【闘病】「なんで? 信じられない」 サイレントキラー『卵巣がん』を身をもって体感

深夜の下腹部の一瞬の痛みから受診したところ、卵巣が10cmに腫れていることが判明。みょぬさん(仮称)は、初期症状がほとんどない「サイレントキラー」卵巣がんを告知されました。ショックと不安の中で、妊孕性温存のため、右卵巣摘出術と抗がん剤治療に臨みます。手術は成功し、現在は副作用のしびれが残るものの、がん発覚前とほぼ変わらない生活を送っています。人との繋がりを支えに、病の経験をSNSで発信するみょぬさんの軌跡を紹介します。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年12月取材。

体験者プロフィール:
みょぬさん(仮称)
30代女性。2024年1月末、深夜に経験したことがないほどの刺すような下腹部痛を感じた。負担を感じて近所の婦人科を受診したところ、片側の卵巣に腫れが判明。良性・悪性の判断ができず、大学病院を受診して病理検査をおこない、がんである可能性が高いと指摘を受けた。その後、3月に開腹手術をおこない、病理検査で「右卵巣がん」と診断された。その後、5月末から抗がん剤治療(TC療法)を開始し、8月末で4クール終了。9月中頃からは3~4カ月ごとの経過観察期間となった。 インスタグラム:@myonu.cancer

記事監修医師:
平野 卓朗(済生会横浜市東部病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目立った自覚症状がなくても進行するがんの恐怖

編集部
はじめにみょぬさんの闘病経験を通して、読者に一番伝えたいことを教えていただけますか?
みょぬさん
私の場合、病院へ行くきっかけになった下腹部の一瞬の痛み以外、これといった自覚症状はありませんでした。普段から生理痛はありましたが、それくらいでした。しかし、大学病院の医師からは「生理痛があることを当たり前と考えてはいけない」と言われ、とても驚きました。ですから、みなさんも少しでも「変だ」と感じたら、すぐに病院へ行ってほしいです。
編集部
みょぬさんの卵巣がんが判明した経緯について教えていただけますか?
みょぬさん
2024年1月末頃の深夜に、今まで感じたことのない下腹部を刺すような痛みが一瞬だけありました。すぐに治まったものの、不安になり近所の婦人科を受診しました。そこで片方の卵巣が腫れていることがわかりましたが、良性か悪性かがわからないとのことでした。大きさは10cmくらいになっており、すぐにでも大学病院を受診するよう勧められました。
編集部
大学病院を受診して診てもらった結果はどうでしたか?
みょぬさん
そして、大学病院で経腟エコーをしてもらったところ、「明らかに良性ではなく、悪性腫瘍(がん)である可能性が高い」と言われました。私自身に医学の知識はなかったため、「悪性腫瘍=がん」ということも、そのときは知りませんでした。
編集部
卵巣がんが判明したときのお気持ちについても教えてもらえますか?
みょぬさん
とにかく「信じられない」という気持ちでいっぱいでした。「生理不順も不正出血もなく、自覚症状もないのになんで?」と思いました。私なりに卵巣がんのことを調べると、初期は症状がなく、有効な検査もないため、ステージ3以上に進行してから見つかる人が多いとわかりました。また、「サイレントキラー」と呼ばれていることを知り、とにかく恐ろしいと思いました。
編集部
治療に関して、医師からはどのような説明があったのでしょうか?
みょぬさん
医師からは「卵巣は骨盤の奥にあるため生検ができず、卵巣摘出後の病理診断でがんの確定診断になる」と説明されました。そして、本来なら子宮卵巣全摘出術がスタンダードな治療なのですが、私はまだ妊娠の可能性があるため、妊孕性温存の方向で治療の話は進みました。ただし、画像検査で転移はなかったものの、開腹手術で転移が見つかった場合や病理検査で悪性度の高い組織型だとわかった場合には、命を最優先として妊孕性は諦めることになると伝えられました。
編集部
結局転移は見られたのでしょうか?
みょぬさん
幸い、手術時に転移はなく、右卵巣だけの摘出となりました。病理検査で正式に「卵巣がん」と診断されたのですが、全体のうち1%だけ顔つきの悪いがんがあったそうです。そこで妊孕性温存もしていることから、TC療法(パクリタキセル/カルボプラチン療法)という抗がん剤を4クールおこなうことにしました。
治療はつらくても人との関わりが心を支えてくれた

編集部
卵巣がんと判明してから、みょぬさんの生活にどのような変化があったかも教えていただけますか?
みょぬさん
最初の下腹部痛以外では、発症後も生活に変化はありませんでした。私の場合、ステージIAという初期で見つかったこともよかったのだと思います。もともと卵巣は2つあるものですから、残った片方が機能しているので生理は来ています。
編集部
現在の生活の様子についても伺えますか?
みょぬさん
抗がん剤の影響もあるのか、生理が不安定になったり、副作用のしびれが残っていたりはしますが、がんの発覚前とほぼ同じように過ごせています。足のしびれも徐々に和らいできていますから、後は「抗がん剤で脱毛した髪が早く伸びないかな」と見守っています。ただ、下腹部痛があったときは、前職を辞めて間もない時期で、有給消化後に3月から新しい職場で働く予定でした。しかし、がん治療が長引いたため、転職先の内定が取り消しとなり、現在は働いていません(取材時。現在は新しい職場に就職している)。そのぶん、SNSでがんの情報や自分の体験を発信したり、趣味の一人旅を再開したりして、何が起こるかわからないからこそ、今この瞬間を目一杯楽しむことにしています。
編集部
みょぬさんが治療中に心の支えにしていたものは何ですか?
みょぬさん
一番は「人との関わり」でした。家族や友人、医療従事者の方々に支えられて、本当に感謝しています。入院時は同室の人と仲良くなって話を聴いてもらい、励ましてもらったこともありました。こういう体験があるからこそ、「個室にしなくてよかった」と思います。今でもそうなのですが、時々不安になることがあり、散歩や好きなことをして気を紛らわしています。また、手術後に体力も回復してきたところで、「私の経験を生かしたい」「みんなに自分の体を大事にしてほしい」と思い、SNSでの発信を始めたことも大きいです。多くの人から励ましの言葉をもらったり、副作用対策のことを教えてもらったりすることで、実際に会ったことはなくても闘病仲間ができたようで嬉しかったです。お互いにがん患者だからこそ話せることもいろいろとあると思います。
≪↓ 後編へ続く ↓≫
※この記事はメディカルドックにて《【闘病】信じられない… 「卵巣がん」は不正出血も自覚症状もなく身を侵していた》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
→【闘病】「生理痛があることを当たり前と考えてはいけない」と多くの人に広めたい




