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「大腸がん手術の入院期間」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/02/10
「大腸がん手術の入院期間」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

大腸がんは2020年のがんの羅患数データで、男女とも2位と数を増やしており身近な病気となっています。

大腸がんになった際にはどの程度の治療期間を見込めばよいのでしょうか。この記事では大腸がん手術の際の入院期間の目安や、起きる可能性のある合併症のケースを解説します。

入院する際の参考になれば幸いです。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

大腸がんとは

大腸がんとは盲腸から始まり直腸に至るまでの腸管部分に起きるがんで、食生活の欧米化などに伴って近年増加傾向にあります。
大腸がんと一口にいってもその範囲は広く、がんが発生した場所により細分化されています。いずれのがんも初期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると治療が難しいがんです。
また部位によって自覚症状にも違いがあります。そのため定期的な検診を行い早期発見が重要です。ここでは結腸がんと直腸がんを解説します。

結腸がん

大腸の入り口部分にある盲腸から肛門の15~20cm手前のS状にカーブしているS状結腸までを結腸と呼び、そこに発生するがんが結腸がんです。
日本国内では年間約8万人が結腸がんを発症しており、そのほとんどが40歳以降となっています。身体の右側部分にある部分の結腸にがんができると血便や体重減少などの自覚症状が起こります。
これは小腸から送られてきた内容物にまだ水分やミネラルが多いことが原因です。身体の左側部分にある下行結腸まで来ると、内容物が固形化し便となっている影響で鮮血便や便秘などの自覚症状に変わります。

直腸がん

直腸とは肛門の手前から15~20cmまでの部分をいい、便を貯める役割を持っています。
ここに発生するがんを直腸がんと呼び、男性では11人に1人、女性では13人に1人が直腸がんを発症しています。結腸がんと比べると発症数は少ないですが、骨盤内の奥深くに位置しておりほかの臓器とも隣接しているため再発率の高いがんです。
結腸がんと同様に、40歳以降での発症数が高いがんとなっています。直腸がんの自覚症状は血便・下痢・便秘の繰り返し・残便感・便の狭小化・腹部膨満・腹部不快感などです。

大腸がんの手術方法

大腸がんの手術方法は開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット手術の3つに分かれます。
手術の内容によって大きく変わるのは肉体的負担と術後の回復の早さです。以前は再発や転移防止のために患部周辺を広く切除する開腹手術が中心でしたが、医療緒技術の発達により症状に適した手術方法が選ばれるようになりました。
ここではそれぞれの手術方法を解説します。

開腹手術

開腹手術とは腹部の10~20cmを切開し患部を直接確認しながら手術をする方法です。
広範囲の切除が必要な場合に適しており、人工肛門の設置が必要な手術などで採用されます。以前は大腸がんの標準的な手術方法として行われていましたが、医療技術の発展により現在は一部の高度進行がんでのみ採用される手術になりました。
手術時間はほかの手術より短いですが肉体的な負担が大きく、術後の回復にも時間がかかるのがデメリットです。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術は腹部に1~5ヵ所の小さな穴をあけ、そこから鉗子や腹腔鏡と呼ばれるテレビカメラを入れて手術を行う方法です。
部分的ながんの切除に適しており、切開の幅が小さいため身体の負担が少なく術後の回復も早いのが特徴です。一方で広範囲の手術には向いておらず、10cm以上の腫瘍・大きな他臓器への浸潤・腸閉塞・高度な癒着が予想される開腹歴などでは適用できません
また初期の直腸手術の場合は肛門から直接大腸に内視鏡を挿入し手術をする方法もあります。

ロボット手術

ロボット支援手術とは多関節のロボットアームを使用した手術方法です。
直腸のように骨盤内の奥にあり、複数の臓器と隣接している部分は目視しにくいうえに精密な作業が必要とされます。このような場所をモニター越しに確認しつつ、ロボットアームによる手ぶれのない状態で正確に手術を行う方法がロボット手術です。
腹腔鏡手術と同じく肉体的負担も少ないのですが、以前は保険の適用外となるケースが多く一部の手術にのみ使用されていました。しかし現在ではすべての大腸がんに対し保険の適用内となり、積極的に採用されています。

大腸がん手術の入院期間

大腸がんの手術ではどの程度の入院期間が必要でしょうか。また合併症が出た際にはどの程度入院が長引くのでしょう。ここでは入院期間と合併症が起きた際の退院までの期間を解説します。

通常は術前術後の2週間程度

大腸がんの標準的な入院期間は2週間程度です。
手術を行う2~3日前に入院し、手術後10日程で退院となります。ただし開腹手術から腹腔鏡手術に主流が変わっている現在は患者さんの負担も減り、手術後7日程度で退院できるケースも増えています。

合併症が出れば入院が長引くこともある

順調であれば長くても2週間程度で退院できる大腸がんですが、アレルギーや手術時の不具合などで合併症を起こす場合があります。

仮に合併症が起こった場合、入院期間は1ヶ月程長引きます。しかし多くの方はこのような合併症を起こすことなく順調に回復して、予定通りに退院が可能です。

大腸がん手術で起こるか可能性がある合併症

大腸がんの手術の際にアレルギーや開腹手術の影響などが原因で合併症を起こす場合があります。可能性は高くありませんが、仮に合併症が起こると入院が長期にわたるだけでなく命の危険もあります。

縫合不全

大腸の手術のなかでも一部の開腹手術のように患部周辺を丸ごと切除する手術の場合、切除した腸管の口側と肛門側を縫い合わせてつなげるケースがあります。
本来なら時間が経つと普通の傷と同じように癒合しますが、時々うまくいかない場合があります。原因は糖尿病やステロイドの使用で傷の治りが悪い場合などさまざまです。縫合不全が起こると便がお腹のなかに漏れて腹膜炎を併発するので至急再手術が必要です。

腸閉塞

開腹手術を行うと必ずお腹のなかで癒着が起こります。
その際に腸と腸や、腸とお腹の壁が不自然な形で癒着してしまう場合があります。それが原因で便が腸管を通らなくなるのが腸閉塞です。最悪の場合、癒着を解除する再手術が必要な場合もあります。

創感染

手術は無菌的に行いますが、手術の際にもともと人の身体にある常在菌が増殖して影響を与える場合があります。
皮膚部分の細菌が増殖し膿んだ状態になることを創感染といいます。命の危険は少ないですが、治るまでに長い時間が必要です。また傷部分が膨らむ腹壁瘢痕ヘルニアに進行する場合があり、これも命の危険性は少ないですが再手術が必要な場合があります。

大腸がんについてよくある質問

ここまで大腸がんの種類や手術方法、入院期間などを紹介しました。ここでは「大腸がんの発症後」によくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの手術で入院は必須ですか?

ごく初期の直腸がんで内視鏡での手術が可能な場合は入院の必要はありません。しかしほとんどの場合で身体に切開を行う関係上、1~2週間の入院期間が必要です。退院後の経過観察期間は入院の必要はありません。

大腸がんの手術後に後遺症が起きることはありますか?

直腸付近にはリンパ節や暴行の機能に関わる神経があり、状況によっては手術の際に切除する必要があります。この影響で後遺症が起きるケースがあります。

  • 排尿障害
  • 性機能障害
  • 便通異常
  • 神経障害

便通異常に関しては3~6ヶ月で改善されることが多いですが、1年経っても症状が残る場合はそのままの可能性が高いです。

編集部まとめ

医療技術の発達により、大腸がんを発症しても広範囲を切除したために起こる後遺症や人工肛門の設置などの事例は減少傾向にあります。

しかし、それもがんを早期発見できた場合に限り可能です。早期発見のためにも定期健診をかかさず行いましょう。

1年か2年に一度の定期健診で、その先にある長い入院生活の回避が可能です。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸の粘膜の炎症を放置すると、大腸がんのリスクの増加にもつながります。また遺伝性の強い大腸ポリポーシスはがん化する可能性の高いポリープです。家族で羅患された方がいる際は注意しましょう。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 体重減少
  • 鮮血便
  • 下痢・便秘の繰り返し
  • 腹部不快感

大腸は全長で1.5m程あり、発症部位によって症状が変わります。また症状が出た時点である程度の進行が予想されるので、定期的に検診を受けることが何よりも重要です。

この記事の監修医師