FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 病気の事典
  3. 吃音の症状や原因、治療法とは?

吃音の症状や原因、治療法とは?

 更新日:2023/03/27

吃音症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

村上 友太 医師

監修医師
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。

吃音(きつおん)とは

吃音とは話し言葉がなめらかに出てこない発話障害の一つです。幼児期(2-5歳)の複雑な言葉を話し始める時期に起きやすい発達性吃音と、神経や脳の病気やストレスにより青年期以降(10代後半)に吃音が現れる獲得性吃音の二種類があります。

吃音症はどんな症状が現れるの?

吃音は、言葉がなめらかに出てこないものですが、具体的には、繰り返し連発する(「ぼぼぼぼく」など)、音を引き伸ばす(「ぼーーーく」など)、言葉が出ず間があいてしまう(「・・・・・ぼく」など)、等が症状の特徴です。

村上 友太 医師村上先生の解説

言葉がうまく話せないことに自分がびっくりしたり、流暢に話せないことに不満を感じたりして心理的ストレスになることがあります。
また吃音が出た時に、周囲の人に笑われたり注意されたりすると、その時の不快感が結びついて、話すこと自身に不安や恥ずかしさを感じるようになることがあります。
通常痛みを伴うことはありません。

吃音の原因は?

幼児期に吃音の原因は特定されていませんが、7割が遺伝子要因と言われています。言葉を話し始める2-5歳に発症するのがほとんどで、幼児期の発症率は5-8%程度と言われていますが、7-8割くらいが自然に治ると言われています。男性にやや多く見られます。

村上 友太 医師村上先生の解説

脳の神経経路や遺伝子が吃音と関係するのではという研究結果もありますが、詳しいことは分かっていません。口や喉などに病気があるわけではありません。

吃音の診断方法・検査方法は?

村上 友太 医師村上先生の解説

吃音と診断されるまでに受ける検査は、問診のほか、100文節ほどの文章を読み吃音がどの程度の頻度で現れるか、また同じ文章を何回か読んで同じ場所で吃音が現れるか、吃音が軽減されるかを調べる検査などがあります。そのほかには言語症状に関する恐れや恥じらいなどの心理的な側面を検査する方法として、絵を描いたり、絵の登場人物の台詞を想像して回答するなどの心理検査を行うこともあります。

音や音節を繰り返す、語の一部を引き延ばす、発声が停止するなどの吃音症状が正常より多く(一般に100文節の中で合計3以上)発現する場合、また流暢でない話し方で本人に不利益が生じている場合に吃音と診断されます。発語時に必要以上の体の動き(前屈、手足の振り下ろし、異常呼吸など)がある、他の言葉への置き換えがあるなどの症状も判断材料になることがあります。
重症度の診断は、100文節の中で吃音の症状が現れるのが3文節未満は正常範囲、3-5未満はごく軽度、5-12未満で軽度、12-37未満で中等度、37-71未満で重度、71文節以上だと非常に重度と分類されます。また、吃音が持続する時間や、緊張すると吃音が多くなるかなども重症度の診断材料です。
100文節の文章を読み、またそれを何回か繰り返し読み、繰り返し吃音の症状が現れるか検査する場合は、読む時間とそれに対する医師とのお話の時間がかかります。繰り返し文章を読む検査は、5回程度読むことを求められることがあります。

吃音の治療方法

吃音の治療方法は確立していませんが、流暢な発話を促進するトレーニングなどを行い症状緩和を促します。幼児期の吃音の治療法としては、遊びの場面などを作り、負担の少ない会話のスタイルやモデルを医師と相談の上設定し、ゆったりした、ゆっくりめの声かけで、割込まず、質問を減らして子供からの発話を大事にする時間を1日15分作る、などの方法があります。
また、吃音は本人の心理的な側面も大きいので、本人の心理面の支援や家庭での関わり方、本人を取り巻く環境へ吃音が理解されるように働きかけなどを行うこともあります。
治療期間は、個人差がありますが一年から数年程度と言われています。
6-8割が発症して3年程度で自然に治ると言われています。しかし治療しても完治しない人もおり、吃音の有病率(全人口に対し吃音の症状がある人の割合)は国や言語に関係なく約1%と言われています。

村上 友太 医師村上先生の解説

話し方を治す、矯正するという気持ちでなく、こうするともう少し楽に話せるかも、という方法を探すよう心がけるといいでしょう。「ゆっくり言って」「落ち着いて」など話し方のアドバイスは、かえって混乱することもあり逆効果ですので避けましょう。本人の話したい気持ちを大切にし、本人が話そうとしている時は遮らず話を最後まで聞き、話すことがストレスにならないように気をつけましょう。

吃音症・どもりの発症の原因はストレス?過度の緊張?

村上 友太 医師村上先生の解説

吃音の原因ははっきりと解明されていませんが、ストレスやプレッシャーなどは吃音と関係があるのではと考えられています。また、青年期以降の吃音では、脳や神経の病気、怪我、ストレスなどが原因となることもあります。

吃音は、家族に吃音のある人がいる、双子の人や、言語発達が良好な人は発症しやすいとされています。吃音になりやすい性格的な特徴は明らかになっていませんが、繊細で感受性の強い子供や完璧主義の人は、ちょっとした言葉のつっかえに反応しやすく、結果的に吃音の症状が長引きやすくなっている可能性があります。
ストレスや緊張により、吃音の症状が悪化すると考えられています。また、吃音があるから話すのがストレスになる、緊張するという側面があります。

電話などで吃音の症状が変わる場合

吃音の症状の有無が場面や環境に影響されることは吃音の患者さんにはよく見られます。
電話の時に吃音の症状が出るのは、言葉への注目が集まっていること、非言語コミュニケーションが使えないこと、他の人からの視覚的フィードバックがないことなどが電話場面で生じる困難と関連していると考えられています。
電話の時に吃音の症状が出ない人は、対面でないことで緊張が和らいでいる、電話の時に吃音が出なかった経験が自信になっているなどの要因が考えられます。
吃音は不安や緊張により症状が悪化することが知られています。電話でうまく話せないことがあると、電話とその時の不安が結びつき、さらに電話で話すのが難しく感じる悪循環に陥ることが考えられます。

村上 友太 医師村上先生の解説

電話で吃音が出る人は、流暢に話せる発声を身につける言語療法的なアプローチ、電話そのものの恐怖を段階的にリラックスした状態で向き合えるようになるように訓練する心理療法的アプローチなどの治療法が有効な場合があります。
電話で吃音がでず、他の場面で吃音が出る人は、吃音が出る場面に同様のアプローチをしてみるといいでしょう。

吃音の自己チェック方法

吃音を簡易的にチェックする項目としては、言葉の繰り返しがある、言葉の引き伸ばしがある、言葉のつまりがある、体を動かしながら話す、話をしている時に緊張がある、顔をしかめながら話す、うまく話せないことを恥ずかしく思っているように見える、発音が苦手な音があるなどの症状があります。これらに当てはまる場合は吃音の可能性があります。
日常生活に支障がある、吃音があることにより不満やストレスを抱えている場合は病院を受診しましょう。

村上 友太 医師村上先生の解説

これは、あくまで自己チェックですので、気になることがあれば医療機関を受診しましょう。

大人の吃音と子供・幼児の吃音

子供の吃音は、発語が盛んになる2-5歳に発症することがほとんどで、男の子に多くみられます。
子供の吃音は7-8割は自然に治癒するといわれています。幼児期の吃音の治療法としては、負担の少ない会話のスタイルやモデルを医師と相談の上設定し、それを家庭などで実践する時間を作る、などの方法があります。また、家庭で吃音の子供の発言に声をかけていくリッカムプログラムという方法などが用いられることがあります。また、本人の心理面の支援や家庭での関わり方、本人を取り巻く環境への働きかけなどを行うこともあります。
大人の吃音でストレスが原因の場合は、治療して効果がある場合もない場合もあります。大人の吃音の治療は、吃音の捉え方や関わり方を医師と相談して考えたり、実際に社会生活で言えなくて困っている言葉や苦手な場面でも話しやすくする訓練をすることが多いです。

村上 友太 医師村上先生の解説

子供の吃音の2-3割は症状が固定化してしまいます。大人の吃音で脳や神経の病気が原因の場合は治療の適応効果はないとされています。吃音の有病率は人口の約1%と言われており、100人に1人程度は吃音とともに生活しています。

吃音と発達障害とのちがいは?

発達障害とは、生まれつき見られる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。養育者が育児の悩みを抱えたり、子供が生きづらさを感じたりすることもあります。発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、学習症、チック症などがありますが、吃音も発達障害の1つに含まれます。いくつかの発達障害をあわせ持つこともあります。
自閉スペクトラム症は、目を合わさない、指さしをしない、後追いが見られない、言葉の遅れ、こだわりが強いと言った様子が見られます。社会的コミュニケーションの障害(相手との距離感がわからない、話がうまく噛み合わない、興味や感情の共有が難しいなど)、反復的な行動パターンがある(何かに没頭すると周りが見えなくなる、物事の手順に強いこだわりがある、音や光などに対して敏感など)等の条件が満たされた時に診断されます。
自閉スペクトラム症の治療法は、幼児期に個別や小さい集団での療育を受けることにより、対人スキルの発達を促すことなどが行われます。
吃音がある人の中には、話している時に瞬きをしたり、顔をしかめるなどの動きを伴う人がいます。この動きは発達障害の一つであるチック症の動きと似ています。チックは本人の意思と関係なく体の一部が突然痙攣したように素早く動く状態が繰り返すものです。しかし吃音の体の動きは言語症状の時にのみ生じるのに対し、チックの体の動きは言語症状に関係なく生じることが見分けるポイントです。

村上 友太 医師村上先生の解説

発達障害は様々な状態を含んだ総称です。心配な症状がある場合は小児科や精神科を受診する方がいいでしょう。

まとめ

吃音症は子どもの5%程度が発症する比較的よく見られる言語障害にも関わらず、症状や適切な関わり方があまり知られていない一面があります。吃音は言葉が流暢に話せないこと自身よりも、そのことにより本人がストレスや緊張、恐怖を感じることが大きな問題となっていることが多いです。適切な対処を心がけましょう。

関連する病気