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【闘病】父の命を奪った「家族性ALS」に自分もなるとは… 治療法が未確立の難病

 公開日:2025/01/02
【闘病】「父に続き自分も…」 遺伝で『家族性ALS』を発症して初めてわかった人生の意味

2021年10月に足の違和感を覚えた青木渉さん。その後、家族性ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されました。ALSは治療法が確立されていない難病で、日常生活や仕事に大きな制約が生じる病気です。しかし、家族や友人の支え、そして2023年にアメリカで承認された新薬「トフェルセン」に希望を見出し、青木さんは未来に向けて歩みを続けています。ALS発覚の経緯から治療、そして新薬への挑戦に至るまでの体験を聞かせてもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年11月取材。

青木 渉さん

体験者プロフィール
青木 渉

プロフィールをもっと見る

1988年生まれ、現在35歳。趣味はサッカー(ALS発症前)、スポーツ観戦、絵を描くこと。2011年日本大学生産工学部卒業後、2012〜2021年までは自分の店を持つことを夢に、都内の飲食店に就職。4店舗の店長を務めた。2021年10月、足に違和感を感じる。2022年6月ALSと診断を受ける。同年8月に家族性SOD1型ALSと判明(20歳の時に父が同病で他界)。2023年6月YouTube『ALS 〜新薬への道のり日記〜』にて発信活動を始めた。現在、歩行障害、手や呼吸器にも徐々に症状が現れている。

https://www.sho510.com/(青木渉サポーターの会HP)

村上 友太

記事監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

編集部編集部

症状が出始めたのはいつですか?

青木 渉さん青木さん

2021年10月ごろです。小走りをしたとき足が前に出てこないという違和感を覚えました。

編集部編集部

突然、足が動かなくなったのですか?

青木 渉さん青木さん

はい。コロナ禍だったので、最初は運動不足かなと思ったんです。でも、コロナ前まではサッカーを続けていたので、そんなにすぐに運動不足になるわけはないだろうと思いました。

編集部編集部

そのあとは?

青木 渉さん青木さん

階段を上り下りするときなどに、「ちょっとおかしいな」と思うことが続きました。いろいろ試してみて、足の指に力を乗せられず、爪先立ちができなくなっているということがわかりました。

編集部編集部

どんな病気を疑いましたか?

青木 渉さん青木さん

調べてみると、原因としては二つ考えられることがわかりました。一つは椎間板ヘルニア、もう一つは神経の病気です。それで早速、近所の整形外科で検査をしてもらったのですが、椎間板ヘルニアを示すような異常はなし。紹介状をもらい、近くの脳神経内科を受診しました。

編集部編集部

そこで異常が見つかったのですね。

青木 渉さん青木さん

すぐに精密検査を受けた方がいいと言われ、都内の大学病院に紹介状を書いてもらいました。その後、検査入院をしてALSの確定診断がついたのは2022年6月です。

編集部編集部

発覚した時の心境はどうでしたか?

青木 渉さん青木さん

実は私が20歳のとき、父がALSで亡くなっていたので、足が次第に動かしにくくなってきた頃から、「もしかして自分も……」という不安がありました。だから確定診断が出たときは、それほどショックはありませんでした。

編集部編集部

お父さんも同じ病気で亡くなられていたのですね。

青木 渉さん青木さん

はい、父も同じように足の違和感から症状が始まったこともあり、大学病院を受診した頃から、「自分も父と同じ病気ではないか」という考えが強くなっていきました。確定診断が出て2か月後、遺伝子検査で家族性ALSと診断されました。

編集部編集部

当時、お仕事はされていたのですか?

青木 渉さん青木さん

はい、大学卒業後は飲食店に勤めていて、将来は自分の店を持ちたいと頑張っていたのですが、症状が進むにつれて店に立つのは難しくなり、6月以降は内勤に変えてもらいました。その後2023年1月には仕事を断念、今は傷病手当金の支給を受けています。

編集部編集部

ALSには治療薬がないと聞きます。

青木 渉さん青木さん

現在に至るまでALSは治療法が確立されていません。そのため治療の目的は病気の進行を抑制することで、当初は服薬による治療を続けながら2か月に1回くらい通院して、現状を確認するといった程度でした。

編集部編集部

治療中、辛かったことはなんですか?

青木 渉さん青木さん

どれだけリハビリを頑張っても、まったく成果が見えないことです。最初の頃は頑張って4kmウォーキングをすることもありましたが、一生懸命やってもまったく効果が見えない。それどころか確実に症状は進んでいく。それが精神的にとても辛かったです。

編集部編集部

そんなときは、何が支えになったのですか?

青木 渉さん青木さん

家族や友人の存在です。病気になる前となった後で、何が一番変わったかといえば、自分にとって大切な人の存在を実感できるようになったこと。健康だったときには感じられなかった人のやさしさを、身をもって知ることができるようになりました。

編集部編集部

そんななか、あるニュースが飛び込んでくるのですね。

青木 渉さん青木さん

はい、それまでもアメリカでALSに対する新薬「トフェルセン」の治験が行われていることは知っていました。その薬が2023年4月、アメリカで治療薬として承認されたというニュースを聞いたのです。しかも投与対象は私と同じ、「SOD1」という遺伝子変異を持つ患者。ぜひともこの薬を使いたいと思うようになりました。

編集部編集部

でも日本では未承認ですよね。

青木 渉さん青木さん

はい、その薬を日本で使うには個人で輸入するしかありません。個人で輸入と言っても、実際に私が直接製薬会社とやり取りしているわけではなく、治療を受けている大学病院による「未承認新規医薬品等を用いた医療提供」制度を活用して輸入してもらっています。そのためには莫大な費用がかかり、私個人の力では到底及びません。それで病院の勧めや周りの人の協力もあって、募金活動(※プロフィール内「サポーターの会」HP参照)を始めました。

(後編)【闘病】日本では未承認の治療薬を求めて始めたチャレンジと課題

※この記事はMedical DOCにて《【闘病】ALSで亡くなった父に続き自分も発症… 「家族性ALS」を患って始まった壮大なチャレンジ》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修医師