【医師解説】むくみだけではない! 『リンパ浮腫』の原因・予防法をご存知ですか?
「リンパ浮腫」は手足が膨らんでしまうという見た目だけの問題ではなく、日常生活にもさまざまな制限をきたします。ですが、リンパ浮腫に対する具体的な解決策が分からないという方も多いのではないでしょうか? そこで今回は医師の長西 裕樹先生(NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜院長)にリンパ浮腫の原因と予防法、日常でできるケア方法についてお聞きしました。
監修医師:
長西 裕樹(NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜)
「リンパ浮腫」って何? どんな人がなりやすいの?
編集部
リンパ浮腫とはどんな状態ですか?
長西先生
通常、リンパ液は細胞間液や老廃物を回収して体外に排出する役割を果たします。しかし、なんらかの原因でリンパ液の循環が阻害されると、組織に余分な液体がたまって浮腫んでしまいます。これがリンパ浮腫です。
編集部
どうしてそのような状態になるのですか?
長西先生
リンパ浮腫となる方の過半数は、乳がんや子宮がんなど婦人科系がんの術後です。しかし、がんを患っていなくてもリンパ浮腫になる場合もあります。ごく稀に、生まれつきリンパ浮腫という方もいらっしゃいます。
編集部
どんな症状が出るのですか?
長西先生
リンパの循環が滞って、その部分の皮下組織に水分が溜まり、手足が膨らんでしまいます。見た目が悪くなるだけでなく、服装の制限、運動機能の低下、ピリピリとした痛みなどの感覚異常が現れることもあります。
編集部
どのような治療法があるのですか?
長西先生
リンパ浮腫に対する特効薬などはなく、弾性ストッキングなどを使った圧迫療法が基本となります。ストッキングなどで強い圧力をかけて、皮膚内のリンパ管に溜まっているリンパ液を強引に流し出すという治療法です。それでも十分に改善されない場合は、手術による治療を検討します。
編集部
どのような手術ですか?
長西先生
手術法はいくつかあります。水分が増えた場合には、リンパ管内の流れが悪くなって内圧が高くなった状態に対して人為的に逃げ道を作って水分を減らすという「リンパ管細静脈吻合(LVA)」が、体への負担も少なくて即効性が期待できます。1ヵ所につき皮膚切開が2cmほどで、ほとんどの場合、局所麻酔で手術できるのが特長です。脂肪が増えてしまった場合には、脂肪吸引が選択されます。
リンパ浮腫の発生予防や進行予防はどうしたら良い?
編集部
リンパ浮腫の発生を予防するにはどうしたら良いですか?
長西先生
生まれつきではない、いわゆる「続発性リンパ浮腫」の発生予防として、まずは太らないことがとても大事です。皮下脂肪が増えると、リンパ管にかかる圧も大きくなるのでリンパが流れにくくなるからです。
編集部
ほかにはありますか?
長西先生
リンパ浮腫の発生や悪化の原因で非常に多いのが、細菌による感染です。ちょっとした傷や虫刺され、水虫などから感染するケースも少なくありません。日頃から、十分な感染対策と感染の早期発見がとても大切です。
編集部
では、リンパ浮腫の進行予防方法は何がありますか?
長西先生
発生してしまった場合の進行予防も、基本的には同じです。リンパ浮腫は、ちょっとしたきっかけで急激に悪化することがあるため「肥満」と「感染」という2大因子を排除することが大事です。特に、一度リンパ浮腫となった腕や脚は、重たくて動かしにくくなり皮下脂肪が溜まりやすくなるので、これまで以上に体重管理に注意する必要があります。
医師が解説! リンパ浮腫ケアとなる日常生活習慣とは?
編集部
日常生活の中ではどのようなケアをしていったら良いでしょうか?
長西先生
下肢に関しては、市販の着圧ストッキングなどがおすすめです。乳がんの術後などで、上肢のリンパ浮腫が心配な方は、傷に負担のかからない範囲で腕や手指をしっかり動かし、流れが滞らないようにしましょう。早期発見という意味では、左右同じ場所の周径を定期的に計測するのもおすすめです。もし可能であれば、体の数カ所を測っていただくと浮腫みに気づきやすいと思います。
編集部
水分や塩分の摂取はどうしたら良いでしょうか?
長西先生
個人的には「ほどほどに」くらいしか指導していません。変に考え込んでストレスになってほしくないので、あまりに過剰摂取しなければ問題ないと伝えています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
長西先生
リンパ浮腫の治療は進歩しており、治療の選択肢も増えています。以前は「諦めざるを得ない」患者さんがいらっしゃったのも事実ですが、現在は、専門の医療機関に相談することで治る疾患になってきています。ネガティブに捉えず、まずは専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。
編集部まとめ
「リンパ浮腫」の症状や治療法について、医師に解説していただきました。体重コントロールや感染予防、市販のストッキングなど、発生や悪化を予防することができるとのことでした。以前は諦めざるを得なかった病態も、今は治療の選択肢が色々あるとのことなので、悩んでいる方は一度専門の医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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アクセス | 横浜市営地下鉄各線 センター北駅 徒歩4分 |
診療科目 | 形成外科、眼科 |