「膀胱がんの初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!

膀胱がんは定期的な健康診断で行う尿検査などで見つかることも珍しくありません。 治療は、膀胱内の深い層にはがんが及んでいない「表在性がん」の場合は内視鏡で腫瘍を完全に切除し完治させることも可能です。 しかし別の種類である「浸潤性がん」と診断されると開腹手術や抗がん剤治療を実施することが一般的です。場合によっては膀胱を全摘することもあります。 膀胱を全摘となるとその後の生活も大きく変化することになるので、早期発見が重要です。 この記事では膀胱がんの初期症状を解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「膀胱がんの前兆となる4つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
膀胱がんとは?
膀胱がんの多くは、腎盂・尿管・膀胱・尿道の一部の表面を覆う尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍です。国内で新たに膀胱がんと診断される人は年間約20,000人とされ、およそ3対1の割合で男性に発生する率が高いとされています。およそ8割が60歳以上です。また喫煙は重要な危険因子です。喫煙者は非喫煙者に比べおよそ4倍、過去に喫煙歴のある人は約2~3倍膀胱がんになりやすいことがわかっています。
膀胱がんの約90%は「移行上皮がん」です。しかしまれに扁平上皮がん・腺がんなども発生します。
膀胱がんには「表在性膀胱がん」「浸潤性膀胱がん」「上皮内がん」の3タイプがあり、「表在性膀胱がん」は膀胱表面の粘膜にがんがとどまっているタイプです。「浸潤性膀胱がん」は膀胱の筋肉の層まで広がった多臓器への転移の可能性もあるもので、「上皮内がん」はがんが粘膜の下を拡がっていく特徴を持つがんです。
膀胱がんの多くは「表在性膀胱がん」で、転移することはあまりないとされていますが放置していると浸潤がんや転移のリスクのあるがんに変容することもあります。
いずれにしても膀胱がんは術後2年以内に50%の患者さんが再発するとされており、早期の膀胱がんであった場合でも定期的な検査をおすすめします。
膀胱がんの初期症状
膀胱がんは、他のがんと比べて早期に症状が出やすいとされています。代表的な初期症状が「血尿」で血の塊が排出されることもあります。そのほかに頻尿・排尿痛・残尿感といった膀胱炎に似た症状が一般的です。血尿は肉眼でも血が混ざっていることがわかる「肉眼的血尿」が多く膀胱がん患者さんの約80%がこのタイプで、膀胱炎症状は20~30%の人に見られるとされています。血尿は排尿時の痛みや違和感は伴わないことがほとんどで、排尿終盤ころが赤くなる終末時血尿のパターンが多いようです。
血尿が出る
「肉眼的血尿」が見られる人の膀胱がんの陽性診断的中率は、70歳以上の高度喫煙者(26本以上/日)では12.5%にものぼります。「肉眼的血尿」は自然に治まることも多く、受診しないまま放置されることがあるので注意しましょう。また血尿には肉眼ではわからず顕微鏡で発見できる「顕微鏡的血尿」(尿潜血陽性)もあり、膀胱がん患者さんの6.4%に見られるため注意が必要です。検査などで尿潜血陽性と診断された場合は腎臓内科や泌尿器科などの専門科の受診をおすすめします。
尿の頻度が高い
上皮内がんにかかると、膀胱内に炎症が発生しているのと似た状態なので膀胱の膨張が困難になることがあります。そのため尿をためにくくなり頻尿が起きます。一方、頻尿の原因には心因性のものなどさまざまあるので、早合点せず泌尿器科で受診してください。
残尿感がある
排尿後も尿が残ってすっきりしない残尿感は膀胱がんの初期症状に見られる症状です。膀胱がんにかかると、腫瘍が膀胱粘膜を刺激するため残尿感が残ります。たとえ膀胱がんが原因でないにしても、慢性前立腺炎・膀胱炎・尿道炎・糖尿病といった病気にかかっている恐れもあるので専門の医師の診断を受けてください。
排尿時に痛みがある
膀胱がんにかかった人が排尿時に痛みがある場合、がんが深い筋層まで到達している可能性があるため、速やかに専門の医師の診断・治療を受けましょう。排尿痛がある場合は、膀胱炎・尿道炎をまず疑うことが多いですが、それらの治療をしても痛みが引かない場合は膀胱がんの検査を受けましょう。
「膀胱がんの初期症状」についてよくある質問
ここまで膀胱がんの初期症状や早期発見のための検査法・治療法・予防法を紹介しました。ここでは「膀胱がんの初期症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
初期症状がある場合は発症している確率が高いですか?
村上 知彦(医師)
日本泌尿器学会によると代表的な初期症状である「血尿」の患者さんが、3年以内に尿路上皮がんに罹患する確率は男性が7.4%で、女性が3.4%です。これを考えると例えば血尿が出たからすぐに膀胱がんと判断するのは早計すぎるでしょう。しかし男女とも45歳ころから膀胱がんが増加し始め、さらに60 歳以上になると急に増えていくので、初期症状が出たら速やかに検査を受けたほうがいいでしょう。またその後に初期症状が治まっても定期的に検査を受けることをおすすめします。
早期発見できれば治療が可能ですか?
村上 知彦(医師)
筋肉層には病変が達していない「表在性膀胱がん」であれば、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)によりすべてがんを取り除けるため短時間の治療により完治することも可能です。
編集部まとめ
膀胱がんは「転移する危険が少ない」といわれていることが多いようです。 しかし種類によっては転移するリスクが高いものや、進行するにつれて転移するリスクの高いがんに変わってしまうケースもあるので注意が必要です。 また一度罹患し、外科手術などで完治しても、再発するケースが高いので、再発防止のためのケアを継続していく必要があります。 いずれにしても膀胱がんのさまざまなリスクから自分を守るには、早期発見がカギになります。 早期発見には毎日の尿の色を観察することと、定期的な尿検査が重要です。 そして万が一、血尿が出た場合はすぐに医師の診察を受けてください。時間の経過とともに血尿が治まっても、決して放置せず速やかに検査を受けることをおすすめします。「膀胱がん」と関連する病気
「膀胱がん」と関連する病気は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
「尿路がん」は尿の通り道にできたがんを総称したもので、大きくは膀胱がんも含まれますが、腎盂や尿管にできたものを「上部尿路がん」として膀胱がんとは区別しています。
尿路がんは男性や60歳以上の高齢者が多く罹患する病気です。前立腺癌は、前立腺の中にがん細胞が発見される病気です。
前立腺は男性にだけある生殖器の一部で、前立腺がんはリンパ節と骨に転移する性質をもっています。初期症状では血尿や尿の排泄が困難になるといったものがあります。
「膀胱がんの初期症状」と関連する症状
「膀胱がんの初期症状」と関連している、似ている病気は10個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 尿路結石
- 尿道炎
- 膀胱炎
- 腎盂腎炎
- 尿路がん
- 腎臓がん
- 前立腺がん
- 腎・尿路の外傷
- 糖尿病性腎症
- 尿道ポリープ
血尿は時間の経過とともに出てこなくなる場合もあり、検査を受けるタイミングが遅れることがあるので注意しましょう。