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網膜剥離の原因や症状、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

網膜剥離(読み方:もうまくはくり)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
木村隆 医師(きむら眼科 院長)

網膜剥離とは

網膜剥離とは、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、視力が低下する病気です。
網膜とは、目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、脳への視神経に伝達する組織で、カメラでいうとフィルムのはたらきをしています。
網膜が剥がれるときには痛みを伴わないため気づきにくいのですが、前兆として飛蚊症(モノを見ているときに黒い虫のようなものが動いて見える状態)があらわれることがあります。また、網膜の中心部である黄斑部分まで剥がれた場合、急激に視力が低下し、失明に至る恐れもあります。

木村隆 医師 きむら眼科 院長監修ドクターのコメント
網膜剥離には大きく分けて2つのタイプがありますが、大半を占めるのは、網膜に孔や裂け目が生じることなどで起きる「裂孔原性網膜剥離」です。網膜周辺部に変性がある場合などでは、その部分が硝子体と癒着が強くなっていることがあり、加齢に伴って起こる後部硝子体剥離がきっかけとなり、網膜に裂孔を生じ網膜剥離を引き起こすケースがあります。この後部硝子体剥離は50~60歳代ぐらい、近視が強い場合はもっと早い年代で起こります。網膜剥離を予防するためには、眼科で定期検査を受けて目に弱っている箇所がないかチェックしておき、早期治療につなげることが重要です。弱い箇所がある患者さんの中には、予防的な治療をしている方もいらっしゃいます。

網膜剥離の症状

目の前に糸くずや虫のようなものが見える、いわゆる「飛蚊症(ひぶんしょう)」は、生理的に生じるもので加齢によって生じます。しかし、急に大きな影のようなものが見えるようになった場合には、網膜剥離が疑われ、注意が必要です。 また、硝子体が網膜前面から外れるときに、キラキラと光が見えるように感じる(光視症:こうししょう)のも、網膜剥離の前段階として特徴的な症状です。進行してくると、カーテンや幕がかかっているように見えるなど、視野の欠けを自覚します。
網膜剥離が網膜の中心で最も重要な黄斑部(おうはんぶ)にまで及ぶと、視力低下が起こり、放置しておくと失明に至る場合もあります。

木村隆 医師 きむら眼科 院長ドクターの解説
飛蚊症とは、視界に虫のようなものが動いているように見える症状で、視線を動かしてもついてくるように動く場合もあります。動いて見えるものの大きさ、形などはさまざまで、色も人によって見え方が異なります。飛蚊症が急激に悪化したり徐々に悪化する場合は、すぐに眼科を受診してください。また、網膜剥離を疑う症状の一つに光視症という症状もあります。これは網膜に接している硝子体が離れる際や網膜に付いている硝子体が引っ張る際に起こり、暗い場所にいる時にチカチカと光を感じやすいようです。

網膜剥離の原因

網膜剥離の主な原因は、網膜裂孔(網膜の亀裂)です。
一般的に、網膜剥離といえばこの網膜裂孔による「裂孔原性網膜剥離」を指します。網膜裂孔が起こるのは硝子体と網膜の癒着が強い場所です。
原因が加齢性のものと、その他の影響によるものがあります。
もともと硝子体は無色透明のゲル状の物質で、眼球内部を満たしているのですが、加齢とともにサラサラの液体に変化して少しずつ容量が減ってしまいます。そこに網膜が引き込まれて隙間ができ、裂孔原性の網膜剥離が起きてしまいます。

一方で、交通事故やスポーツ中の衝突などで受けた頭部・目への物理的衝撃、近視度の強さで変化する網膜の円孔(円形の穴)も発症原因になります。
近視の度合いが強い人は、正視(いわゆる目が良い状態で、屈折異常がない目)の人よりも眼球に奥行きがあります。これによって、網膜の面積が広くなり、萎縮して薄くなった部分に円孔ができて網膜裂孔が生じるのですが、このような裂孔原性網膜剥離は、20代の若い人に見られることがあります。

網膜剥離の検査法

網膜剥離は網膜が剥がれているので、まず、網膜に剥がれている部分があるかどうかを徹底的に調べます。通常、瞳(黒目)の大きさは小さく、虹彩の陰に隠れている部分の網膜は見えないため、点眼薬を使って瞳を大きくして(散瞳して)眼底検査をします。散瞳薬の効果は3-4時間続きますので、検査が終わっても薬の効き目がなくなるまでの間は、まぶしかったりピントがぼやけたりします。そのため、眼底検査を行った後の数時間は、車の運転を控えた方が良いでしょう。
網膜剥離や網膜裂孔があれば、目の上に検査用コンタクトレンズを乗せてさらに詳しく調べます。
硝子体出血などで網膜の状態がよく見えないときは、眼科用超音波検査を行って網膜剥離の有無を調べることもあります。また、網膜細胞がどの程度傷んでいるかを知るために、目の上にコンタクトレンズ電極を乗せ、強い光を目に当てて網膜から出る弱い電流を測定する場合(ERG検査)もあります。

木村隆 医師 きむら眼科 院長監修ドクターのコメント
飛蚊症や光視症は、網膜剥離が隠れている可能性があるため、まずは眼底検査を実施します。前述の通り、眼底検査の後は散瞳の影響で視界がぼやけてしまうため運転は厳禁で、もし車やバイクを自分で運転して病院に向かった場合は、安全のために検査が中止される場合もありますのでご注意ください。眼底検査にはコンタクトレンズをのせて検査することもありますが、痛み止めの目薬を使用するので、患者さんが痛みを感じる心配はありません。

網膜剥離の治療方法

網膜剥離の治療方法は、状態によって異なります。

(1)網膜裂孔だけで網膜が剥がれていないとき
網膜裂孔が生じても、網膜がはがれていない場合は、網膜裂孔のまわりを凝固(糊づけのようなもの)して、網膜剥離への進行を予防できることがあります。
網膜凝固には、網膜光凝固と網膜冷凍凝固があり、凝固によって裂孔周囲の神経網膜と網膜色素上皮に瘢痕を形成し、神経網膜の下に網膜剥離を誘発する水分が流入するのを防ぎます。ただし、裂孔の大きさや硝子体がひっぱる程度によっては予防効果が弱いこともあり、治療の適応や経過観察の方法が異なります。

(2)網膜が剥がれていたとき
網膜裂孔から網膜剥離に進行していたら、手術が必要となります。網膜剥離のタイプ(裂孔の大きさや位置、網膜剥離の進行程度、硝子体出血の有無、他の眼疾患の合併など)によって、手術の方法が異なります。手術は、強膜バックル術(強膜内陥術)と硝子体手術に大別できます。

木村隆 医師 きむら眼科 院長監修ドクターのコメント
網膜が剥がれた範囲が広範囲でなければ、光凝固法が治療の第一選択となります。硝子体手術とは、硝子体が網膜を引っ張っている箇所を手術で取り除き、その部分に空気・ガス・シリコンオイルなどを注入して、網膜のはがれを眼球に固定する治療法です。また、強膜バックリング法は、剥がれた網膜を眼球に固定するために、眼球を覆う強膜にシリコンスポンジを縫いつけて眼球を圧迫します。網膜剥離の再発を予防するためには、なるべく目に衝撃を与えない生活を心がけてください。スポーツなどの際に気をつけるのはもちろんのこと、日常生活で目を強くこすってしまうことも危険です。また、手術後は眼科で定期的に検査を受けて、経過が順調かどうかチェックしましょう。

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