「橋本病」はなぜ30~40代で多く発症するのか? 甲状腺機能低下症の発症頻度も解説
橋本病は女性の場合、成人の10人に1人が発症すると言われるほど発症頻度の高い疾患ですが、その理由やメカニズムははっきりと解明されていないと田口学先生(むさしの糖尿病・甲状腺内科)は言います。橋本病患者で甲状腺機能低下症の発症した人は全体の5%以下という研究結果もあるそうです。詳しく聞かせてもらいました。
監修医師:
田口 学(むさしの糖尿病・甲状腺内科)
編集部
まず、橋本病について教えてください。
田口先生
一言で言えば、橋本病は自己免疫疾患の一種です。自己免疫疾患とは、外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫細胞が、誤って自分の細胞を攻撃してしまう疾患のことを指します。橋本病は、この免疫細胞の攻撃によって「甲状腺」という喉の下のあたりに存在する組織が攻撃されてしまうのです。
編集部
橋本病になりやすい人の特徴とかは、あるのでしょうか?
田口先生
橋本病は、成人女性の10人に1人が発症すると言われており、とくに30~40代の女性に多くみられる傾向にあります。また、男性でも40人に1人が発症するということも分かっているため、比較的発症頻度の高い疾患と言えるのではないでしょうか。その一方、子どもで発症するケースは稀です。
編集部
なぜ、30~40代の女性に多く発症するのでしょうか?
田口先生
一部では妊娠やホルモンバランスの変化によるものという説もあるようですが、実際には30~40代の女性に多く発症する原因について解明されていません。
編集部
橋本病による甲状腺機能低下症の発症頻度についても知りたいです。
田口先生
甲状腺機能低下症を発症する患者さんは、5~6人に1人以下の確率と言われています。また、実際に橋本病を発症した患者さんに対しておこなわれた研究でも、治療を必要とする甲状腺機能低下症を生じた患者さんの割合は、全体の5%以下という結果だったそうです。
編集部
橋本病を発症したからといって、必ずしも甲状腺機能低下症になってしまうというわけではないのですね。
田口先生
そうですね。大半の患者さんは、甲状腺ホルモンの数値が正常に保たれています。しかし、少なからず甲状腺機能低下症を発症するリスクはあるため、定期的な検査や経過観察を受けることが重要です。