「抗うつ薬が太る」と言われる理由3選! 体重増加を防ぐポイントは?
主にうつ病治療で使用される「抗うつ薬」。よく聞く副作用として「体重増加」が挙げられますが、何故なのかご存知でしょうか。薬剤師の長岡さんによると、抗うつ薬が太ると言われる所以は3つあるとのことです。この3つの原因について、詳しく伺いました。
監修薬剤師:
長岡 志帆(薬剤師)
編集部
どうして抗うつ薬が太りやすいと言われているのでしょうか?
長岡さん
抗うつ薬や抗精神病薬が太りやすい原因としては、3つ挙げられます。1つ目は、「薬の作用によるもの」です。これらの薬には、抗ヒスタミン作用と抗5HT2C作用があります。ヒスタミンは満腹中枢を刺激して満腹感を生じさせる物質です。この働きが薬で抑制されると満腹感を得られず、ついつい食べ過ぎてしまいます。また、ヒスタミンはグレリンという胃で分泌されるホルモンにも関わります。抗ヒスタミン作用でグレリンの量が増えて、食欲亢進と脂肪蓄積の作用が増強されてしまいます。抗5HT2C作用は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを増やす作用があり、セロトニンが増えることでリラックスできる状態になります。一方で、リラックス効果で運動量が減り、代謝が下がったことで体重が増加してしまう結果にもなってしまいます。
編集部
2つ目の原因を教えてください。
長岡さん
2つ目は睡眠障害による「ホルモンバランスの乱れ」です。抗うつ薬や抗精神病薬を処方される患者さんには睡眠障害を訴える方が多いのです。睡眠時間が十分でないとホルモンバランスが乱れ、体の代謝が低下してしまいます。これは、病気の有無に関わらず皆さんに言えることですね。
編集部
3つ目の原因はどのようなものでしょう?
長岡さん
3つ目は薬の効果で体調が回復したことによる食欲増加、体調回復です。患者さんの中には症状が辛く食事が十分に摂れず、体重が減ってしまった方が多くいらっしゃいます。薬を服用することで体調が回復し、以前と同じ食事量に戻れば体重も元に戻るので、人によっては「太った」と感じてしまうかもしれません。
編集部
なるほど。体重増加を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?
長岡さん
まずは日々体重測定をしましょう。薬を服用してからどのように体重が変化したのか記録することで、薬の副作用か別の要因かを判断することができます。次に食事内容の見直しと運動習慣です。先程お伝えしたとおり、薬の作用で満腹感を得にくくなってしまう傾向にあるので、自分で食事内容を意識しましょう。量だけではなく、栄養バランスも大切です。また、体調が落ち着いているときには、なるべく体を動かすようにしましょう。運動は体重増加予防以外にも、心の回復にとても良いと言われています。それでも体重増加が気になるときはかかりつけ医に相談しましょう。薬の減量や別の種類の抗うつ薬にすることで改善するかもしれません。
※この記事はMedical DOCにて【「精神薬を服用すると太る」と言われる理由3選! 原因と対策を薬剤師が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。