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根管治療の流れは?手順・期間・注意点などを解説

 公開日:2024/12/20

食べたり飲んだりすることに、歯の健康は欠かせません。

歯の痛みや不快感、大切な歯を失うかもしれないという恐怖を取り除くことは、日々の生活においてとても大切です。

歯に関する治療のなかでも、根管治療は抜歯を避けるための最終手段です。

この記事では、根管治療のメリットや注意点も含め、治療の流れを解説します。むし歯や歯周病が原因で根管治療を考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

根管治療の流れについて

根管治療流れ

根管治療とは、歯の中にある歯髄(しずい)と呼ばれる部分の治療を指します。

歯髄は、「歯の神経」のことです。歯髄には歯の神経や血液が通っており、歯の健康を支える役割があります。

痛みを感じることで大きな問題を未然に防いだり、血管があることで感染症からまもったりしているのです。

むし歯や外傷により歯髄が炎症したり壊死したりした場合、歯髄を取り除くことがあります。そのままにしておくと、感染のリスクが高くなるからです。

治療が遅れると痛みなどを誘発する可能性があり、最悪抜歯になるケースもあります。歯の中にある根管は非常に細く治療は難しくなります。

細いだけでなく、根管の湾曲度・根管数・病巣の大きさにより難易度は変化し、治療には歯科医師の技術が必要です。

根管治療が必要になる可能性がある病気は、下記のとおりです。

  • むし歯
  • 歯髄炎
  • 歯髄壊死
  • 根尖性歯周炎

治療は根管の拡大・清掃・洗浄を行い、根管内を封鎖します。治療後の感染を防ぐために、できる限りの無菌状態で行い、再感染を防止していくことが必要です。

1回の根管治療では治療しきれない場合は、治療回数を増やして対応します。

根管治療の手順

根管治療手順
実際に行う根管治療の手順をみていきます。手順は、下記の5つです。機械を使用しながら行いますが、歯の状況により各手順に必要な時間は左右されます。

  • 表面のむし歯を取り除く
  • ラバーダム防湿を使用しながら患部を削る
  • 抜髄(むし歯の悪化などで歯の神経を抜く治療)
  • むし歯菌に汚染された歯髄組織を取り除く
  • 根管内を薬剤で洗浄する
  • 削った患部に根管充填材を入れ予後を保つ

治療は麻酔を使用するため、痛みに弱い方はあらかじめ主治医へ相談しておくことがおすすめです。

治療を受ける前に、あらかじめ治療の流れを知っていることで、どのような治療をしているか理解できます。治療の流れを知ることは、治療時の安心感にもつながります。

表面のむし歯を取り除く

治療の初めに行うのは、麻酔をかけて表面に存在するむし歯を取り除く作業です。削ってしまった歯は自己修復ができないため、元の状態には戻りません。

歯髄の感染状況では、歯の神経機能が消失していることもあります。神経が機能していない場合は痛みを感じることはありません。

そのため、麻酔を使用しない可能性もあるでしょう。一方で、歯の神経機能が残っている場合は痛みを感じます。

神経の機能が残っている方には、痛みを防ぐために麻酔が必要です。

ラバーダム防湿を使用しながら患部を削る

ラバーダム防湿
続いて、ラバーダム防湿を使用しながら、患部を削ります。ラバーダムとは、治療する歯としない歯を隔離するための、薄いゴム製のシートです。

細菌や唾液が、健康な歯へ入らないようにすることができます。口腔内の清潔を保つことも可能です。しかし、ラバーダムを使用している際には口呼吸ができなくなるため、鼻呼吸できることが前提になります。

アメリカではラバーダムの使用が標準化していますが、日本ではまだまだ使用率が低い傾向があります。

ラバーダムを使用した治療は保険適用外のため、ほとんどのクリニックではラバーダムを使用していません。

口腔内の感染防止のためにも、ラバーダムの使用状況をチェックすることもクリニック選びのポイントにもなるでしょう。

むし歯菌に汚染された歯髄組織を取り除く

患部を削り、感染が広がらないように、汚染された歯髄は丁寧に取り除きます。治療前にレントゲンやCT検査で根管の状態を把握します。

ニッケルチタンファイルなどの医療器具を使用し、把握している根管から取り除きますが、完全に取りきることは困難です。

また、施術回数は複数回になる場合もあります。日にちを置いて汚染箇所の有無を確認し、取り残しがないように治療を進めていきます。

また、直接病気になっている箇所をみながら作業することは難しく、10ミクロン単位のかなり細かい作業です。

徹底的に取り除くために、肉眼ではなく、マイクロスコープを使用して治療するクリニックもあります。

マイクロスコープを使用することで、肉眼では確認できなかった細部まで治療が可能です。

根管内を薬剤で洗浄する

根管内洗浄
根管内をきれいにしたら、次は薬剤で消毒する作業です。リーマーと呼ばれる器具を使用していきます。

手術の際は、根管内に存在している細菌を消毒し、できるだけ無菌状態を作りだします。口腔内は常在菌がいるため、完全な無菌状態にはできません。

そのため、繰り返し洗い流すことで無菌状態に近づけます。複数回の消毒が必要になるため、治療のため通院が必要です。

削った患部に根管充填材を入れ予後を保つ

削った患部に根管内を埋めるために、ガッタパーチャと呼ばれる充填剤の薬を詰め、経過を観察していきます。

歯に穴が開いたままにならないよう、密封してかぶせ物で補強します。かぶせ物は保険診療か自由診療により、種類が異なるため注意しましょう。

  • 保険診療:銀歯・硬質レジン前装冠・硬質レジン
  • 自由診療:ジルコニア・セラミック・ゴールドなど

ここまでの作業で治療は終了し、今後は定期的な経過観察のための受診が必要です。

また治療後の食事は、ガムやキャラメルのような粘着する食べ物は、かぶせ物が外れる可能性があるため控えましょう。十分な治療ができていない場合は、再治療になるかもしれません。

根管治療の期間や回数

期間や回数
治療回数は1回の場合もあれば、複数回の場合もあります。治療にともなう痛みや、手術後の合併症は治療回数による変動はみられません。

歯の状態に応じて歯科医師と相談し、適切な回数の治療を検討していきます。治療方法は、以下のような種類があります。

  • 抜髄:感染している部分の歯髄を除去する治療
  • 感染根管治療:前回の治療が十分に行われていない、または歯髄が壊死した場合の治療
  • 再治療:2回目以降の根管治療
  • 外科的歯内療法:深くまで感染しており、歯肉を切開して感染部位や根尖(歯根の先っぽ)を除去し、密封する治療

多くの方が複数回の治療をしており、治療期間は1〜4週間程、長くて数ヵ月かかります。ほかにも根管の形がいびつだったり、複雑な形をしていたりすると、抜歯や歯根端切除術が必要になる場合があります。

手術して治療終了ではなく、定期的な診察もあるため、仕事やプライベートとの調整も必要になるかもしれません。

根管治療のメリット

根管治療のメリット
根管治療の手順や回数、治療期間について解説してきました。早い段階で適切な治療を受けることで、痛みの改善や抜歯をしなくて済む可能性があります。
歯の治療は、症状がなくなることで生活や精神面でもよい影響を与えることがあります。ここでは、生活面と精神面でどのような変化やメリットがあるか紹介します。

食べ物が噛みやすくなる

1つ目のメリットは、口の状態が回復することで、歯の痛みや腫れを気にせず食べ物を噛みやすくなることです。

食事を取ることが苦痛となっていた方も、快適に食事を取れるようになるでしょう。生きていくには食事は欠かせず、毎回の食事が修行のように感じていては、生活を楽しむことも困難です。

おいしく食べる行為は、栄養を取れるだけでなく、精神的な安定にもつながります。食事を始めとする生活の質を高めるためにも、口の健康は欠かせません。

ただし、根管治療中の場合は歯の詰め物が取れたりする可能性があるため、固い食べ物やガムやキャラメルのような粘着性のある食べ物は避けましょう。

治療で自分の歯がより長く使える

歯を長く使える
2つ目のメリットは、治療したことにより自分自身の歯が長く使えることです。繰り返しにはなりますが、根管治療は問題がある部分だけ取り除き、抜歯せずに自分の歯を長く使用するための治療です。

普段の生活から歯の健康を守るための活動として、各都道府県では8020運動を推進しています。8020運動とは、年を重ねても自分の歯で食事できるようにするための活動です。自分の歯で食事を楽しめるように、定期的な歯科検診を受診して今の歯を守りましょう。

根管治療の注意点

注意点
根管治療を受ける前に、4つの注意点をみていきましょう。

  • 痛みや歯茎の腫れが生じる
  • 状態によっては抜歯が必要と判断される場合もある
  • 複雑で技術を要する治療のため治療時間が長くなることがある
  • 肉眼で治療した場合は成功率が術前の歯の状態に左右される

治療は麻酔をかけて歯の内部を削っていくため、身体には負荷が生じます。

そのため、治療後には一時的な炎症を起こしますが、薬を使用して数日ほどで改善してくるでしょう。また、手術を行う前の歯の状態により治療期間や成功率も変化します。

痛みや歯茎の腫れが生じる

根管治療後には、痛みや歯茎が腫れるような症状が生じる可能性があります。治療の回数と痛みの関連性は低く、治療を受けるとその都度、疼痛が生じるでしょう。

また、メスを入れたことで口腔内の環境が変化し、歯茎が腫れることもあります。痛みや腫脹は、一時的な症状のため痛み止めと時間で改善していきます。

手術した部位は、免疫力が下がっているため、抗生剤を数日間飲み続けて感染症を起こさないように注意することも必要です。

ですが、薬を飲み切った後でも患部の腫れが治まらなかったり、悪化・膿が出てきたりしたらすぐにクリニックに受診しましょう。

状態によっては抜歯が必要と判断される場合もある

抜歯が必要な場合もある
抜歯は、根管治療で対応できなかった場合の最後の方法です。抜歯をなるべく避けるために、マイクロスコープのような医療機器は進化し、治療の幅も進化してきました。

しかし、以下のような状況であれば、抜歯をせざるを得ない状況になるかもしれません。

  • 歯周病
  • むし歯
  • 感染部位が大きい
  • 歯が折れている

歯周病があったり喫煙習慣があったり、口のケアを怠ったりすることで、病気が発症・悪化します。むし歯のなかでも、以下のむし歯は抜歯になりやすいでしょう。

  • 著しく崩壊が大きいむし歯
  • 顎の骨よりも深く入り込んだむし歯(骨縁下カリエス)

抜歯する方の多くは、できる限り自分の歯を残したいと考えています。しかし、病気になっている歯を残しておくことは健康へのリスクにつながります。

歯の病気がきっかけで命を落とす方がいるのも現実です。抜歯せざるを得ない状況かどうかは、歯科医師の判断しながら決めていきましょう。

歯の喪失は食事への影響もあり、体の栄養状態がよくなかったり、栄養不良による体重減少がみられたりします。抜歯後はインプラントや入れ歯を使用し、口の環境を整えることも大切です。

また、抜歯後は口の中の衛生環境を整えるためにも、根管治療と同様に定期的な受診をしていきましょう。

複雑で技術を要する治療のため治療時間が長くなることがある

根管治療は細かく、複雑な治療です。また、根尖がある方や湾曲している方は、手術においてより高度な技術が必要です。複雑で難しい治療になる程、治療時間が長くなる可能性があるでしょう。
また、一度の治療で根管が完治せず、再根管治療が必要になる可能性もあります。

肉眼で治療した場合は成功率が術前の歯の状態に左右される

医療機器の発達にともない、根管治療にはマイクロスコープやレントゲン、CTなどを併用した治療を積極的に行っています。

直径1mm以下の根管内ですが、マイクロスコープを使用することで患部を拡大し、リアルタイムの画像で確認しながら治療することが可能となってきました。これから根管治療を検討している方は、マイクロスコープを使用して治療しているか否かもクリニック選びのポイントといえます。

まとめ

歯を指差す女性
根管治療の流れやメリット、注意点について解説しました。

根管治療は問題がある部分だけ取り除き、抜歯せずに自分の歯を長く使用するための治療方法です。歯は早い段階で適切な治療を受けることで、痛みの改善や抜歯をしなくて済む可能性があります。

歯の健康は生活の質を上げたり、全身の健康を維持したりするためにも必要不可欠です。

根管治療で歯の悩みを減らし、自分の歯で楽しく食事できるよう、前向きに治療を検討してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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