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【闘病】“承認欲求”か…? 「痩せる楽しさ」に溺れ『摂食障害』 体重は30kg

 公開日:2025/12/13
【体験談】摂食障害で155㎝・30㎏でも「痩せている」とは思えなかった

中学1年生の夏、明らかに痩せ細った状態を心配した親に連れられ、すぐに神経性食欲不振症と診断されたmoeさん(仮称)。体重が増えるほど行動範囲が広がる行動療法という厳しい治療に抵抗し、「一生ベッドの上なのではないか」と絶望感に襲われました。今も低体重と向き合うmoeさんは、痩せる楽しさに溺れて周囲の声を聞き入れなかったことを後悔。目標体重を目指して闘病を続ける、当時の不安と現在の希望を語ります。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。

moeさん

体験者プロフィール
moeさん(仮称)

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1999年生まれ、2012年に神経性食欲不振症と診断される。現在はボディコンテスト出場を目指して、体重を増やしつつトレーニングに励んでいる。また、Instagramを通じて摂食障害について広める活動をしている。

別府 拓紀

記事監修医師
別府 拓紀
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

食事が恐怖になる「神経性食欲不振症」

食事が恐怖になる「神経性食欲不振症」

編集部編集部

最初に不調や違和感を感じたのはいつですか?

moeさんmoeさん

中学1年生(13歳)の夏でした。私自身は病気という認識はなかったのですが、明らかに痩せ細り、頻繁に不調を訴えるようになったのを心配した親が病院へ連れていってくれました。私自身は、痩せているという感覚はありませんでした。病院へ行くとすぐに入院が決まり、家に帰ることなく入院生活が始まりました。

編集部編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

moeさんmoeさん

中学1年生の時に初めて病院へ行った際は、155cmで30kgくらいで、すぐに拒食症を疑われました。診察で私自身に痩せすぎているという感覚や体の危機感がなかったこと、食事に対する恐怖や食事をとることができないという症状が明らかになり、神経性食欲不振症という診断になりました。

編集部編集部

どんな病気なのでしょうか?

moeさんmoeさん

神経性食欲不振症とは、食事に対する恐怖やカロリーに対する恐怖があり、食べたいけど食べられない状況に陥ってしまう病気です。自分自身は痩せすぎているという自覚がないため、どんどん体重を落としていきます。人それぞれ病状や心理は異なりますが、痩せることや食事のカロリーに異常なまでのこだわりや執着を持つ方が大半です。減っていく体重に喜びを感じ、それを自分の存在価値やストレス発散に繋げることも多いです。一度この病気になってしまうと抜け出すことが難しく、治療が長引くことが多いようです。

編集部編集部

そのようになったきっかけが何かあったのですか?

moeさんmoeさん

食事をとらなくなったきっかけや原因はいまだにわかっていません。もともと155cmで40~42kgぐらいで、特に太っているわけでもなく、ダイエットは意識していませんでした。もしかしたら、食事を減らしていくことで周りに何か気づいてもらいたかったのかもしれないです。そして、承認欲求というか、食事を減らすことや痩せることで、自分の存在価値を得ようとしていたのかもしれないです。

体重増加とともに行動範囲が増える「行動療法」を行う入院生活

体重が増えると行動範囲を増やしてもらえる「行動制限療法」という入院生活

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

moeさんmoeさん

入院していたころは、行動療法を取り入れていました。行動制限を行い、食事ができたり、体重が増えたりすると行動範囲を増やしてもらえるという治療法です。テレビや読書、お風呂、散歩の制限がありました。目標体重に達成すると行動制限が徐々になくなり、それと同時に1日の摂取カロリーが200kcalずつ増えていき、最終的には1日2000kcalをとっていました。食事は看護師さんが配膳・下膳するのですが、完食するまでは下げてもらえないというシステムでした。そんな日々を送って、36kgになったら退院を検討するという治療計画でした。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

moeさんmoeさん

行動療法を行なっているときは、とても辛かったです。体重が増えないとお風呂すら入れないため、「何としてでも食べないと」という気持ちと、食べたくても食べられないという葛藤がありました。トイレや歯磨きまで自由にできないということが本当に嫌で、泣きじゃくった記憶があります。自分の体が食べ物を受け付けてくれないので、私は一生ベッドの上なのではないかと本気で思いました。まだ中学生だったこともあり、不安と恐怖と治療への抵抗でとにかく泣いていました。体はとても危険な状態であるのに、そのくらい入院も行動療法も嫌で最後まで抵抗を続けていました。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

moeさんmoeさん

入院治療を受けた病院は遠いこともあり、現在は自宅近くのクリニックで月に一度診てもらっています。1か月間にあったことや、心理状態、今後どのようにしていきたいか、というお話をしています。実はコロナ禍になってからまた体重が下がり食事をとれない日々が続いてしまったのですが、ジムのトレーナーさんと出会ったことがきっかけで今はとても楽しく食事をとることができています。ですがまだ低体重が続いているので、増量のために日々の食事やカロリーの管理はしていて、目標体重に達するまではトレーニングもお休みしている状況です。体重を増やすことは難しいけれど、早くトレーニングを再開したいので頑張っています。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

moeさんmoeさん

一番の後悔は、周囲の声をしっかり聞けばよかったということです。痩せ始めたくらいに、両親や友達は心配して声をかけてくれていましたが、痩せる楽しさに溺れて何一つその声を聞き入れませんでした。あの時にちゃんとその声を聞いて、食事をとっていればこんなに苦しむことはなかったのにと感じます。

≪↓ 後編へ続く ↓≫

※この記事はメディカルドックにて《【闘病】摂食障害で155cm・30kgでも「痩せている」とは思えなかった》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

 
(後編)【闘病】食への「許容」が少しずつ増えていった

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