塩分を摂るとなぜ高血圧になるのかご存じですか? 「見えない塩分」に注意
食塩の摂りすぎが高血圧の原因になることはよく知られていますが、どのようなメカニズムで血圧が上がるのでしょうか? また、減塩をすることでどの程度の降圧効果が期待できるのでしょうか? 最新の研究によれば、1gの減塩で血圧は約1mmHg低下するとされています。さらに、日常生活で気をつけたい「見えない塩分」をコントロールする方法や、減塩を成功させるコツについて、高村武之先生に詳しく聞きました。
監修医師:
高村 武之(あけぼの病院)
編集部
なぜ、塩分を摂ると高血圧になるのですか?
高村先生
現時点で、食塩が血圧を上昇させるメカニズムは完全には解明されていませんが、血液量の増加が関係していると考えられています。みなさんも塩辛い食事を摂った後は、喉が渇いて水をたくさん飲んでしまうことがあると思います。体内の塩分濃度が高いと悪影響が生じるため、体は水分を摂取して正常な濃度に保とうとします。しかし、その水分摂取によって血液の量が増えるため血圧が上昇してしまうのです。このままの状態では生体にとって危険であるため、腎臓から水と塩を尿として排出しますが、腎臓が処理できないほどの塩分を摂取してしまうと、血圧を十分に下げることができず高血圧になってしまいます。
編集部
「減塩」をすると、どのくらい血圧が下がりますか?
高村先生
個人差はありますが、1日に1gの塩分制限で高血圧者の収縮期血圧は約1mmHg下がることがわかっています。日本人の1日の平均食塩摂取量は男性が10.8g、女性が9.1gですから、目標である6gを達成すると3~5mmHg程度の降圧が期待されます。イギリスでは政府主導で加工食品の塩分量を徐々に減らす政策をおこないました。成人1人あたりの食塩摂取量を5年間で9.5gから8.4gへ15%減らしたところ、収縮期血圧が平均で3mmHgも低下しました。さらに、同時期に脳卒中や心臓病で亡くなる人も40%も減少しました。減塩による降圧効果は3mmHgとわずかに思えますが、その効果は絶大であると言えるでしょう。
編集部
簡単にできる減塩方法を教えてください。
高村先生
まずはご自身が「1日にどの程度の塩分を摂取しているのか」をチェックするところから始めましょう。加工食品には栄養成分表示が義務付けられており、必ず塩分含有量が記載されています。実際に記録をつけてみると、これまで無意識のうちに摂取していた塩分量に驚かれる人も多いと思います。現代の食生活では加工食品や調味料に含まれる「見えない塩分」からの食塩摂取が約7割を占めています。「食べる前に必ず塩分量を確認する」。たったこれだけのことですが、減塩の第一歩として極めて重要です。
※この記事はMedical DOCにて【「高血圧は生活習慣の見直しで改善できる」薬を使わずに血圧を下げる方法を専門医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。