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顎関節脱臼の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

顎関節脱臼(読み方:がくかんせつだっきゅう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
杉本圭介 歯科医師(杉本歯科クリニック院長)

顎関節脱臼とは

顎関節は外耳道の直前にあり、下顎はそこを支点として運動をしています。この関節は単なる開閉運動のほかに、左右の関節で滑走運動も行なつているのが特徴で、これによって顎を上下左右に、自由に動かすことができます 。しかし、あくびをしたり、歯科治療や気管支鏡検査などの際に大きく口を開けると、正常な可動域を越えて、関節が外れて口が閉じられなくなることがあります。これが顎関節脱臼です。
脱臼がちょっとしたことでおこり、習慣性になってしまうこともあります(習慣性脱臼 しゅうかんせいだっきゅう)。

引用:公益財団法人日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_kansetu/

杉本圭介 歯科医師(杉本歯科クリニック院長)ドクターの解説
顎関節脱臼は、顎関節症と名前が似ていますが別の病気です。顎関節脱臼は、骨がくぼんで下顎の骨の受け皿になっている下顎窩(かがくか)という部分から完全に出てしまった状態です。一方、顎関節症は下顎窩から外れることはありません。ただし、顎関節症から顎関節脱臼に移行するケースもあります。これは顎関節症でずれた関節円板が、関節が元の位置に戻ろうとする動きを邪魔するために起こるものです。顎関節脱臼を引き起こしやすいのは、顎が外れないようストッパーの役割をしている関節結節の高さが低い人です。生まれつき低い人もいれば、長年使ううちに骨の変形でなど後天的に低くなることもあります。また、習慣性脱臼は高齢者に多く、唇は閉じることはできても、口の中では歯が噛み合っていないということもあります。

顎関節脱臼の症状

面長の顔となり、上下の唇が閉じられなくなり、顎関節部に痛みや緊張感がみられます。耳前の顎関節部は陥凹し、その1〜2cm前方が隆起します。

引用:公益財団法人日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_kansetu/

杉本圭介 歯科医師(杉本歯科クリニック院長)ドクターの解説
顎関節脱臼は痛みを伴う場合が多いでしょう。一方、習慣性脱臼の場合は顎が外れたまま何ヶ月も経過しており、あまり痛みを感じなくなっているケースも珍しくありません。食事や会話に支障を感じながらも、痛くないため治療を受けていないのです。入れ歯を使っている場合、顎が外れると入れ歯がかみ合わなくなり、ずれた状態で関節が固まってしまうこともあります。顎関節脱臼を起こした後、中には自分で元に戻すことができる人もいます。脱臼した場合、関節結節の隆起を越えて前にずれてしまっている状態なので、元の位置に戻すには、まずは顎を下げて、隆起を越えるように動かす必要があります。単純に後方に押すと痛いだけです。自力で戻せない場合は歯科を受診しましょう。

顎関節脱臼の原因

典型的な顎関節脱臼の原因は以下のものです。

・口を大きく開きすぎること(例えば、あくび、大きなサンドイッチにかぶりつく、嘔吐、歯科処置の際など)

・けが

あごの脱臼は、以前にも脱臼を経験した人や、あごの関節がゆるんでいる人(顎関節症[ 顎関節症]の結果ゆるむことがある)では起こる可能性が高まります。

引用:MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/18-口と歯の病気/急を要する歯科的問題/顎関節脱臼

顎関節脱臼の検査法

エックス線検査(パノラマX線撮影またはパノラマ 4 分割X線撮影)を行う。
画像診断では、下顎頭が下顎窩から逸脱し、関節隆起より前方に位置していることを確認する。また、同時に骨折等の有無も評価する。関節突起骨折に伴って下顎頭が脱臼することがある。なお、必要に応じて CT 等による検査を行う。

引用:「顎関節脱臼のQ&A」(医療関係者へ)(2018.1.10 版)-一般財団法人口腔保健協会
http://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/faq_dislocation_medical.pdf

杉本圭介 歯科医師(杉本歯科クリニック院長)ドクターの解説
顎関節脱臼の検査は、エックス線検査を実施します。骨の逸脱が一目瞭然で診断できます。

顎関節脱臼の治療方法

治療は、脱臼整復法と再脱臼防止法に大別されます。
1.脱臼整復法:歯科医院では、整復(はずれた下アゴを元に戻す処置)を行います。しかし、整復できなかった場合は高次医療機関へ依頼します。高次医療機関では、歯科医院では行うことが難しい局所麻酔薬の関節内注射・静脈内鎮静法・全身麻酔等を用いての治療を行い、それでも整復できない場合には手術が選択されます。

2.再脱臼防止法:脱臼した下アゴは整復した後も再脱臼しやすいため、再発を防止する処置が必要になります。具体的な方法は、弾性包帯による顎包帯法、チンキャップ、顎関節脱臼防止帽等があります(図 7)
しかし、それらの効果がない場合は高次医療機関に依頼します。大学病院等では、再脱臼防止のための手術が行われることがあります。

引用:「顎関節脱臼のQ&A」(医療関係者へ)(2018.1.10 版)-一般財団法人口腔保健協会
http://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/faq_dislocation_medical.pdf

杉本圭介 歯科医師(杉本歯科クリニック院長)ドクターの解説
顎関節脱臼の治療方針はシンプルで、ずれた顎関節を元に戻すことに尽きます。ただし、再発してまた顎が外れることはあるので、何度も繰り返している場合や習慣性脱臼になっている場合は手術という選択肢があります。手術は関節結節の低い部分に隆起を作り出すもので、骨を切って隆起ができるようにします。他には、口が大きく開かないように口の中の粘膜を切開して弾力性を失わせ、伸びないようにする方法(口腔粘膜の瘢痕拘縮法)や、関節円板を縫合して固定する方法など、患者さんの患部の状態にあわせて様々な方法をとることが可能です。治療中や治療後の生活では、なるべく口を大きく開かないように心かげてください。

この記事の監修ドクター

この記事の監修歯科医師