「くも膜下出血発症後1~2ヶ月」に現れる症状はご存知ですか?医師が解説!

くも膜下出血の発症後1−2ヶ月間の経過とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「くも膜下出血の主な3つの症状」はご存知ですか?初期症状も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
目次 -INDEX-
「くも膜下出血」とは?
くも膜下出血は、成人例のほとんどは脳動脈瘤の破裂によって発症します。多くの場合、一度発症してしまうと社会復帰が難しくなることが知られています。
このような危ない病気だと聞いたことがあっても、実際にどのような症状が現れるか、経過をたどるかということは、なかなか想像がつかないのではないでしょうか。
実は、発症後すぐに行う治療だけではなく、発症後から2週間以内はとても慎重な入院管理をする必要があり、さらに発症後1-2ヶ月程度にはまた症状が悪化して手術を要することもあります。
つまり、発症時点と、発症後2週間以内と、発症後1-2ヶ月程度という3つの大きな山を乗り越えて、やっとひと段落というイメージです。
この記事では、発症の前兆、発症時、直後から慢性期までの症状について解説いたします。
くも膜下出血の発症後1−2ヶ月間の経過
冒頭で説明したように、くも膜下出血は、発症後すぐに行う治療だけではなく、発症時点と、発症後2週間以内と、発症後1-2ヶ月程度という3つの山を乗り越える必要があります。
発症時には、脳動脈瘤の破裂の場合には脳動脈瘤に対するクリッピング術(開頭手術)やコイル塞栓術(カテーテル手術)を行い、脳動脈瘤の再破裂を予防します。
発症後から2週間以内は、脳血管が縮んで細くなる(攣縮する)ことによって脳梗塞を発症する可能性の高い時期であるため、この脳梗塞を防ぐために連日各種薬剤の投与や血圧、頭蓋内圧などの細かい管理を行います。
2週間が経って一息ついたかと思いきや、発症後1-2ヶ月程度で水頭症を発症し認知症のような症状が出現することもあり、この場合には手術を行うことで水頭症の症状が改善します。
手足の筋力低下、しびれ、しゃべりづらさ
発症後2週間以内の脳血管攣縮期(脳の血管が縮んで細くなる時期)には、脳梗塞の症状がいつでも起こる可能性があります。脳の血管が縮んで細くなると、その部分の脳血流が途絶えて脳梗塞を発症し後遺症が生じてしまうため、なんとしてもこれは避けたいのです。
血管を広げる作用のある内服薬や点滴薬を投与したり、適切な血圧管理や頭蓋内圧管理を行ったり、ありとあらゆる手を尽くして治療します。
ただし、それでも手足の筋力低下、しびれ、しゃべりづらさなどの脳梗塞を疑う症状が一瞬でも出現することがあります。この場合には、すぐにカテーテル治療を行い、縮んで細くなった血管の場所を特定して、その血管だけをカテーテルで選んで血管拡張薬(血管を拡げる作用のある薬)を流し込む手技を行います。症例によっては連日連夜この治療を必要とすることもあるのと、3週間くらいまで脳血管攣縮期が続くこともあるため、この時期は治療担当の脳神経外科医にとって非常に緊張する期間です。
ぼーっとしている、物忘れする、うまく歩けない
発症後1-2ヶ月程度の時期には、正常圧水頭症という病気が起こりやすくなります。ぼーっとしたり転びそうになってしまったり、おしっこが間に合わなかったりというような症状が現れることがあります。くも膜下出血の発症から3ヶ月以上経過した後に発病するケースもあります。
もともと頭蓋内では、脳組織周囲に脳脊髄液という透明な液体が絶えず循環して入れ替わっています。この脳脊髄液が大量に溜まって脳が圧迫される状態を水頭症といいます。
くも膜下出血では、脳脊髄液が吸収されるシステムがうまく働かなくなり、正常圧水頭症を発症しやすいと言われています。
正常圧水頭症は治る認知症として知られています。手術によって頭蓋内に溜まった水を腹部などに排液するルートを作る手術(シャント手術)を行うと認知症の症状が改善します。現時点で治療効果の高い薬物療法はありません。
すぐに病院へ行くべき「くも膜下出血の症状」
ここまではくも膜下出血の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
経験したことのない突然の激しい頭痛がある場合は、脳神経外科へ
繰り返しの説明にはなってしまいますが、初めて経験する突然の激しい頭痛が、最も多いくも膜下出血の症状です。頭痛に加えて嘔気・嘔吐や意識状態の悪化が見られる場合には、くも膜下出血である可能性が高まります。
このような症状を認めた場合には、ためらうことなくすぐに救急車を呼んで脳神経外科のある病院を受診するようにしてください。
受診・予防の目安となる「くも膜下出血」のセルフチェック法
- ・経験したことのない突然の激しい頭痛がある場合
- ・頭痛の後に意識を失った場合
- ・頭痛と嘔吐が急に出現した場合
「くも膜下出血の症状」についてよくある質問
ここまでくも膜下出血の症状を紹介しました。ここでは「くも膜下出血の症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
軽いくも膜下出血の症状について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
病院では、くも膜下出血の発症時の状態を重症度で分類して、発症後の経過の予測を行って治療します。軽度(軽いくも膜下出血)の場合には、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛や嘔気・嘔吐がみられます。なお、中等度の場合には意識を失うこともあり、重度の場合には、意識状態が非常に悪くなります。
他にも経過の予測を行う指標はいくつかあり、これらを総合的に判断をして治療します。
高齢者がくも膜下出血を発症した場合、どのような症状が現れますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
高齢者も若年層もほとんど症状に差はありません。頭痛と嘔気・嘔吐、意識障害の全てかいずれかの症状が現れます。
編集部まとめ
くも膜下出血を発症した多くの人が何らかの後遺症を持つことが多いのは、発症時だけではなく、発症後1-2ヶ月もの間、乗り越えるべき危ない時期があるためです。持病やもともとの体力の問題などのために、経過が良くないと残念ながら救いきれないこともあります。
そのような事態にはならないように、発症したらすぐに病院を受診することはもちろん、発症を予防することが重要です。生活習慣病の発症予防や悪化予防、定期的な脳ドックを受けること、未破裂脳動脈の治療を受けることなどで、脳の健康を保つようにしていきましょう。
「くも膜下出血の症状」と関連する病気
「くも膜下出血の症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
くも膜下出血の原因は年齢で大きく異なり、小児では脳動脈奇形といった先天的な血管病変の破裂が大半を占めます。一方で成人では脳動脈瘤の破裂が原因のほとんどです。
なお、頭部打撲でも打撲の衝撃が強い場合には、脳血管が出血してしまいくも膜下出血(外傷性くも膜下出血)を起こす場合もあります。外傷性くも膜下出血では脳梗塞の症状を出現することは少ないのですが、1ヶ月以上経過して正常圧水頭症を発症することはあります。
「くも膜下出血の症状」と関連する症状
「くも膜下出血の症状」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
発症時と、発症後2週間以内と、発症後1ヶ月頃(以降)とは出現する症状が異なります。発症後1ヶ月間程度は入院していることも多いので、症状の変化があまりわからないかもしれませんが、日々の症状変化を気にしながら脳神経外科では治療をしています。
参考文献