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俳優・関貴昭さん逝去 死因の「食道がん」の初期症状・原因・なりやすい人の特徴を医師が解説

 公開日:2024/04/23

俳優の関貴昭さん(54)が「食道がん」のため、4月15日に亡くなっていたことを所属事務所が自社サイトに発表しました。同サイトによると、「かねてより病気療養中だった」そうです。

男性の罹患率が高い食道がんは初期症状がほとんどないという特徴があり、早期発見・早期治療がとても重要です。

食道がんは、飲酒している男性が特に発症しやすく、死亡率は男女ともに減少傾向ですが、男性の方が多いです。

本記事では、食道がんについて病態・症状・治療法などについて解説します。

「自分は大丈夫」と思わず、食道がんの発症リスクを下げるためにも、ぜひ参考にしてください。

※この記事はMedical DOCにて【「食道がん」を疑う初期症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

食道がんとは?

診察中の医師

食道がんとはどんな病気ですか?

食道は咽頭と胃をつなぐ管状の臓器で、口から食べたものを胃へ運ぶ役割をしています。この食道にがんが発症したものが食道がんです。
食道がんは食道のどこにでも発症しますが、日本人の約半数の人は食道中央付近に発生しやすく、その次に食道下部に多くみられます。食道の内面を覆っている粘膜にがんは発生し、複数発症することもあります。
食道は体の中心部に位置し、気管・心臓・肺・大動脈などの臓器に囲まれている大切な臓器です。食道がんが進行してしまうとほかの臓器に浸潤・転移するリスクが高くなります。
食道がんが食道の壁の粘膜に留まっている状態を早期食道がん、粘膜下層で留まっているのが表在食道がん、それよりも深く進行しているものを進行食道がんと呼んでいます。

食道がんにみられる症状を教えて下さい。

代表的な症状は胸がしみるような感覚・喉がつかえるような感覚・体重減少・胸部痛・背部痛・嗄声などが挙げられます。
この中でも初期に感じやすいのは胸がしみるような感覚で、食物を飲み込んだ時に胸がチクチクするような感覚がある人もいます。このような症状を感じた場合は食道がんの可能性があるので、早めに医療機関へ受診し内視鏡検査を受けてください。胸がしみるような感覚はがんがある程度進行すると感じなくなるので、体のサインを見逃さないようにしましょう。
ほかの症状はある程度がんが大きくなると、自覚しやすい症状です。がんがある程度大きくなると食物の通りが悪くなってつかえる感覚があったり、その影響で食事量が減って体重減少が出たりします。体重が3ヶ月の間に5〜6kg減ったら危険です。
嗄声とはかすれ声のことをいいますが、食道のすぐ横に声を調節する神経があり、神経ががんで圧迫されることによって嗄声が出ます。嗄声を自覚し、耳鼻科へ受診しても腫瘍や病変がないため経過観察で終わってしまう場合が多いです。
食道がんは初期の自覚症状がほぼなく、既に出ている症状も見落としがちなので、少しでも当てはまる症状があったら早めにCT検査内視鏡検査を受けることで早期発見につながります。

食道がんは何が原因で発症するのでしょうか?

食道がんを発症する原因は1つではありません。原因となる大きな要因は喫煙大量の飲酒です。日本では食道がんの90%以上が扁平上皮がんですが、米国では腺癌が増加傾向にあり、日本でも今後増えることが予想されています。
この腺癌とは、胃の近くにある食道下部に発症するがんです。扁平上皮がんは特に喫煙と飲酒が相乗作用してリスクが高まるとの指摘があります。腺癌は胃液などが食道へ逆流する胃・食道逆流症肥満が、発症のリスクを上げる原因となります。

食道がんの特徴やリスク

患者と医師

食道がんになりやすい人の特徴や年代はありますか?

まず食道がんになりやすいのは女性よりも男性の方が大多数で、年齢は50〜70歳が多く発症します。男性は胃・肺・大腸・前立腺・肝臓に次いで6番目に多く、女性と比べて発症率は5〜6倍です。
リスク要因で1番考えられるのは喫煙で、食道がん患者の60%はタバコが原因だと考えられています。そこに飲酒も加わると、さらにリスクが高くなるのです。またお酒を飲むと顔が赤くなる(フラッシャー)人は、食道がんのリスクが高くなることが知られています。
その理由が、アルコールに含まれているアセトアルデヒドです。このアセトアルデヒドは二日酔いや顔が赤くなる原因物質ですが、体内に長時間滞在すればするほど食道がんの発症リスクが高くなります。ほかにも熱い物を飲食する習慣がある人や、肥満などがリスク要因として挙げられます。
50歳以上のタバコと飲酒が好きな人は、発症リスクが高めなので要注意です。

食道がんを疑った方が良い初期症状などあれば教えて下さい。

食道がんの初期症状として、塩分の高い食べ物・酸味が強い食べ物・熱い物を食べた時にしみるなどの症状があります。また食道の内径は2mmと狭いので、がんが進行するとつかえる感覚も出てきます。
食道の周径の半分以上にまでがんが大きくなると、力を入れても食べ物が飲み込めなくなり、早めの治療が必要です。
また食道の近くには声を調節する神経が走っていますが、がんに圧迫されることによって嗄声(かすれ声)が出ることもあります。嗄声の症状で耳鼻科へ受診しても、咽頭喉頭に異常はなく見逃されてしまう可能性があります。
食道がんは初期症状の自覚がないことがほとんどなので、わずかなサインも見逃さないようにしましょう。

食道がんが進行してしまうとどんなリスクがありますか?

食道は心臓・肺・気管・大動脈など、大切な臓器に囲まれています。食道がんが進行するとより深く外側に大きく広がり、気管や大動脈など周囲の臓器に広がっていきます。これが浸潤です。
また食道の壁内にある血管やリンパ管にがんが侵入すると、血液やリンパの流れに乗って、リンパ節・肺・肝臓などの臓器にがんが移ってしまいます。これは転移といいます。
このようにがんの発見や治療が遅れてしまうと周囲やほかの臓器にも影響が出て、治療がさらに困難になっていくので、早期発見と早期治療がとても重要です。

がんと聞くと怖いイメージがあるのですが完治するのでしょうか?

食道がんは早期発見・早期治療ができれば比較的予後は良好です。粘膜に留まっているがんであれば内視鏡下で切除できない場合でも、手術をすれば5年生存率は約78.8%です。
粘膜下層まで広がっていた場合も、リンパ節転移しなければ手術で完治が期待できます。ステージ4まで進行した場合の5年生存率は、約9.2%程度しかありません。
食道がんを発症した人は、約23%の確率でほかの臓器にもがんができる可能性があるため、治療後も定期的に検査を受けることが大切です。ほかの臓器にできる割合は、頭頸部がん・胃がん・大腸がんの順番となっており、検査はCT検査だけでなく内視鏡検査も受ける必要があるでしょう。

食道がんの治療方法や治療中の過ごし方

医師の解説

食道がんの検査方法や治療方法が知りたいです。

食道がんの検査は、治療方針を決めるためにがんの進行度・周辺臓器への広がり・リンパ節・肺・肝臓などへの転移の有無を調べる必要があります。そのため上部消化管内視鏡検査だけでなく、造影検査・超音波検査・病理検査・CT・MRI・PET検査・血液検査など様々な検査を行います。確定診断で行われる検査は、主に上部消化管内視鏡検査病理検査です。
治療方法はがんの進行度や体の状態を含めて検討・決定します。検査で粘膜にとどまると判断して内視鏡治療を行っても、病理組織検査で粘膜より深く浸潤している場合には、手術や化学放射線療法などの追加治療が行われることがあります。
ステージII期、III期に対する治療は、治療前に手術に耐えうるかの全身状態を調べて、手術可能と判断した場合は術前に化学療法を行って手術を行うのが一般的です。手術を先行した場合は、切除標本の病理組織検査で、リンパ節転移の有無などを調べて、転移陽性の場合は術後化学療法を施行します。
ステージIV期食道がんでは病変が局所にとどまるIVa期では化学放射線療法が、またIVb期ではがんが局所をこえて進行している状態であり、化学療法が一般的です。しかし、患者さんのパフォーマンスステータス(PS)が不良な場合は緩和的対症療法が主体となります。

治療中の過ごし方で気をつけることなどあれば教えて下さい。

食道がんで手術を行った場合、食事の通り道が変わるため食事量が減り、体重も減少していきます。また胃液の逆流による逆流性食道炎や、飲食物が早く小腸に吸収されるダンピング症候群も引き起こしやすくなります。ダンピング症候群とは食道や胃の手術の影響で食べ物の通り道が変わったことで、食べ物が直接腸に流れ込むことでめまい・動悸・頭痛など不快な症状が出る病気です。
逆流性食道炎やダンピング症候群への対策は、1回の食事量を少なくし食事回数を増やすことや、30分以上時間をかけてゆっくり食べるようにし、食後は上体を上げた状態で休むなどの工夫が必要です。
ほかに胸焼けや食後の腹痛・つかえ感が続く時は医師へ相談し、対応してもらいましょう。

治療による副作用や後遺症はありますか?

まず放射線治療では照射部位の胸焼けやつかえ感を感じやすく、皮膚の乾燥や日焼けに似た症状も現れる場合があります。これらの症状は治療開始してから2〜4週間ほどで改善しますが、症状が酷い場合は治療を中断することもあります。
また、治療が終わった後も放射線によって肺炎心内膜炎胸水貯留など周辺の臓器に影響して症状が出ることもあり、治療後も継続して医師の観察が必要です。
ほかにも化学療法の副作用で、髪が抜けやすくなる・口内炎・貧血・嘔気・易感染といった症状が出ることもありますが個人差があります。副作用が強く出る場合は我慢せず、医師へ相談しましょう。

食道がんが再発する可能性はあるのでしょうか?

食道がんが再発する確率は40〜60%で、米国では50%以上です。再発する場所は、リンパ節・局所が20〜70%・肺・肝臓・脳など遠隔臓器への転移が10〜50%と比較的高い確率となっています。
食道がんの根治切除後に再発した場合、生存率は極めて低く再発と診断を受けてから平均5〜10ヶ月しか生存期間がありません。食道がんの再発は、80〜90%程度の確率で初回の治療から2年以内に発見されることが多いので、この期間は特に再発に注意し経過観察していく必要があります。
そのため治療が1度終わって安心するのではなく、治療後も気になる症状があったら早めに医師へ相談しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

近年禁煙する人が増えつつありますが、その中でもまだ喫煙を続けている人もいるでしょう。タバコと大量の飲酒は、食道がんの発症リスクを高める大きな要因になります。
長生きするためにも禁煙や飲酒を控えるなど、健康管理を意識すると食道がんになるリスクを減らせます。ほかにも緑黄色野菜や果物の摂取は食道がんの予防になるという指摘もあるので、栄養バランスのいい食事を心がけてください。
また食道がんは早期発見早期診断がその後の人生を大きく左右するので、少しでも気になる症状があったら早めに医療機関へ受診しましょう。自覚症状がほとんどないので、定期的に内視鏡検査を受けると発見しやすくなります。

編集部まとめ

喉を気にする男性
食道がんは1度根治手術を行っても、再発するリスクが高い非常に危険な病気です。再発してしまうと余命が短くなる傾向にあるので、発症予防が大事になります。

喫煙・飲酒・肥満・熱い物・刺激物を習慣的に食べている人は発症リスクが高く、50歳以上の男性でこれらが当てはまる人は要注意です。

自分が当てはまると感じたら嗜好品など控えるようにし、少しでも気になる症状があったら早めに医療機関へ受診することで、早期発見につながり完治率が高くなるでしょう。

この記事の監修医師