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骨髄線維症の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27
骨髄線維症

骨髄線維症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

骨髄線維症とは

血液中を流れる血液細胞には白血球、赤血球、血小板の3種類があります。
これらの血球の種となる造血幹細胞は、骨の中にある骨髄と呼ばれるスポンジ状の組織の中で育ち、3種類の血球を日々生み出しています。
骨髄線維症は、その中でも特に血小板や白血球の増殖が盛んになり、その結果骨髄の線維化が進んでしまう病気のことです。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
造血幹細胞の異常により骨髄全体に線維化をきたす病気です。
骨髄の線維化に伴い、骨髄で血液が作り出されなくなり(造血不全)、脾臓などの骨髄以外の臓器で血液が作り出されるようになり(髄外造血)、脾臓が大きく腫れ上がります(脾腫)。本邦での全国調査では、患者数は全国で約700人と推定されています。
発症年齢のピークは60代で、男性に多い病気です。

骨髄線維症の症状

約2割の患者さんは症状が無く、健診などをきっかけに偶然に診断されます。
多くの場合には、次のような症状を伴います。

最も多いのが貧血症状(動悸、息切れ、倦怠感など)です。
また、お腹の張り、腹痛など脾臓の腫れによる症状を伴うこともあります。
白血球不足による免疫力低下によって感染症にかかりやすくなります。
血小板が低い場合には、皮膚にあざができることや、鼻血や歯茎からの出血などの出血症状がおきます。

病気が進行すると発熱、寝汗、体重減少など全身症状を伴うこともあります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

発症当初は無症状です。徐々に脾臓や肝臓が腫大し、腹部膨満感、圧迫感、食思不振、体重減少、微熱、盗汗、皮膚のかゆみなどの全身症状が見られます。

造血不全による貧血症状(倦怠感、疲労感、立ちくらみなど)や出血傾向などが出現します。

骨髄線維症の原因

造血幹細胞レベルで生じた遺伝子変異により、血液細胞が増殖することが原因と考えられています。
骨髄の線維化をきたす理由は,骨髄で増殖している血小板の母細胞である巨核球から、線維芽細胞増殖を促す因子が産生放出されるためと考えられます。

線維化する原因により、原発性と二次性に分かれます。
原発性は、造血幹細胞そのものに異常が起こることで線維化が進む病態です。
二次性は、真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍や骨髄異形成症候群などの別の疾患が原因となる病態です。
いずれの場合も骨髄内が線維で埋め尽くされてしまい、3種類の血球がうまく育つには不適切な環境となります。

骨髄線維症の検査法

骨髄の線維化を証明するためには、骨髄検査(骨髄液の穿刺吸引検査と組織を採取する生検検査)を行います。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
骨髄線維症の約半分の患者さんの血液細胞には、JAK2という遺伝子の異常が見つかります。
骨髄や末梢血を用いてこの遺伝子異常が確認されれば、診断の助けとなります。

骨髄線維症の治療方法

それぞれの患者さんの病状次第で治療方法を検討します。
治療を行う際には、まずはそれぞれの症状を和らげるための対症療法を行います。
貧血が進行した場合には赤血球の輸血も行います。

脾腫による腹部症状を伴う場合には新しい薬剤としてJAK2の阻害剤(分子標的薬、ルキソリチニブ)の投与を検討します。
脾臓の大きさを小さくする、全身の症状を改善するだけでなく、生存期間の延長が期待できます。

患者さんによっては白血球や血小板が多くなることもあり、その場合には抗がん剤の一種であるヒドロキシカルバミドによる治療を行うこともあります。

骨髄線維症の根治療法としては、造血幹細胞移植があります。
造血幹細胞移植の適応は、年齢、病状などを参考に慎重に判断します。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
自覚症状や貧血が軽度のときは、無治療で経過をみることもあります。
貧血や血小板減少が高度なときは成分輸血を、脾腫に伴う腹部症状が重篤なときは、抗腫瘍薬であるハイドロキシウレアや、脾臓の摘出、脾への放射線照射が考慮されます。現時点で唯一、治癒をもたらす可能性のある治療法は、同種造血幹細胞移植です。しかし、移植関連死亡率も高いため、治療適応になるかどうかは、専門医と十分な相談が必要になります。

骨髄線維症の予防方法

貧血症状がある場合、運動量を多くしないで無理のない活動を心がける必要があります。
また、感染症予防のため、手洗いやうがいなども重要です。
血小板が少ない患者さんは、物に身体をぶつけたり、転倒したりしないよう気をつけてください。
また、脾臓が大きくなることで左脇腹のあたりが痛くなることもありますので、そのような症状を感じた時は早めに医療機関に連絡をして指示をもらってください。

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