「怒りっぽい認知症」に効く? 話題の漢方薬の効果や種類を医師が解説

認知症の治療に用いられる漢方薬には、特に怒りや暴言などの症状を和らげる効果や、笑顔や感謝の言葉が増えるなど、前向きな感情表現を促進する効果が報告されているものもあるようです。認知症に効果的な漢方薬について「あゆみ野クリニック」の岩崎先生にお聞きしました。
編集部
どのような漢方薬が認知症に効くのでしょうか?
岩崎先生
もっとも医学的エビデンスが豊富で代表的な漢方薬は抑肝散(ヨクカンサン)です。抑肝散は明の時代の中国において「小児の不眠、精神不穏」に対して開発された漢方薬です。
編集部
抑肝散にはどのような効果が期待されるのでしょうか?
岩崎先生
抑肝散は怒りっぽい人に効く漢方薬です。暴言など認知症の「陽性症状」に効果的であるため、最近は認知症の方が入院したときに混乱してしまう入院時せん妄でも使用されることが増えてきました。その一方で、認知症には抑うつ・食欲不振・無気力といった「陰性症状」が出現する場合があります。抑肝散は陰性症状に対しては効果が無いため、そのような点に注意が必要だと思います。
編集部
抑肝散の効果を裏付けるエビデンスがありましたら、教えてください。
岩崎先生
山形の療養型病院において、BPSDが酷く職員が対応に困っていた方52名を、通常治療群と抑肝散服用群の2群にランダムに分けた結果、抑肝散群ではBPSDが約半分になっただけでなく、日常生活動作(ADL)が改善するという結果が得られました。
編集部
抑肝散のほかにもよく使われる漢方薬はありますか?
岩崎先生
今年になって「加味帰脾湯(カミキヒトウ)」という漢方薬の効果を示す論文が出ました。加味帰脾湯の特徴はBPSDが改善するだけでなく、挨拶する、介護に感謝する、笑顔を見せるなど介護現場で望ましい感情表現を改善したことです。更にこの加味帰脾湯は韓国のグループから、まだ認知症には至らないが、正常よりは認知機能が落ちている、「軽度認知障害(MCI)」の人の認知機能そのものを改善させたという報告も出ています。

監修医師:
岩崎 鋼(あゆみ野クリニック)
※この記事はメディカルドックにて【認知症治療、漢方薬の力でケアに新たな視点を どのような症状を改善できるのか】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。