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妊娠の成立と不妊治療

 更新日:2023/03/27

妊娠(読み方:にんしん)とは医学的にはどんな状態なのでしょうか?妊娠が成立する過程や検査、不妊治療などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
内出一郎 医師(内出産婦人科 院長)

妊娠とは

排卵した卵子は卵管にとりこまれ,卵管膨大部で受精する. 受精卵は卵割を繰返しながら卵管を移動し5日目頃子宮腔内に至る.受精後 6~7日目に,胞胚となった受精卵が着床を開始する. 我が国では,妊娠とは「受精卵の着床に始まり,胎芽又は胎児および付属物の排出をもって終了するまでの状態」と定義されているが,最終月経初日から妊娠を数え始めるため,月経周期14日目に排卵・受精したとすると着床を開始した時点で妊娠満2週5~6日,ということになる. 

引用:日本産科婦人科学会「妊娠の成立,およびその異常」(PDF)
http://www.jsog.or.jp/PDF/50/5005-111.pdf

内出一郎 医師(内出産婦人科 院長)監修ドクターのコメント
不妊治療を受けている患者さんの中には、不妊治療をしさえすれば必ず妊娠すると思い込んでいる人がいますが、そうではありません。こればかりは授かりものなので、正しく不妊治療をしても妊娠しないことももちろんあります。妊娠したいと願うことも、年齢を考えて早く妊娠しなくてはと焦る気持ちも分かりますが、力んだり焦ることでかえってうまくいかない場合もあります。不妊治療は少し力を抜いて取り組んだほうが、むしろ妊娠もしやすくなります。同様に、親や周囲の人間からの期待の言葉は無用なプレッシャーになります。妊娠をするためにはむしろ力を抜かなくてはいけないのに、かえって力が入ってしまうようでは本末転倒です。ご自身もですが、周囲の方も焦らず長い目で見守ってください。

妊娠のプロセス

排卵

卵子は、卵巣の卵胞という袋の中で排卵される日を待っています。脳の下垂体という器官から分泌されるホルモンの刺激によりいくつかの卵胞が成熟しはじまめますが、その中から選ばれたただ1つの卵胞だけが成熟し、この成熟卵胞から卵子が排出されます。これが排卵です。
排卵は、月経周期が28日の人の場合おおよそ14日目におこります。排卵された卵子の寿命は約24時間といわれています。卵子は卵管の先にある卵管采に取り込まれ、少し奥に入った卵管膨大部という場所で精子を待ちます。

受精

受精とは、セックスによって女性の体内に精子が入り、この精子と卵子が融合して一つの細胞(受精卵)になるまでの過程をいいます。
排卵が近づくと、子宮の入り口(子宮口、頸管)には精子が通り抜けやすいように頸管粘液が満たされるようになります。腟内に射精された精子は、この頸管から子宮内に泳ぎ上がり、卵管を通って卵管膨大部に達します。精子の女性体内での寿命は72時間といわれますので、この寿命期間の間に運良く卵管膨大部にいる卵子と出会って初めて受精が成立します。

着床

受精卵は2個、4個、8個と細胞分裂をしながら、卵管の中を子宮に向かって移動してゆきます(図3)。
この時期までに子宮では、受精卵が着床しやすいようにベッドメーキングをしています。受精後5日ほどすると、受精卵は子宮腔(子宮の中)に到達し、7日目には子宮内膜にもぐり込んで、根を張ってゆきます。これが着床です。
通常着床を妊娠の開始と定義しています。

引用:一般社団法人日本生殖医学会
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa01.html

不妊の検査法

①内診・経腟超音波検査
婦人科診察室の診察台(内診台)の上でおこないます。子宮・卵巣を産婦人科的に診察しておして痛いところがあるかどうかを見るとともに、細い(直径約1.5-2cm)超音波プローブを腟から挿入して子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。

②子宮卵管造影検査
X線造影室で行います。子宮卵管造影検査は、X線による透視をしながら子宮口から造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを見る検査です。少し痛みのある検査ですが、この検査の後自然に妊娠することもすくなくないこともあり、大変大事な検査です。

③血液検査
外来の採血室で血液を採取して、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関係する検査を行います。ホルモン検査の中には、女性ホルモン・男性ホルモンや卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモンが含まれますが、その他にも母乳を分泌するプロラクチンや甲状腺ホルモンの検査も行います。ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体期などに分けて検査します。

引用:一般社団法人日本生殖医学会
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html

内出一郎 医師(内出産婦人科 院長)監修ドクターのコメント

子宮卵管造影検査:子宮の出口から造影剤を注入、レントゲン撮影をしながら子宮の内腔形態の異常や卵管の通過性異常を確認する検査。通水検査:子宮の出口から生理食塩水を流し、抵抗を確認することで卵管通過性の有無を判断する検査。

子宮鏡検査:直接子宮の内腔に内視鏡を挿入、視覚的な異常の有無を確認する検査。同時に通水検査も可能で、卵管口から灌流液が出て行く様子を確認することで、卵管通過性の確認をします。

腹腔鏡検査:お腹の中に内視鏡を挿入、実際の子宮、卵管、卵巣の状態を確認する方法。子宮出口から色素水を注入し、卵管采から流出を確認、卵管通過性を確認することも可能です。子宮や卵巣、卵管に腫瘍性病変があれば、摘除することで妊娠する能力を改善させることもできます。また、癒着などがあれば、それも剥がすことで正常解剖に戻すことができます。最も得られる情報が多い検査と言えます。

当院では子宮鏡検査と通水検査が可能です。腹腔鏡については、外部の病院に行くことになりますが、私自身が執刀可能です。

不妊治療について

内出一郎 医師(内出産婦人科 院長)監修ドクターのコメント

妊娠できる年齢は、43歳を過ぎると自然妊娠値が0になるという有名なデータがあります。不妊治療がムダとは言いませんが、費用対効果があまりよろしくありません。よって「治療して妊娠できればもうけもの」くらいな感覚ですから、自然妊娠トライの方が分が良いということになります。

不妊治療を受けている患者さんの中で、特に女性の方は排卵日に非常にこだわる人がいますが、過剰にその日にこだわると、パートナーへのプレッシャーになってうまくいかない場合あります。妊娠は二人の協力があってできることなので、相手を追い詰めるような態度でいるとセックス自体を拒否されてしまうようになるなど、逆効果になります。排卵日もその時々のコンディションなどで前後する場合もありますし、精子も子宮や卵管の中で数日生きていますので、排卵日その日でないと絶対ダメだというようにこだわり過ぎなくても妊娠はできます。まずはリラックスして、二人でセックスライフを楽しむことを優先に考えてください。その方が妊娠の確率は間違いなく高まります。気楽にいきましょう!

近年、妊娠を願う患者さんを診察していて感じることですが、情報収集に熱心なあまり、頭でっかちになり過ぎている人がとても多いです。しかも仕入れた情報もきちんと整理できていないため、何を聞いても不安になっていて、医者の話を素直に聞けなくなっています。何か言われると必ず反発する方もいらっしゃいますが、それでは信頼関係も築けませんし、何より患者さん本人の不安がなくなりません。すべて医師の意見に従え、ということではありませんが、まずは担当医の言うことを素直に聞きましょう。都会だと病院も多いこともあり、コロコロ病院を変える人がいますが、それも良くありません。最初にご自分が「この病院いいな」「この病院は落ち着く」という気持ちを感じて決めた病院なら、じっくり腰を落ち着けて診察を受けることをおすすめします。逆に言えば、フィーリングの合わないクリニックや病院に長く通院するのはストレスの原因になりますから、やめたほうが良いということになります。

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