【闘病】まさか私が… 「乱視がひどくなった」と思ったら『難病』になっていた

道路の車線が7本に見えるほどの複視をきっかけに、難病「重症筋無力症」と診断されたMG・Tさん(仮称)。30年続けた看護師の仕事を体力の限界から断念せざるを得ず、一時は深い喪失感と悔しさに苛まれました。現在は新薬の導入により症状が安定し、家族の支えや趣味の絵画を新たな生きがいに。病の影響で「できないこと」を受け入れ、自分なりの工夫で日常生活を前向きに送るMG・Tさんの軌跡を紹介します。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年2月取材。

体験者プロフィール:
MG・T(仮称)
60代の夫婦二人暮らし。2017年に重症筋無力症を発症。当時は看護師だったが、病気のため退職を余儀なくされる。発症から点滴とステロイド剤の服用を続ける。2019年には胸腺全摘出、2021年には甲状腺全摘出の手術をしている。点滴治療は発症から6年近くは、年に3、4回ほど5日間の入院をしておこなっていた。その後、新薬が出たため現在は2カ月に1回の通院での点滴治療になり、症状も改善された。今では、休みを入れながら家事や趣味のアクリル画などに励んでいる。

記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
診断にいたるまでの長い道のりと現在までの治療

編集部
まずは重症筋無力症について教えていただけますか?
MG・Tさん
重症筋無力症は、体の免疫系が神経筋結合部を攻撃して、神経から筋肉に信号が伝わりにくくなる自己免疫疾患です。全身の筋力低下や脱力感、疲れやすさを感じるようになり、特に眼瞼下垂(まぶたが瞳を隠すような状態)や全身に力が入りにくくなるなどの症状が起きます。
編集部
MG・Tさんの主な症状はどのようなものですか?
MG・Tさん
私は全身型の重症筋無力症で、頸部、体幹の筋力低下があります。座位、立位姿勢の保持が難しく、室内で休める環境を要する状態なので、ひじ掛けや背もたれのない椅子に座ることがきついです。
編集部
病院を受診するきっかけは何でしたか?
MG・Tさん
複視(物が2つあるいはそれ以上に見える症状のこと)です。道路の車線が7本に見えました。乱視が酷くなったと思い眼科を受診しましたが、そのあと大学病院の脳神経内科を紹介されました。
編集部
医師からはどんな説明がありましたか?
MG・Tさん
病名を告げられ、今後は免疫グロブリン療法、ステロイド療法をおこなわなければならないと言われました。複視に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬(メスチノン)という薬でピタッと焦点が合うようになりました。
編集部
病気発覚時のMG・Tさんのお気持ちをお聞かせください。
MG・Tさん
「まさか、健康であると思っていた自分が難病になるなんて……」と思いましたし、今後どうなっていくのか不安でした。
編集部
診断時から今まで、どのような治療をしていますか?
MG・Tさん
2017年から2021年まで年に3~4回ほど免疫グロブリン療法(入院して5日間の点滴治療)を受けましたが、状態の改善は見られませんでした。そのため、2021年からは、新しく承認が下りた抗補体製剤(ソリリス)の点滴を2週間に1回(約1時間)、外来で受けました。その間の2019年に胸腺全摘出、2021年には甲状腺全摘出をしました。2022年からは、以前の抗補体製剤(ソリリス)から同抗補体製剤(ユルトミリス)の点滴に変え、2カ月に1回の通院でよくなり、だいぶ治療が楽になりました。内服薬として、免疫抑制剤、ステロイド5mg、甲状腺全摘出しているので、チラーヂン(甲状腺の手術などにより不足している甲状腺ホルモンを補う薬)も服用中です。
大好きな仕事を諦める悔しさ
グロブリン治療を入院して行っていた時の朝と夜の比較。顔面の筋肉が落ちている
編集部
MG・Tさんの中で何が一番つらくて大変でしたか?
MG・Tさん
体力の低下や疲れやすさの症状が悪化したことです。見た目では病気を抱えているようには見えないので、他者からは甘えにしか見られないだろうと思い、外出が怖くなりました。また、看護師という仕事が好きでしたので、体力の限界からその仕事を諦めなければいけないという現実に直面したときはつらかったです。
編集部
仕事を諦めるまでに、どんな思いがありましたか?
MG・Tさん
たとえば、提出書類の職業欄に30年近く「看護師」と書いていたのに、「無職」と書かなければいけないときに悔しさを感じました。診断前には、体力のない自分を責め、ジョギングや水泳に挑戦していました。看護師という仕事は、すごく体力を必要とします。立っていることも座っていることもつらくて、足が一歩も踏み出せなくなったり、呼吸がしにくくなったりしました。なぜ私はこんなに弱いのだろう、きついのはみんな同じだと思い弱音が吐けなかった時期は、精神的にもかなり苦しかったです。
編集部
責任感から弱さと捉えていたのかもしれないですね。
MG・Tさん
どんなにきつくてつらくても、看護師として患者さんの前では元気でいなければいけないと思って仕事をしていました。病名が分かり、今までの苦痛の原因の謎が解けたときはすっきりしました。しかし、お給料を頂いて制服を着ている以上、自分で無理だと思うことも、できないとは言えず仕事を辞めざるを得なくなりました。誰かに責められたとかではなく、自分で限界だと理解した結果です。仕事をしている友人に会うと、うらやましく思っていましたが、今ではこの病気と10年付き合う中で、しっかり向きあう心ができたと思います。
編集部
MG・Tさんにとって、病気に向き合う原動力とは何でしょうか?
MG・Tさん
※めまいの中でも最も頻度が高い病気の一つ。頭を動かしたときに、周りがグルグルとするようなめまい症状が数秒から数分程度続く。吐き気を伴うこともある
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
MG・Tさん
新薬である抗補体製剤(ソリリス)を開始して、足運びがこんなに軽かったのかと感じられ、休めるところがあれば日常生活はおこなえるようになりました。たとえば、洗濯物を干すとき心臓の位置より腕を上げるのがきついので、物干しを工夫したり、炊事は途中で休みながらおこなったりと、自分なりの工夫をしていけば日常生活は可能です。現在は抗補体製剤(ユルトミリス)の点滴に変え、以前に比べると頻繁に通院しなくても済んでいます。
≪↓ 後編へ続く ↓≫
※この記事はメディカルドックにて《【闘病】まさか看護師の私が“難病”になるとは… 「重症筋無力症」で甲状腺は全摘出》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
→(後編)【闘病】見た目では分かりづらい病気もあると理解してほしい



