「ピルは“乳がん”になりやすい」って本当? 副作用が出たときの対処法も医師が解説!
ピルを服用することで「乳がん」になる可能性があることをご存じですか? ピルの副作用の対処法について「松本産婦人科医院」の松本直樹先生に解説していただきました。
※この記事はMedical DOCにて【ピルの副作用について産婦人科医が解説「吐き気などの副作用は徐々に軽減する。重い副作用もごく稀なので正しい理解を」】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
松本 直樹(松本産婦人科医院)
編集部
ピルはホルモン剤の一種だと思いますが、そのイメージから「がんになりやすくなるのでは?」という不安もあります。
松本先生
そうですね。今までの調査では、ピルを服用することで「乳がん」だけ発症リスクが上昇することがわかっています。乳がんは女性に最も多いがんで、主に40歳台から80歳台にかけて発症します。そのリスクがピルの服用中だけ、10%程度上昇するとされています。しかし、ピル服用の年齢層は乳がん発症年齢より若いこともあり、その実際の乳がん発症増加数は、ピル服用者1万人あたり1人程度の増加と言われています。ごくわずかな影響のため、あまり心配する必要はありません。ただし、40歳以上の女性は、乳がん検診を必ず受けるようにしてください。
編集部
がんの心配はそこまでないのですね。
松本先生
むしろ、ピルを服用するとなりにくくなるがんが多いのです。例えば、子宮内膜に対する保護作用があるため「子宮体がん」になりにくくなります。また、排卵を抑制する作用により、「卵巣がん」も減少します。そのほか、「大腸がん」に関してもリスク減少効果が示されています。
編集部
悪心(吐き気)などの副作用で、どうしてもピルの服用が続けられないときはどうしたらいいですか?
松本先生
避妊目的でも月経困難症治療でもピルによる効果とメリットは大きいので、なんとか続けられるように指導しています。具体的に、悪心に対しては吐き気止めを処方しています。
編集部
ピルにはいくつかの種類があると聞きますが、「種類を変えてみる」というのはどうでしょうか?
松本先生
そうですね。ピルには主目的や成分、ホルモン含有量などの違いによって、いくつか種類があります。避妊用ピルには成分別で2種類、月経困難症治療用のピルには成分とホルモン含有量の違いによって現在4種類あります。副作用が強い場合には、含まれる成分の違うタイプに変更したり、「超低用量ピル」というホルモン含有量をギリギリまで抑えたタイプの製剤を選択したりすることで、副作用を最小限に抑えることができます。
編集部
それでも副作用が出てしまう場合はどうすればいいでしょうか?
松本先生
その場合、ピルとはやや違うホルモン製剤を用いることで、同じような効果を期待することもあります。また、前兆のある片頭痛を持っている患者さんにはピルが使えないため、やはりピルとは違う薬による治療をおこないます。内服が難しい場合には、子宮内避妊器具(黄体ホルモン放出子宮内システム)を装着することで月経困難症治療とすることもあります。