお風呂から上がったら、できるだけ早く保湿をすることが重要です。
編集部
「入浴後の保湿は3分間が勝負」という言葉も耳にします。
山本先生
そうですね。特に冬はお風呂場と脱衣所の寒暖差が大きいため、お風呂から上がるとどんどん水分が失われていきます。そのため、脱衣所で体を拭いたらすぐに保湿をすることが大切。3分と言わず、できるだけ早く保湿をして水分の蒸発を防ぎましょう。
編集部
その際にはどんな薬を使ったら良いのですか?
山本先生
保湿剤には、皮膚からの水分喪失を防ぐものと皮膚の水分を保つものの2種類があります。よく知られているワセリンは皮膚をコーティングして、水分の蒸発を防ぐ効果があります。一方、ヘパリン類似物質は皮膚が水分を離さないよう、水分保持を助ける効果があります。簡単にいうと、ワセリンはラップのようなものであり、皮膚の表面を覆って乾燥を防ぎます。一方、ヘパリン類似物質には水分を補う力があります。ただし、乾燥がひどい場合にはヘパリン類似物質とワセリンを重ね塗りすることもあります。両方使ってみて、合った保湿剤を継続することが大事です。
編集部
そのほか、日常生活で気をつけるべきことはありますか?
山本先生
先述のお風呂上がりだけでなく、肌を乾燥させないようこまめに保湿をすることが大事です。また、保湿薬を塗るときにはゴシゴシこするような、皮膚に摩擦を与えるのを避けて、優しく手のひらで伸ばすようにしましょう。
編集部
入浴やシャワーで気をつけることはありますか?
山本先生
熱すぎるお湯は肌の乾燥を加速させます。適温に調整するようにしましょう。また、石鹸やシャンプーは香料や合成添加物、界面活性剤などができるだけ含まれていない、肌にやさしいものを選ぶようにしましょう。
編集部
保湿が本当に大事だということがよくわかりました。
山本先生
現在、アトピー性皮膚炎に対する保湿剤はたくさんの製品が市販されているので、どれを選んだら良いか迷う人も多いかもしれません。選ぶ上での原則は「使用感が良いもの」「価格面などを考慮して継続しやすいもの」を選択するということ。一般に、弱酸性のものは比較的刺激が少なく、好ましいと言われていますが、そもそも肌の状態はこまめに変わるものです。ある時は乾燥が激しく、またある時は炎症が強いということも少なくありません。そのため、そのときの自分の症状を考慮しながら、保湿機能が優れたものを選ぶべきか、あるいは、抗炎症成分などが配合されているものを選ぶべきかなどを検討すると良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山本先生
これらの保湿やスキンケアを毎日行っても、症状が改善しない場合は、医療機関での治療が望ましいと思います。近年、アトピー性皮膚炎の領域において多くの新薬が登場しました。非ステロイドの抗炎症作用がある塗り薬や、生物学的製剤(注射)、JAK阻害薬(飲み薬) などさまざまな種類があります。現在、行っている治療で良くならない方には、より根本治療に近い、新しい治療も選択することができます。アトピー性皮膚炎でお困りの方は、ぜひ、皮膚科専門医がいるクリニックにご相談ください。
※この記事はMedical DOCにて<入浴後の保湿は3分間が勝負! アトピー改善に保湿が欠かせない理由はご存じですか?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。




