「甲状腺の病気」の検査・治療法をご存じですか?遺伝原因で発症するって本当?
橋本病の治療、バセドウ病の治療、いずれの場合にもまずは薬の内服が行われますが、効果があまり期待できなかった場合などには、外科的に甲状腺を切除することもあるようです。検査や治療について、Clinic Le GINZA 銀座有楽町内科の山村先生に聞きました。
監修医師:
山村 聡(Clinic Le GINZA 銀座有楽町内科)
編集部
甲状腺の病気が疑われる場合、どのような検査が行われるのですか?
山村先生
まずは血液検査を行って、ホルモンの濃度を測定します。甲状腺ホルモンにはT3とT4という2つのホルモンがあり、そのほか脳下垂体から分泌されるホルモンの一種であるTSHというものも甲状腺ホルモンに深く関わっています。これらの濃度を測定し、甲状腺に異常があるかどうかを推測します。そのほか、超音波検査で甲状腺のしこりや腫れを観察します。
編集部
橋本病やバセドウ病であることがわかったら、どのような治療が行われるのですか?
山村先生
橋本病の場合、甲状腺機能が低下していないこともあるので、その場合は経過観察になります。甲状腺機能が低下していることが確認されたら甲状腺ホルモン剤を内服します。バセドウ病の場合には、甲状腺ホルモンの分泌を抑制する薬の内服が行われますが、甲状腺の腫れが大きかったり、薬の効果があまり期待できなかったりする場合は、外科的に甲状腺を切除する場合もあります。また、放射線を発するヨードを飲み、甲状腺の機能を低下させるという治療法もあります。
編集部
甲状腺の疾患は遺伝の可能性もあるのですか?
山村先生
一般的に、甲状腺の疾患は遺伝が関係しているとされています。たとえば、母親がバセドウ病の場合、娘もバセドウ病になる確率は通常の6~10倍とされています。しかし、遺伝だけが発症の要因ではありません。遺伝的な要因に加え、感染やストレスなど、環境要因も発症に大きく関係していると考えられています。
編集部
男性でも発症する可能性があるということですか?
山村先生
女性に多いことは確かですが、男性でも発症するリスクはあります。男性の場合、バセドウ病、橋本病ともに男性不妊の原因になるので、もし気になる症状があれば早めに診察を受けましょう。
編集部
妊娠にも関係するのですね。
山村先生
女性の場合、橋本病でもバセドウ病でも妊娠出産は可能ですが、妊娠や出産により、甲状腺機能が変動することがあります。もし甲状腺の疾患を抱えている場合は、必ず専門医の診察を受け、治療を継続するようにしましょう。バセドウ病の場合、治療が十分に行われていないと流産、早産、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などのリスクが増すともいわれています。
編集部
Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
山村先生
甲状腺の疾患は、それほど知名度はありませんが、頻度としては非常に高い疾患です。先述のように、うつ病や更年期障害、自律神経失調症などと間違われやすいので、つい見逃されてしまうことも多いのですが、放置すると病状が悪化して、命にかかわることもあります。20代から高齢の方まで、幅広い年代で発症することが多いので油断せず、気になる症状が見られたら早めに専門医を受診することをおすすめします。