鉄欠乏性貧血とは?摂るべき食事や薬、鉄剤の投与期間は?
鉄欠乏性貧血とはどんな病気なのでしょうか?今回は小児で見られる場合について、その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
鉄欠乏性貧血とは
鉄欠乏性貧血とは、体の鉄不足によって起こる貧血のことです。鉄は、赤血球の中にあるたんぱく質のヘモグロビンを作るために欠かすことのできない重要な成分です。鉄欠乏性貧血では、鉄の不足でヘモグロビンの合成がうまくいかなくなります。
とくに珍しい病気というわけではありませんが、子どもの場合は気づきにくい症状で、発見が遅れることがあります。
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することで赤血球の中に含まれるヘモグロビンが作れなくなることによって生じます。貧血の中で最も頻度が高い病気です。子どもの場合は、本人も家族も症状に気付きにくい面がありますが、発達に影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要です。
鉄欠乏性貧血の症状
症状で注意するのは、顔の血色です。顔色の悪さというのは、普段から接しているとなかなか見分けがつきませんが、少し黄色味がかったように見えることがあるでしょう。
その他、疲れやすい、息切れ、ドキドキする、集中力がない、記憶力の低下などがあげられます。爪が割れやすくなったり、口の端が荒れたり、舌が荒れる、固形物が飲みにくくなるなど症状はさまざまです。ゆっくり進むと自覚症状がないという場合もあります。
子どもで見られる貧血の症状はたくさんあります。
顔が青白い
・情緒不安定
・食欲不振
・舌が荒れる、味覚異常
・疲れやすい、めまい
体重増加不良であったり、運動や学習に対して消極的であったり、精神的な問題を抱えることもあります。
鉄欠乏性貧血の原因
子どもが鉄欠乏性貧血になる原因として挙げられるのは、以下のとおりです。
- 生まれた時に母親から受け継いだ鉄分の蓄えが少なくなった
- 急激な体の発育
- 離乳食への開始や移行の遅れ
- 風邪が長引くなどの慢性疾患
- なんらかの原因で出血している
- 小児がん
生まれたときの鉄の蓄えが、6ヶ月頃を境になくなっていくため、母乳栄養だけでは、鉄の摂取が不十分となり、そのことが原因となる場合もあります。
3歳以上では、消化器系からの出血や呼吸不全が原因と考えられる場合があるため、注意が必要です。
鉄欠乏状態になるには、①鉄需要増加、②鉄供給の低下、③鉄喪失の3つが考えられます。子供の場合には年齢などにもよりますが、以下のような要素が原因に挙げられます。
- 母体からの鉄移行が不十分である
- 鉄欠乏状態の母親からの母乳栄養を受けている
- 急速な身体発育のため鉄の利用が多い
- 離乳食での鉄摂取が不十分である
- 食物アレルギーを配慮しすぎて、不適切な食物除去を行い鉄不足になった
- 食事の栄養バランスが偏っている
- 月経による鉄喪失がある
- 何らかの病気がある
鉄欠乏性貧血の検査法
採血を行い、検査結果から判断できます。鉄欠乏性貧血を疑う場合は、まず結成鉄とTIBC(総鉄結合能)を検査します。鉄不足を正確に知るには、血液のフェリチン(鉄分の貯蓄値)を調べる方法が確実です。
一時的なものなら、貯蓄さえあれば体の中で簡単に補充できるため問題はありません。検査では、ヘモグロビンの赤い色、赤血球のサイズの数値も確認します。
また、貧血に陥っている原因を検索するために、超音波検査やCT検査、MRI検査などを行います。
鉄欠乏性貧血の治療方法
鉄欠乏性貧血と診断されたら、適切な食事を摂ること、それだけでは追いつきそうにないという場合には、シロップをはじめとする内服薬で鉄剤を補充します。特に、乳幼児期は脳の発育に影響があるため治療が必要です。
鉄を含んだ薬を投与すると、約1ヶ月の服用で改善がみられます。そこで、改善したからといって服用を辞めてしまうと元の状態に戻ってしまうので、最低半年間は飲み続けて鉄分を体に貯えていくことが大切です。
鉄分をたくさん摂れば改善していく貧血なので、鉄分の多い食事を心がけましょう。多く含む食品として、レバー・赤身の肉・しらす干し、しじみ、大豆、ほうれん草、のり、ひじきなどがあげられます。鉄分の吸収を良くしてくれる食品として、ビタミンCを多く含む果物や野菜を一緒に摂ると良いでしょう。
大きく3種類の治療を進めます。
- 原因疾患に対する治療:疾患によって治療が異なります。
- 食事療法:各年齢に応じた規則正しい、バランスの取れた食事で鉄必要量を摂取することが重要です。
- 鉄剤投与:吐き気や下痢のような消化器症状などの副作用がなければ必要量を継続的に服用します。
鉄欠乏性貧血の予防方法
満産期で生まれた子どもが6ヶ月を過ぎても完全母乳をさらに続ける場合には、9ヶ月頃には鉄分が不足し、リスクが高まることも考えられます。発見するためには、1歳までに一度血液の検査をすることが大切です。
子どもの場合は、本人や大人が気づきにくいため見逃しやすく、治療も軽く考える傾向があります。あっかんべーをしたときの眼瞼結膜や、くちびる・爪などに赤みが感じられるのか日頃からチェックしてみましょう。
どちらも白っぽいと感じる場合は貧血の傾向があるため、心配であれば医療機関で血液検査の受診をおすすめします。