不正出血があったのに検査を避けていた。「子宮体がん」発覚と辛いリンパ浮腫も発症「私も当たっちゃったか」
多くの女性が苦手意識を持っている子宮頸がん検診。個人差はあるものの、検査自体に痛みを伴うことや結果に対する不安もあるでしょう。今回お話を聞いた内田さんもその一人でしたが、数年ぶりに受けた検査で子宮体がんが発覚したそうです。「何か異常を感じたら都合よく解釈せず、勇気を出して検査を受けることが大切」と訴える内田さんに、検査の大切さや闘病生活などについて伺いました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年5月取材。
体験者プロフィール:
内田 あき(仮称)
山口県在住、1959年生まれ。要介護の実母と同居。診断時の職業はフリーライター。2019年春頃より微量の出血があったため、11月に2〜3年ぶりに子宮頸がん検診を受けることに。その予約を取った途端、鮮血の出血あり。一度の受診で即、子宮体がんが確定した。2020年1月、開腹で子宮卵巣全摘及び骨盤リンパ節郭清。病理の結果が予想より良く、追加治療はなし。リンパ浮腫に悩まされながらも徐々に軽快し、まる3年過ぎて経過観察中。
記事監修医師:
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
微量の出血に気付き、苦手意識のある検査を受診。そして子宮体がんの発覚
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
内田さん
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
内田さん
当時の病院の方針は、「悪性腫瘍の場合開腹手術を行う」でした。なので、私も先生から「開腹で子宮全摘及び骨盤リンパ節郭清をします。病理の結果によっては抗がん剤の追加治療が必要です。」と言われました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
内田さん
いつ誰ががんになってもおかしくないことは知っていたので、私も当たっちゃったか、くらいの心境でした。超楽天的な人間なので、「居候がいるのなら追い出すのみ!」と逆に張り切っていろいろ調べました。家には、看護師・医師向けの本が30冊くらいあります。
思いがけない、リンパ浮腫の辛さ。でも、あまり心配しすぎないようにすることが大切
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
内田さん
困ったのは手術直後の傷の痛み程度です。病理検査の結果も「ステージI、組織型は類内膜がんのグレード1」ということで、そのまま経過観察になったため、特に生活に変化はありませんでした。ただ、リンパ節郭清のためにリンパ浮腫を発症し、脚が曲がらない、運転もできないという生活の不自由さには困りました。一生続くケアを考えると、楽天的な私でも暗い気持ちになることがありました。がんの何倍も今後のことが気になり、辛かったですね。リンパ浮腫については本格的に取り組まれるようになって日が浅く、情報が錯綜しています。周りの理解もほとんどないのが余計に辛いところです。現在は、リンパ浮腫はかなり落ち着いています。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
内田さん
私は今64歳ですが、好きなことがいっぱいあって、まだまだこの人生を楽しみ足りない! という気持ちが一番の支えです。美味しいものも食べたいし、行ってみたいところもある、新しい趣味も始めてみたいと思っています。私のモットーは「起きてしまったことにくよくよしない。起きてもいないことを心配しない」です。心配しても何かが良くなるわけじゃないので、あまり心配しすぎないようにしていました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
内田さん
親切心からかもしれませんが、さまざまな助言(「〇〇ががんに効く」「抗がん剤は毒だからやってはダメ」など)をしてくる人が一部いらっしゃいます。書店にもネットにも医学的根拠のない情報は溢れています。思わず信じたくなる気持ちはわかりますが、絶対に迷わないでほしいです。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
内田さん
半年ごとに検査を受けていますが、今のところ再発はありません。リンパ浮腫の方も通院中で、弾性ストッキングも毎日履いています。そのおかげか、かなり落ち着いているので、ほぼ以前と変わらない生活を送ることができています。
周りの情報に惑わされずに、医療機関を受診してほしい
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
内田さん
知識がない人は「完治したんだ」と思っているかもしれませんが、私にとっては「10年経ってやっと一安心」です。日々ある程度の不安は抱えているものの、あまり理解されていません。逆に「がんと聞いていたけど、いつまでも元気よね」と陰で不思議がられていたこともあります。「がん=死ぬ」みたいな前世紀の感覚の人もまだいらっしゃいますし、リンパ浮腫に関しても全く知られてないのは辛いですね。そして、他人の病気に対して知識がないのはしかたがないことですが、軽い考えでアドバイスをされると、当事者は大変困ることを知ってほしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
内田さん
医療従事者にとっては山ほどの患者の中の一人でも、当事者にとってはたった一つの身体であり、経験のない大手術です。私自身は特に問題ありませんでしたが、中には全摘について「その年なら子宮なんかいらないでしょ」という言い方をされた人、リンパ浮腫について「がんを治すためならそれくらいいいのでは」のようなことを言われた方もいるそうです。医療関係者の方には、いつも「もしこれが自分だったら」という想像力を持って、患者さんと接してもらえると嬉しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
内田さん
「がんがわかると怖いから検診に行かない」という人もいらっしゃいますが、わからないほうが100倍も怖いです。早期発見・早期治療がやはり大切だと思います。がん検診に行くこと、そして何か異常を感じたら自分で判断せずに医療機関を受診してほしいと思います。そして、がんだと判明したら、ネットの情報に惑わされず、適切な治療を受けることが大事です。記録を残すこともおすすめで、メモや日記、もしくは公開しても良いならブログもいいでしょう。あとでいろんな役に立ちます。
編集部まとめ
日頃からライターをされている内田さん。闘病中も、病気の記録やご自身の心の動きを振り返るブログを執筆されていたそうです。読者が増え、コミュニティができたことも良かったとおっしゃられていました。
身体に異変を感じたとき、どうしても私たちは「きっと疲れているからだ」「病院へ行くのはもう少し様子を見てからにしよう」などと解釈し、医療機関の受診を後回しにしてしまいがちです。しかし、今回内田さんのお話を聞いて、都合よく捉えずにきちんと検査を受けることが大切だと感じました。