がん治療後に「リンパ浮腫」が起こる理由を医師に聞く リンパ節切除との関係性とは
「リンパ浮腫」はがん治療の後によく起こると言われている疾患です。しかし、なぜがん治療が原因で浮腫が起こるのかご存知でしょうか。リンパ節の切除と何か関係があるのか、ソウクリニック四条烏丸の荘子先生に取材しました。
監修医師:
荘子 万理(ソウクリニック四条烏丸)
編集部
リンパ浮腫とがん治療には関係があると聞いたことがありますが、どういうことですか?
荘子先生
リンパ浮腫はがん治療後に起こる疾患として有名です。特に、乳がんの治療後に起こることが多いですね。乳がんの手術では、リンパ管を通ってがんが全身に広がってしまうのを防ぐために、わきの周囲などのリンパ節を取り除く「リンパ節切除」を行うことがあります。
編集部
なぜリンパ節を切除するとリンパ浮腫になるのですか?
荘子先生
血管から出てきてリンパになった液体成分を回収するリンパ管・リンパ節がなくなってしまうため、行き場を失ってそのまま溜まってしまいます。これががん治療によってリンパ浮腫が起きるメカニズムです。リンパ浮腫は、リンパ節を取り除いた場所より手足の先端側に起きることが多いので、例えば右の乳がんを手術すると、右の二の腕から先がリンパ浮腫でぱんぱんになってしまうことがあります。
編集部
乳がん以外のがんでもリンパ浮腫は起こりますか?
荘子先生
骨盤のあたりのリンパ節を取り除くと、足のリンパ液が回収されずに滞るため、下肢にリンパ浮腫が起こります。すなわち、骨盤周辺にできるがんである、女性の子宮がんや卵巣がん、男性の前立腺がんなどでは、リンパ浮腫が起こりやすいですね。
編集部
がん治療には手術以外にも治療方法があると思いますが、それならリンパ浮腫にはならずに済みますか?
荘子先生
放射線治療や抗がん剤治療は、身体の正常な部分も攻撃してしまうことがあり、リンパ節もその標的になりえます。こうした治療を行う際には、正常な部分への影響が最小限になるように工夫しますが、それでもリンパ節がダメージを受け、結果的にリンパ浮腫になってしまうこともあります。
※この記事はMedical DOCにて【「リンパ浮腫」の原因・治療法を医師が解説 がん治療の後遺症で起こりやすいのはなぜ?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。