無症候性心筋虚血の症状や原因、治療方法とは?
無症候性心筋虚血とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
無症候性心筋虚血とは
無症候性心筋虚血とは、胸痛などの狭心症を示唆する症状が無いにもかかわらず、血液検査や心エコー検査、負荷心電図などの検査で心筋虚血の所見がある状態のことです。
心筋虚血とは心臓の血流が足りていない状態のことで、血流が途絶する心筋梗塞も心筋虚血の中に含まれます。
無症候性心筋虚血は、胸痛のない狭心症のような病気です。
心筋の機能が低下や心筋の壊死によって心臓突然死や心不全の原因となるため注意が必要です。
無症候性心筋虚血の症状
“無症候性”という名前の通り、症状がないことが特徴です。
症状が無いことから偶発的に見つかることがほとんどで、狭心症や心筋梗塞などの既往がある人では20%以上の頻度でみられるといわれています。
運動したときのみ心筋虚血になっていることが多く、無症候性心筋虚血は過去に胸部症状のない日本人の中にも2-3%程度の頻度でみられると考えられています。
無症候性心筋虚血の原因
心臓を栄養する冠動脈が狭くなることで心筋虚血となります。
冠動脈が狭くなる原因としては、動脈硬化や血管炎、血管攣縮(血管を形作る筋肉が収縮して血管が狭くなった状態)がありますが、無症候性心筋虚血は動脈硬化を原因とする場合がほとんどです。
無症候性になる理由についてはすべてが解明されていません。
糖尿病による末梢神経障害により痛みを感じづらくなっていることが一因とされており、糖尿病のある方は特に注意が必要です。
無痛性心筋虚血の病態は全て解明されてはいませんが、痛みがない理由として、
- 心筋虚血の範囲や程度が軽度で痛みとして認識できない場合
- 痛みの閾値が高いために痛みとして認識できない場合
などが考えられます。
糖尿病や高齢、慢性腎不全、高血圧症が存在すると、無痛性心筋虚血を起こしやすいことが知られています。
無症候性心筋虚血の検査法
安静時や負荷時(運動や薬剤による負荷)の心電図や心エコー、核医学検査で評価します。
また、詳しく評価をする場合には造影CT(冠動脈CT)や核医学検査、冠動脈造影検査などを行います。
無症候性心筋虚血の治療方法
治療法としては薬物治療と侵襲的治療である冠動脈形成術(カテーテル治療)、冠動脈バイパス術(開胸手術)があります。
冠動脈の狭窄の程度や虚血の程度により治療法を決定します。
無症候であるため治療による自覚症状の改善は得られないことから、薬物治療で治療を開始して悪化してくる場合に侵襲的な治療を検討することがほとんどです。
(なお、重複して作用している薬剤もあるため、主な作用として分けています。)①冠動脈の狭窄を広げること
カルシウム拮抗薬や硝酸薬②狭窄を悪化させないこと
抗血小板薬や糖尿病・脂質異常症・高血圧などの治療薬③心臓の血液の必要量を減らすこと
ベータ遮断薬やレニン・アンジオテンシン系抑制薬
無症候性心筋虚血の予防方法
無症候性心筋虚血の一番の原因は動脈硬化であり、動脈硬化は生活習慣病が大きな要因です。
そのため、無症候性心筋虚血の予防には禁煙や適度な運動、バランスの取れた食事などの生活習慣の改善が重要です。
糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病がある場合には治療を受けることも重要です。
10年間の冠動脈疾患発症確率を予測するスコアとしては吹田スコアがあります。
吹田スコアでは年齢、性別、喫煙歴、糖尿病、高血圧、高脂血症、腎機能を元に層別化しており、10年間の冠動脈疾患発症確率をよく反映しているとされています。
このスコアを見ても予防には禁煙や生活習慣病の予防・治療が重要であることがわかります。