皮膚筋炎の症状や原因、治療方法とは?
皮膚筋炎(読み:ひふきんえん、別名:多発性筋炎)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
石田 博 医師 石田内科リウマチ科クリニック 院長
皮膚筋炎とは
多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis, PM/dermatomyositis, DM)は、主に大腿や上腕などの四肢近位筋、さらに体幹や頚部の筋肉を中心とした横紋筋に持続的な炎症を引き起こし、同部位の筋肉痛や筋力低下を来たす疾患である。患者血清からは抗Jo-1抗体を始めとした多彩な自己抗体が検出され、その病態形成には免疫機能の異常が大きく関与することから、膠原病に分類されている。臨床的には筋症状のみ呈する場合をPM、ゴットロン徴候やヘリオトロープ疹、関節伸側の落屑性紅斑など、特徴的な皮膚症状を伴う場合をDMとしている。
引用:順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_10.html
皮膚筋炎の症状
皮膚筋炎のみを発症し、多発性筋炎を伴わないこともときにはありますが、皮膚筋炎のほとんどの患者で多発性筋炎の症状がすべてみられます。加えて、筋力低下や他の症状の発症と同時に、発疹が出現する傾向があります。顔面に黒ずんだ色、ないし紫調の色をした発疹(ヘリオトロープ疹と呼ばれます)が現れることがあり、眼の周囲に赤紫色の腫れを伴うことがあります。発疹はさらに、鱗状で隆起している場合があり、全身のどこにでも現れる可能性がありますが、特に指の関節、肘、膝、手足の一部に多くみられます。爪の周囲が赤くなったり、硬くなったりすることがあります。発疹が消失した後には、茶色がかった色素沈着、瘢痕、しわ、色素が抜けた色の薄い斑点が皮膚に現れることがあります。頭皮の発疹は、乾癬のような見た目で、強いかゆみを伴うことがあります。皮膚の下や筋肉の中にカルシウムでできたこぶができることがあり、特に小児でよくみられます。
引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/08-骨、関節、筋肉の病気/結合組織の自己免疫疾患/多発性筋炎と皮膚筋炎
皮膚筋炎の原因
病気の原因はわかっていませんが、自分の身体に対する抗体が自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつと考えられています。
引用:慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000065.html
皮膚筋炎の検査法
(1)血液検査
炎症で筋肉が損傷すると、血液中の*CK(クレアチニン・キナーゼ)、*アルドラーゼ、*ミオグロビンなどの値が上昇します。筋炎の程度の指標にもなります。
自らの組織である筋肉を免疫力が損傷していることを反映するように、自らの細胞構成成分に対する抗体(自己抗体)が現れます。*抗Jo-1抗体が代表的です。診断に役立ちますが、筋炎の程度とは必ずしも相関しません。
(2)針筋電図検査
筋肉に電極のついた針を刺して、筋力低下の原因を探ります。
(3)核磁気共鳴検査
筋炎の存在と拡がりを把握する検査です。
(4)筋生検
(2)や(3)の検査で、筋炎がありそうな部位の筋組織を少量取って、顕微鏡で検査します。筋炎の様子がよくわかり、他の病気との区別に役立ちます。引用:日本血液製剤協会
http://www.ketsukyo.or.jp/disease/immunity/imm_07.html
・血液検査
採血で抗核抗体を測ります。陽性反応があれば皮膚筋炎を疑います。抗Jo-1抗体の反応があれば、ほぼ皮膚筋炎ではないかと判断します。
その他この症状の場合、血清クレアチンキナーゼ(CK)やクレアチン、ミオグロビン、アルドラーゼ(ALD)などの数値が上昇を示すことが多いです。できれば、抗MDA-5抗体も筋症状のない患者さんには、測定しておいた方が良いでしょう。機械工の手が診られる患者さんには抗ARS抗体を測定すべきでしょう。
・筋電図
筋肉に電気を流して筋炎か確認します。この検査を確定診断にする場合が多いです。
・筋生検
筋肉の一部を切り取って筋炎かどうか顕微鏡検査で確認します。確実に判断できます。
皮膚筋炎の治療方法
①副腎皮質ステロイド薬の服用や点滴静注が中心です。プレドニゾロン換算で体重1kg当たり1mgの量です。多くの場合、改善しますが、副腎皮質ステロイド薬は、筋肉萎縮を含むさまざまな副作用があります。
②副腎皮質ステロイド薬でも改善しない場合や副腎皮質ステロイド薬の副作用で継続が困難な場合、免疫抑制薬を併用します。現在、保険適用になっているのは、アザチオプリンとシクロホスファミドですが、メトトレキサートやタクロリムス、シクロスポリンAも有効です。急速に進む間質性肺炎では、初めから免疫抑制薬を併用します。
③上記で十分な効果が認められない場合は、静注用免疫グロブリン製剤が使用されます。筋力低下に対して、体重1kg当たり400mgを5日間連続で点滴静脈注射することが保険認可されています。投与後に症状の再燃や悪化などが認められた場合には、副腎皮質ステロイド薬増量や免疫抑制薬変更を考慮しつつ、初回投与から4週たてば再投与することも可能です。引用:日本血液製剤協会
http://www.ketsukyo.or.jp/disease/immunity/imm_07.html
皮膚筋炎では、悪性腫瘍の合併症が多いです。また、急速に進行する間質性肺炎もあり、注意が必要です。前述した、筋症状のないPM/DMは要注意で、抗MDA-5抗体の測定が重要です。これが陽性ですと、RP-IPが懸念されます。
ステロイドやステロイドと免疫抑制剤の併用で、ほとんどの方は通常の日常生活を行うことができるようになりますが、筋症状に乏しいタイプの筋炎に合併している間質性肺炎などでは、予後が極端に悪くなります。とりわけ、RP-IPには十分な注意が必要です。とりわけ、抗MDA-5抗体陽性のDM患者さんに併発するRP-IPは、予後不良でシクロフォスファミドパルス療法を繰り返し行っても、致死率が高く慎重な対応が必要です。
皮膚筋炎であるかどうかに関しては、専門医を受診すれば少なくともその時点でそうであるかないかははっきりします。少しでも気がかりであれば、お気軽に相談されることをお勧めします。