脂肪肝を放置するとどうなるかご存じですか? 肝硬変やがんに進行することも
脂肪肝は放置すると肝硬変に進行したり、肝がんのリスクもあるため注意が必要な病気です。日本人の3人に1人が罹患していると言われる脂肪肝について、青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックの金沢先生に解説してもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【コーヒーで脂肪肝を抑制! 医師がコーヒーの健康効果や正しい飲み方を解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
金沢 憲由(青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック)
編集部
脂肪肝とはなんですか?
金沢先生
簡単に言えば、肝臓に脂肪が溜まって、フォアグラのような状態になることです。エネルギーを摂取しすぎると、余分なエネルギーが中性脂肪に変換され、肝臓に蓄積します。この脂肪が肝臓の5%以上を占めるようになると脂肪肝とされますが、脂肪蓄積が30%以上になるまでは画像上ではわからないこともあります。現在、日本では成人の3人に1人が脂肪肝を罹患(りかん)していると言われています。
編集部
脂肪肝の原因はなんですか?
金沢先生
主な原因として、肥満やアルコールの飲み過ぎが挙げられます。つまり、脂肪肝は必ずしもアルコールの飲み過ぎと関係があるわけではなく、アルコール性と非アルコール性の2種類があります。そのうち、非アルコール性脂肪性肝疾患は 「NAFLD(ナッフルディー):Non-Alcoholic Fatty Liver Disease」と呼ばれ、日本人男性の30~40%、女性の10~20%程度がNAFLDを発症しているとされています。
編集部
脂肪肝というと「アルコールの飲み過ぎ」というイメージがありますが、アルコールと関係ない脂肪肝もあるのですね。
金沢先生
はい。従来はアルコール性の脂肪肝ばかり注目されていましたが、ここ最近では非アルコール性の脂肪肝が注目を集めています。実際、健康診断で健康な人を対象に統計をとってみると、NAFLDに当てはまる人が多いのです。ご自身も「それほどお酒を飲んでいないのに、なぜ自分が脂肪肝に?」と驚かれるようです。
編集部
ほかにも、脂肪肝の原因はありますか?
金沢先生
・メタボリックシンドローム
・生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症)
・腸内細菌叢の変化
・サルコペニア
・遺伝的要因
編集部
脂肪肝を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?
金沢先生
放置すると肝硬変に進行し、全身のむくみ、腹水、意識障害、胃や食道の静脈瘤など様々な症状を引き起こす場合があります。また、肝硬変は肝がんのリスクにもなるため、注意が必要です。
編集部
脂肪肝ががんに進行することもあるのですか?
金沢先生
はい。脂肪肝の人全員が肝硬変や肝がんへ進行するわけではありませんが、一部の人は進行してしまいます。例えばNAFLDには、何も肝障害を起こさない良性のものと、進行性の肝障害を起こすものがあり、進行性の肝障害を「非アルコール性脂肪肝炎/NASH(ナッシュ):Non-Alcoholic SteatoHepatitis」と言います。NASHは徐々に肝硬変へ進行し、そこからがん化するリスクもあります。
編集部
非アルコール性でも、がん化するリスクがあるのですね。
金沢先生
そうですね。以前は肝がんと言えばB型肝炎やC型肝炎に由来するものが多かったのですが、現在ではNASHから起きるケースが目立っています。