「親が認知症かも?」と思ったら 親との接し方や子供にできることを医師に聞く
監修医師:
伊澤 真理子(ふくろうクリニック自由が丘 副院長)
東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院勤務後の2021年、東京都世田谷区に位置する「ふくろうクリニック自由が丘」の副院長就任。脳を中心とした疾患にチーム医療で対応している。日本脳神経外科学会専門医、日本認知症学会専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医。
編集部
親と離れて暮らしていると、前兆に気づきにくいですよね。
伊澤先生
たしかに、そうかもしれませんね。そのため、顔を出す頻度を増やして「兆し」に気づくことも大切ですよね。「消費期限が切れたものが冷蔵庫にある」「同じものがたくさんある」など、実際に見てみないとわからないこともあります。また、ガスコンロのつけっぱなしによる小火(ぼや)が比較的多いため、安全装置付きのガスコンロやIHクッキングヒーターへ替えることも検討してみましょう。
編集部
医療の話題に絡めるとしたら、「処方薬の管理」などでしょうか?
伊澤先生
薬が多い場合、1回分の処方薬を1つにまとめてもらう「一包化」をおすすめします。また、認知機能が低下してきたとき、1日数回の内服は難しくなってきます。飲み忘れが多いことを主治医の先生に相談し、できれば1日1回にまとめられないか相談してみるといいと思います。加えて、複数の医療機関を受診して同じような効果の薬が処方されていることもあるので、総合的な評価をしてもらえる主治医の先生がいると安心です。
編集部
お金の管理や詐欺被害も気になります。
伊澤先生
被害を未然に防ぐために、日頃からこまめに様子を確認しておきましょう。自動通話録音機能のついた電話の利用や、留守番電話にしておいて相手を確認してから出るようにするといった対策をおすすめします。また、警備会社がおこなっている見守りサービスでは、本人の動きが分かるほか、不審者の出入りも確認できます。認知症ではなくても、今後の財産管理に不安がある場合には「任意後見人」の制度や、すでに判断能力が不十分である場合は「成年後見制度」の利用を推奨します。
編集部
そうした「変化・変更」を、子どもの側から積極的にしていくのがいいということですか?
伊澤先生
親御さん自身が必要性を理解して、自分だけでできれば問題ないです。しかし、認知症の初期段階でご本人が気づくことができることは多くはなく、「まだできる、まだ大丈夫」と受け入れられないことがほとんどです。慣れ親しんできた生活からの「変化・変更」は、誰でもストレスに感じますよね。少しずつでいいので、できるところから手伝ってあげてください。
※この記事はMedical DOCにて【親が認知症にならないために覚えておきたい知識・対策】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。