繰り返される衝動が抑えられない心の病気!強迫性障害とは?
日常生活の中には、些細なきっかけから不安や戸惑いを覚えてしまうことがあります。
多くの場合はその感情を引き起こす原因を取り除くことや克服することで解消できるものですが、特定の原因もない上に自分の意思とも無関係なところで不安だけが勝手に独り歩きし、一般的な理屈では考えられないような行動を取ってしまうようになれば、その裏にある心の病気の存在にも目を向けてみる必要がありそうです。
今回は、日本でも成人の50~100人に一人の割合でその傾向がみられる「強迫性障害」という病気に注目し、この疾患の特性や専門的なケアなどについてMedical DOC編集部がお届します。
この記事の監修ドクター:
野賀正史 医師 うらわメンタルクリニック 院長
目次 -INDEX-
強迫性障害とは
一般に言う几帳面な人というのは、念入りな確認や行動で抜け目のない仕事をこなす人を指します。
一方、心の病気である「強迫性障害」は単なる几帳面さと一線を画し、必要以上に何度も同じことを確認したり、潔癖さの度を越えて手や物を洗い続けたりする問題行動や、自分の意思とは別の所で湧き出す不安イメージから離れられずに日常生活に支障をきたすことを言います。
強迫性障害における2大特徴
精神疾患としての強迫性障害とは、頭の中で繰り返し湧き出す不安イメージのことを「強迫観念」、意味なく繰り返される問題行動のことを「強迫行為」としてこれを区別しています。
強迫性障害が日常に支障をきたす理由としては、この「強迫観念」と「強迫行為」が患者自身だけではなく周囲の人間関係も巻き込みエスカレートしていくためであると言えるでしょう。
強迫性障害がもたらすこれらの問題は、患者が社会から孤立してしまう事態につながる大きな問題に発展しまう可能性があることを意味しています。
障害の兆候と発症する原因
強迫性障害の兆候や発症時期
強迫性障害は男女の性差なく発症し、その出現率は平均的な人の一生の中で40~50人に一人の割合と言われています。
一方で早い人では10代からその兆候が見られるようになり、症状が重くなったり軽くなったりを繰り返すうち、徐々に自分では制御不可能な状態にまで進行するのが一般的です。
強迫性障害の原因と考えられるもの
強迫性障害の原因については、脳の中の特定部位に障害が起こっている場合や、気分の安定や睡眠とも関わりの深い脳内の神経伝達物質「セロトニン」の著しい減少などが考えられているほか、次のようなきっかけからも発症すると言われています。
・過度のストレスがかかる出来事
・人生における生活環境、人間関係の変化(思春期・就職・出産など)
・もともと持っている几帳面な性格や道徳観・正義感などがエスカレート
・家族など身近な人からの影響
・感染症やほかの神経性疾患との関連
強迫性障害と遺伝的な要素の関係は明確でないものの、家族間で受ける影響によってその兆候が顕著に現われてくる傾向は否めません。
特に子供の場合は身近な親の行動や教えが習慣化しやすく、それが高じて自分でも気が付かない間に発症するというケースもあります。
強迫性障害の症状とは
強迫性障害の2大特徴として紹介した「強迫観念」と「強迫行為」は、無限のループで繰り返されると言っても過言ではありません。
強迫性障害を発症した場合は不快なイメージや単語などが次々と頭に浮かび、それを払拭もしくは中和する感覚で無意味な行動を繰り返すようになります。それらの繰り返しは根本的な問題の解決にはつながらず、あくまで儀礼的なものにすぎないことがこの病気の厄介な点であり、自暴自棄になりつつも患者自身では止められないため激しい苦痛を伴います。
では、強迫性障害とはどんな強迫行為を伴うのかその具体例をみてみましょう。
汚染への不安
トイレを済ませた後の汚れが気になって繰り返し水を流す、または手を何度も洗うなどは強迫性障害の人に多くみられる傾向です。
さらに、不特定多数の人が利用する場所や乗り物に対しても過剰な反応を示し、手や体に触れた場所の清潔を保とうと必死になるなどします。
自分や他人を傷つけてしまうことへの不安
強迫性障害では他者との関わりの中でも必要以上に先回りして考える特徴があります。
自分の言動で他人が傷ついていないか根拠もなく不安になり、実際の現象が起きていないにも関わらず執拗に何度も繰り返し確認をおこなうこともしばしばみられます。
順序・数字・対称であることへのこだわり
物事の規則性に強くこだわるのも強迫性障害の特徴です。
着替えの順序や数字の並び、特定の数字の出現に嫌悪感が募る、また物の配置が左右対称であることに執着する場合もあり、これらが乱れると初めからやり直す必要があるなど何かと無駄な時間を作りがちな傾向もみられます。
過剰な確認行為
戸締りや火の元の確認など誰でも注意したいものはもちろんですが、強迫性障害がみられる人の場合は自分の確認にも自信が持てずに疑い続け、エスカレートすると周りの人にも過剰に求めるようになります。
無用なものをため込む
要不要の区別が付けられずゴミまでため込んでしまう傾向にあるのが強迫性障害であり、ズボラな性格というよりいつか使うかもしれないといった強い思い込みからくる強迫観念や、不安を紛らわすために本来捨てるべきものまで収集し整理すらできない強迫行為などが挙げられます。
強迫性障害に効果が期待できる治療法
つらい症状を改善し生活の質を向上させていくために専門的な治療は不可欠ですが、強迫性障害を患っていながらも精神科や心療内科に相談することをためらってしまい、症状を悪化させて悩んでいる方も少なくないのが現状です。
ここでは専門の医療機関を受診するための参考として、医療機関で実際におこなわれている治療法と今後に期待が持てる新しい治療についてご紹介します。
薬物療法
強迫性障害の治療として代表的なものが薬物療法であり、その原因のひとつであるセロトニンの働きを調整する役割を持つ「抗うつ剤の投与」があります。
この場合、医師の診断によって処方される薬剤には保険適用外ものもありますので事前に十分確認しておくことも必要となります。
認知行動療法
内服薬の服用以外で高い効果が認められるのが、患者の日常に沿った形でアプローチしていく認知行動療法と呼ばれる治療法です。
医療機関だけでなく、家族や身近な人たちとの連携で患者の意識に変化を持たせることを目標としており、カウンセリングから導き出された症状や状態によって「暴露反応妨害法」「支持的精神療法」「森田療法」「精神分析療法」などが使い分けられています。
手術療法
日本ではまだ運用されていないものの、欧米では重度の強迫性疾患を難治性の精神疾患としてとらえた場合に特化してDBS(脳深部電気刺激)という外科的治療が認められています。
DBSは薬物や認知行動療法では改善が難しい患者さんへの効果が高いとされ、今後日本国内でも新たな強迫性障害の治療法としての承認が期待されています。
強迫性障害のセルフケアは可能?
心の問題は、長い目で向き合いながら専門家による適切な指導を受けることが望ましいものです。
強迫性障害は精神疾患として確立された病気であり、医師の診断に従った治療を継続していけば症状を軽くすることも可能であり、諦めずに少しずつ治療を進めることの効果は十分に期待できます。
一日も早く自信を取り戻し、強迫観念や強迫行為への対処の仕方を学ぶことも重要なステップとして、まずはご自分が病気をきちんと治す気持ちを捨てないようにすることが大切でしょう。
病気を理解し支える存在も大きな役割を担います
いかがでしたでしょうか?
今回は、強迫性障害という病気についての理解を深めるため、その特徴や治療への予備知識をご紹介させていただきました。
生まれ持った性格や性質、単なる意思の弱さや要領の悪さでは収まらないのが、強迫性障害という病気の特徴です。
問題行動を繰り返しながらも、実はつらい感情でどうすることもできないのが患者さんご自身です。そばで見守りながら、励ますことのできる方々も身近な治療のサポーターという意識で病気に向き合うことが求められると言えるでしょう。
強迫症状は、古典的には、几帳面、真面目など性格要因が強いとされていました(このような性格傾向を強迫者とも言いました)。ただし、現代の多様なストレス化社会では、全く強迫者ではないと自認されている方でも、強迫症状が容易に認められています。物事に、囚われてしまう、考え込むとネガティブにサイクルする、気になる事が頭から離れない、など、一般的な強迫観念から発展し、集中がしにくい・判断が効率的にできないなどの実際場面での支障が出た場合、治療の対象となります。ある程度のこだわりは、人さまざまにあり、強迫観念もグレーゾーンが大きいものです。但し、強迫観念・強迫行為のため、社会的・日常的損害が出る場合は、なるべく早く加療を始める事が重要でしょう。特に、会社、学校などの環境要因から、急速に病態化が現れるタイプは、薬物を中心とした加療は、大変、有意義です。また、確認症は、病態と長く付き合っている方が多いものですが、心療内科などの加療歴がない場合、やはり、治療効果が大いに望めます。強迫症状は、後天的なものです。後天的にある病態は、治る方法が必ずあるものです。不潔恐怖に伴う、強迫行為も同じ事が言えます。抱え込まず、より良い一歩を踏み出す機会に当クリニックはなれればと考えています。
監修ドクター:野賀正史 医師 うらわメンタルクリニック 院長
恐怖を感じる症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
強迫性障害でおすすめの精神科・心療内科 関東編
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Pickup | 【資格】 ・医学博士号(甲種) ・日本精神神経学会 専門医 ・日本精神神経学会 専門医指導医 ・日本医師会 認定産業医 ・精神保健指定医 |
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