性同一性障害の症状・原因・治療方法についてご案内
性同一性障害(せいどういつせいしょうがい)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
針間 克己 医師 はりまメンタルクリニック 院長
性同一性障害とは
性同一性障害は、性別の自己認知(ジェンダーアイデンティティ=心の性)と身体の性が一致いない状態です。
生まれが男性であって、所属する性別とは異なる性(例えば女性)であると認識している状態をMTF(Male to Female)、逆に生まれが女性であって、所属する性別とは異なる性(例えば男性)であると認識している状態をFTM(Female to Male)と呼びます。
心の性別が元々の所属する性別と異なる状態を総称して、社会的にはトランスジェンダーと呼びます。トランスジェンダーには、必ずしも治療が必要ではない場合があります。
性同一性障害の症状
女子の場合は、女の子らしい服装を嫌うことや、大きくなったら男の子になりたい、などということがあります。
男子の場合は、隠れたところで女子の服装を着てみたり、母親の化粧品で化粧をしてみたり、思春期になるとヒゲやすね毛などを極端に嫌がる、などということがあります。
性同一性障害の原因
胎生期や出産前後のホルモン環境の異常や、家庭環境、心理的影響等がいわれていますが、いまだ明確な原因はわかっていません。
性同一性障害の検査法
性別の違和感がある人がすべて性同一性障害というわけではありません。
統合失調症や発達障害など、その他の精神・神経疾患による類似症状の可能性もあります。この場合、元々の疾患を治療することで違和感が軽減する場合もあるので、時間をかけて判断します。
性同一性障害の診断には、この病気の診断・治療に十分な理解と経験を持つ精神科医2名による確定診断が必要です。
この病気に関しては、血液検査やCT等のような画像の検査でわかるようなものではありません。逆に、体のほうには、はっきりとした異常がないにもかかわらず、そのように(生物学的性別とジェンダー・アイデンティティが不一致のように)思うといったことがひとつの診断基準となります。実際に診断する際は、精神科医がご本人から話を丁寧かつ詳しくお聞きすることが大切です。子供の場合は、両親が薦めて受診することもありますが、思春期ぐらいの方からは、自ら性別を変えたい(自身と反対の望みの性別で生活したい、そう言ったように体を変えたい)と受診される方がほとんどです。
カウンセリングでは、詳しく今までのことを聞いていかなければいけないので、数か月かけて(何回かに分けて)行う必要があります。そういった気持ちが、一時的なものではなくずっと続いているということを確認する必要があります。
性同一性障害の治療方法
性同一性障害に対する治療は、精神科領域の治療 (精神的サポート)と身体的治療に大別されます。精神的サポートは生涯にわたって必要なため、精神科で継続的な治療が進められます。
身体的性別を望む性に近づける目的で、ホルモン療法や乳房摘除術、性別適合手術などの身体的治療が施行されることがあります。
身体的治療を行なうか行なわないか、また、どのような身体的治療を行なうかは、性同一性障害当事者の自己責任のもとに自己決定することができます。しかし、不可逆的な身体的治療の施行には、GIDクリニック会議における慎重な討論を経て、GID委員会による審査・承認が必要となります。なお、身体的治療に係わる医療費はすべて自費となります。
ただし、症状があまりにつらくて、眠れないとか、不安だとか、気分が憂鬱等といった場合には、その症状に対してお薬を出すことはあります。こういった症状をお持ちの方でも、病院を受診されていない方もおられます。例えば、親や家族の方が性別を変えることを反対されているといった場合などです。ただ、そのまま放置されると、本人の悩みや苦しみがさらに続き、自傷行為(リストカット等)や自殺未遂、もしくは実際に自殺される場合もあるので、実際に体の治療をするかはともかく、周りに相談できる人がいれば、相談されたほうがいいと思います。最終的には医療機関の受診が望ましいです。