怪我で歯が欠けた・抜けた場合の応急処置を解説 時間との闘いが結果を分ける?
とにかく早めの受診が大切。時間との勝負という側面もあるようです。歯が完全に抜け落ちた場合でも、適切な処置によってはその歯を元に戻せる可能性もあると歯科医師の竹山先生は言います。詳しく聞かせてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【歯の痛み・腫れが出た時の応急処置のポイントを歯科医が解説 すぐに歯医者に行けない時はどうしたらいい? NG行為は?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修歯科医師:
竹山 旭(医療法人NINE NETWORK NINE DENTAL 心斎橋PARCO)
編集部
次に、歯をぶつけて欠けてしまった場合の対処法を教えてください。
竹山先生
こちらもいち早く歯科医院を受診することが前提ですが、歯の神経が出ていない小さな欠けであれば、すぐに悪化することはないでしょう。ただし、欠けた部分を舌で触ると舌を傷つけてしまうため、すぐに受診できない場合は欠けた部分を舌や指で触れないように注意してください。
編集部
歯が大きく欠けてしまった場合はどうでしょうか?
竹山先生
歯が大きく欠けて神経が表に出ている場合は時間を置かず、すぐに歯科医院を受診するようにしてください。状況によっては神経を残せる可能性がありますが、タイミングが遅れてしまうとお口の中の細菌が感染して神経を残せなくなります。この場合も先ほどと同じく、歯医者さんに来るまではお口の中を清潔に保っておくことが重要です。
編集部
神経が表に出ていないか、出ているかを判断する目安はありますか?
竹山先生
前歯であれば、欠けた面に赤い出血点がみられたら神経が出ている可能性が高いでしょう。さらに、打撲の痛みのほかに歯がすごくしみたり、電流が流れるようなズキンとした痛みがあったりする場合も神経が出ている確率が高くなります。
編集部
では次に、ぶつけて歯がグラグラしたり、抜け落ちたりした場合の対処法を教えてください。
竹山先生
歯が歯ぐきの中でグラグラしている状態の場合は、その歯を戻せる可能性が高くなります。もし頑張れるようでしたら、清潔にした手指でその歯を元の位置に戻して、すぐに歯科医院を受診してください。注意したいのは、抜ける方向に歯を動かさないことです。可能な限り元の位置に戻して、時間を置かずに診てもらいましょう。
編集部
歯が完全に抜け落ちた場合についてはいかがでしょうか?
竹山先生
歯が完全に抜け落ちた場合は、時間との闘いです。受傷後30分以内であれば歯根(歯の根っこ)の周囲に付着する「歯根膜」という組織が生き続けるため、適切な処置によってその歯を元の位置に戻せる可能性が高くなります。一方で、室温乾燥環境で30分以上経ってしまうと歯根膜が90%以上死んでしまうため、元に戻せる確率が著しく低下します。
編集部
歯が完全に抜け落ちた場合は30分がタイムリミットなのですね。抜けた歯はどのように保存して持参したらいいでしょうか?
竹山先生
可能であれば専用の保存液で汚れを洗い流し、そのあと清潔な保存液に浸して持参してください。保存液がない場合は冷たい牛乳か生理食塩水でも代用は可能です。ただし、低脂肪の牛乳は除きます。それも難しい場合は、抜けた歯をお口に含んで乾燥させないようにしてください。抜いた歯はそのままにしておくと歯根膜が壊死してしまいます。それを避けるためにも、上述の方法で湿度を保って持参するようにしましょう。
編集部
水道水は保存液の代用になりませんか?
竹山先生
水道水は歯根膜を変性させてしまうため、代用できません。アルコールも同じく、歯根膜の組織が壊死してしまうため、使用しないようにしてください。