「膵臓がんの初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!
公開日:2025/11/22

※この記事はMedical DOCにて『「膵臓がん」を発症すると「お腹にどんな痛み」を感じる?初期症状も医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓は、胃の後ろの背中側にある細長い形をした臓器です。膵臓は、食べ物を消化する膵液の分泌や、血糖値を下げるインスリンの分泌をする役割を果たしています。 この膵臓にがんが発生したものが、膵臓がんです。膵臓がんの多くは膵管に発生し、ほとんどが腺がんと報告されています。膵臓がんは小さいうちから周囲のリンパ節や肝臓などに転移しやすく、おなかの中にがんが散らばる腹膜播種も起こしやすいです。初期では症状があまり見られず、膵臓がんが発見されたときには、すでに転移や腹膜播種など病状が進行していることも多いです。膵臓がんの前兆となる初期症状
膵臓がんの発生部位により、初発症状は異なります。膵臓がんの78%が膵頭部に、22%が膵体尾部に発生します。膵頭部に膵臓がんが発生したほうが、吐き気などの消化器症状や黄疸症状をきたし早めに発見されることが多いです。黄疸
膵頭部にがんが発生すると、がんが大きくなり、胆管に浸潤して胆管を閉塞します。胆管が閉塞すると、胆汁が排泄されなくなり、ビリルビンが上昇します。ビリルビンの上昇に伴い、皮膚や眼球が黄色となってしまいます。また、体のかゆみを伴うことも多いです。このように黄疸の症状がある場合には、膵臓がんも含め、肝臓や胆のうなどの消化器疾患の病気の可能性があります。早めに消化器内科を受診しましょう。嘔気・嘔吐
胃や十二指腸の裏側に位置する膵頭部にがんができた場合、進行すると嘔気や嘔吐などの消化器症状がみられることもあります。これは、がんが大きくなり胃や十二指腸などの消化管に浸潤すると、食物の通り道が狭くなったり、閉塞してしまうためです。食べ物が通過できなくなり吐き気や嘔吐の症状がみられるようになります。お腹のしこり
膵体部や尾部にがんができた場合、症状が出にくく、がんが大きくなって初めて気が付くことも少なくありません。そのため、がんができた部位のしこりとして気が付くこともあります。横になった時などに自分のおなかのしこりに気がついたら、膵臓がんの可能性もあります。消化器内科で相談をしましょう。腹痛
膵がんが周囲の臓器に浸潤すると、腹痛が出現することもあります。腹痛だけでは、他の病気と区別はつきませんが、同じ場所の痛みが持続する場合には消化器内科で相談をしてみましょう。背部痛
膵体部や尾部にがんが発生した場合、後方へがんが浸潤し、後腹膜へ到達すると痛みが出現することもあります。難治性の背部痛や腰痛が起こった場合、膵臓がんの可能性もあります。背部痛の原因について、整形外科や内科で相談をしてみましょう。「膵臓がんの腹痛」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの腹痛などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの腹痛」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
手遅れとなる膵臓がんの症状について教えてください。
和田 蔵人 医師
膵臓がんの症状のうち、特定の症状が手遅れというものはありません。しかし、お腹が張ったり、体重が減少する症状は病状が進行している可能性があります。腹膜播種などが起こった結果、おなかの張りや体重減少などが起こっているのであれば、膵臓がんの進行が進んでいる可能性が高いと考えられます。早めに消化器内科を受診しましょう。
膵臓が弱っているサインとなる症状はありますか?
和田 蔵人 医師
膵臓が弱っている、というのは膵炎などで膵臓の機能が低下していると考えられます。慢性膵炎などで膵臓の消化酵素の分泌が低下すると、脂っぽいものが上手く消化できず下痢をしたり、脂肪便(白から黄色い未消化の脂肪が多く含まれている便)が出ることがあります。また、膵臓からのインスリンの分泌が低下すると、血糖値が高くなりやすくなり糖尿病が発症することもあります。のどが渇いたり、尿量が多くなったり、体重が減ることが糖尿病の症状の1つです。これらの症状がある場合、膵臓の機能が低下している可能性があります。消化器内科で相談してみましょう。
まとめ 膵臓がんの危険因子がある場合は、消化器内科で相談しよう
膵臓がんは初期では症状が分かりにくいがんです。そのため、早期で発見することが難しく、発見された時には、病状が進行していることも少なくありません。膵臓がんの危険因子がいくつか報告されています。膵臓がんの家族歴や、慢性膵炎、IPMNなどが危険因子であるとわかっています。これらの家族歴や病気を持つ方は、定期的に消化器内科で相談し、検査をすることも大切です。また、腹痛や吐き気、おなかの張り、背部痛などの症状が持続する場合には膵臓がんをはじめとする消化器系の病気の可能性があります。早めに消化器内科を受診して相談することが膵臓がんの早期発見につながります。これらの症状に悩んでいる方は、早めに受診しましょう。「膵臓がん」と関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。消化器科の病気
- 胃がん
- 胃・十二指腸潰瘍
- 慢性膵炎
- 胆のう炎
- 胆のうがん
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 胆石
「膵臓がん」と関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 腹痛
- 黄疸
- 嘔気、嘔吐
- 背部痛
- おなかの張り
- 体重減少