なぜ顎関節症になるのか、原因が気になる方も多いのではないでしょうか?
本記事では、顎関節症の原因について以下の点を中心にご紹介します!
- 顎関節症について
- 顎関節症になりやすい歯並び
- 顎関節症を予防する方法
顎関節症の原因を理解するためにもご参考いただけますと嬉しく思います。 ぜひ最後までお読みください。
目次 -INDEX-
顎関節症について
顎関節症は、顎の関節やその周囲に生じ、食事や会話など日常的な動作に影響を及ぼすことがあります。
以下では、顎関節症の症状やしくみについて詳しく解説します。
顎関節症の症状
主な症状としては、「アゴが痛い」「口が開きにくい」「アゴが鳴る」などが挙げられます。特に、食事中や会話時に多いようです。また、顎関節症の特徴として、軽度から重度まで症状の個人差が大きいことが挙げられます。
顎関節症の症状は、放置すると進行し、口が開きにくい状態になるため、早めの診断と治療が推奨されます。ただし、「アゴが鳴る」だけで痛みを伴わない軽度の症状の場合、積極的な治療を必要としないこともあります。
顎関節症のしくみ
顎関節症は、顎関節の機能障害により引き起こされる症状群となります。正常な顎関節は、耳の穴の直前に位置し、側頭骨の関節窩と下顎骨の顆頭から構成されています。
これらの間には関節円板があり、クッションのような役割を果たしています。この円板は、顆頭が安定しやすいように中央部が凹んだ形状をしており、顎の動きを滑らかにします。
しかし、何らかの原因で関節円板が正常位置からずれると、顎関節症が発生します。一般的なのは、関節円板の前方への転位となります。この転位により、円板が顆頭の動きを妨げ、顎の開閉時に関節雑音が生じることがあります。
初期段階では「復位性の関節円板前方転位」として、開口時に円板が一時的に元の位置に戻ることがありますが、これには痛みはほとんど伴いません。 しかし、状態が進行すると「非復位性の関節円板前方転位」となり、開口障害や痛みが生じ、最終的には「クローズドロック」という状態に至ります。この段階では、口の開きが困難になります。
違和感を感じたら、医師への相談が早期解決において重要となります。
顎関節症になりやすい歯並び
どのような歯並びが顎関節症になりやすいのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
オープンバイト(開咬)
オープンバイトとは、噛み合わせの際に前歯や犬歯、あるいは第一、第二小臼歯が適切に接触せず、空間が生じる状態を指します。オープンバイトは、奥歯は正常に噛み合っているにもかかわらず、前歯の間に隙間が存在することが特徴となります。
原因としては、骨格的な問題が根底にある場合や顎の成長に異常があることが考えられます。また、日常生活での習慣、例えば舌の癖や唇を噛む癖などが長期間続いた場合も、オープンバイトを引き起こす可能性があります。
この状態は、単に見た目の問題に留まらず、口腔内の健康にも影響を及ぼします。正常な噛み合わせでは、咀嚼力は全ての歯に均等になりますが、オープンバイトの場合、奥歯に過度な負荷がかかることが多いようです。これが原因で、奥歯の過度な摩耗や、顎関節症のリスクが高まります。
また、オープンバイトは発音にも影響を及ぼし得ます。特に「さ」や「た」などの音を発する際に困難を感じることがあります。
八重歯
八重歯は、犬歯が本来の位置から前方や外側へ異常に突出しているか、あるいは生えきっておらず、正常な位置にないことが特徴となります。その結果、上下の犬歯が適切に噛み合わず、不正な歯並びを引き起こします。
八重歯は見た目の問題だけでなく、口腔内の機能にも影響を与えます。 犬歯の位置が不適切だと食物の咀嚼効率が低下する可能性があります。また、不正咬合により、ほかの歯への負担増加や歯列の健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。
八重歯の原因は遺伝的要因や乳歯の落ち方、永久歯の生え方などさまざまなものが考えられます。
ディープバイト(過蓋咬合)
ディープバイトとは、下の前歯が上の前歯によって覆われ、見えなくなっている状態のことです。そのため食事や会話の際に下顎の動きが制限されることが多い傾向にあります。
ディープバイトの影響は、単に見た目の問題に留まらず、歯や顎関節に対する負担の増加につながります。特に、咀嚼の際に下顎が後方に押し込まれるため、顎関節に圧力がかかり、顎関節症のリスクが高まる可能性があります。
このように長期間にわたるディープバイトは、歯の過度な摩耗や顎関節の問題を引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要となります。
出っ歯(上顎前突)
出っ歯は、さまざまな原因によって生じます。中でも、下顎の骨格が小さいことが原因の一つとして挙げられます。この場合、下顎が小さく後退していることにより、顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。
このタイプの出っ歯では、顎関節自体も小さく、耐久性が低下しているため、顎関節円板のズレや痛みなどの問題が起こる可能性が高いです。
生活習慣や癖
生活習慣や癖も顎関節症に関係してきます。
ここでは、顎関節症になりやすい生活習慣や癖を3つご紹介します。
頬杖
顎関節症の発症には日常生活の小さな癖が影響を与えることがあります。その代表的な例に頬杖があります。頬杖をつくと、顎の片側に圧力がかかり、顎関節に負担を与えることになります。
この習慣が長期にわたると、顎関節症のリスクが高まります。さらに、寝転がってテレビを見ることや、ソファに頭を乗せて横になる姿勢も、顎に圧力を加えるため、同様に顎関節症の原因となることがあります。
そのため、日頃から顎に負担をかけるような癖を避けることが重要となります。
例えば、長時間同じ姿勢でテレビを見る際は、顎に圧力がかからないように意識する、頬杖の癖に気づいたら直ちに止めるなどの対策を取ることがおすすめです。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりも顎関節症の原因になる可能性があります。
単に歯に負担をかけるだけでなく、顎の関節や筋肉にも大きな影響を与えます。これらの行動は、睡眠中など無意識のうちに行われることが多い傾向にあります。
歯ぎしりは実際には音がしない場合でも、強く食いしばっている可能性があります。
このような状態が続くと、顎関節症のリスクが高まる可能性があります。
そのため歯科医師に相談してマウスピースの装着を検討することで、歯ぎしりや食いしばりの改善が期待できます。
うつぶせ寝
うつぶせ寝は、多くの人が無意識のうちに行っている睡眠姿勢の一つですが、この姿勢は顎関節症を引き起こすリスクを高める可能性があります。うつぶせ寝の大きな問題は、頭の重さが顎に直接的な圧力を加えることにあります。
成人の頭部の重さは約4〜5kgとされ、この重みが長時間にわたって顎の関節に圧迫を与えると、顎関節の変形やズレを引き起こす原因となります。
さらに、うつぶせで寝る際、首は自然に左右どちらかに傾きます。これは、呼吸を確保するための自然な反応となりますが、この姿勢が長時間続くと、顎に偏った圧力がかかり、顎のバランスが崩れることになります。特に乳幼児の場合、骨が柔らかい状態で偏った方向からの圧力を受けると、下顎骨の変形や顎関節の左右のズレが生じやすくなります。
長期にわたってこのような状況が続くと、顔の骨格にも変形が生じ、顔の非対称性を引き起こす可能性もあります。成長期における顔の変形は、歯並びにも影響を及ぼし、上顎の左右のバランスに差が生じることで、さらなる骨格の歪みを招きます。
成人になってからも、一度傾いた顎は重力の影響を受け続け、徐々にその変形が進行していきます。
このように、うつぶせ寝は顎関節症のリスクを高めるだけでなく、顔の骨格や歯並びにも影響を及ぼす可能性があります。
したがって、顎関節症を予防するためには、睡眠姿勢の見直しや、できるだけ仰向けで寝るように心がけることが重要となります。
スポーツや楽器演奏による顎関節症
歯並びや癖以外にも、スポーツや楽器演奏によって顎関節症が引き起こされる場合もあります。以下で詳しく見ていきましょう。
身体接触の多いスポーツ
身体接触の多いスポーツとしてラグビーやアメリカンフットボール、ボクシングなどが挙げられます。
これらのスポーツは、激しい身体のぶつかり合いが特徴であり、プレイヤーは常に怪我のリスクと隣り合わせです。試合中に下顎に強い衝撃を受けることは珍しくなく、その影響で顎関節症が引き起こされることがあります。
このようなリスクに対処するため、多くのスポーツ選手はマウスガードを着用しています。マウスガードは、歯や顎を保護する装置であり、顎への直接的な衝撃を和らげ、顎関節症のリスクを低減する効果が期待できます。
また、顎が変形したり、骨が折れたりするなどの重大な怪我を防ぐためにも重要となります。
顎を守るためにも、これらの着用が重要となります。
管楽器の演奏者
管楽器の演奏者は、顎関節症のリスクが高いといわれています。管楽器はトランペット、トロンボーン、ホルン、チューバなどの金管楽器や、フルート、クラリネット、オーボエ、サックスなどの木管楽器の2つに分けられます。
そして特に金管楽器、およびサックスなどの木管楽器の演奏者は、顎関節症になりやすいとされています。
管楽器は、大きくて美しい音色を出すために、口の中と顎周囲の筋肉を強く使う必要があります。この顎口腔筋と呼ばれる筋肉群にかかる過剰な負担やストレスが、顎関節症を引き起こす主な原因の一つとなります。
演奏する楽器によって、口の形や使う筋肉が異なるため、それぞれにリスクが伴います。例えば、マーチングバンドなどでの楽器同士の衝突は、顎や歯にダメージを与えることがあります。
顎関節症を予防する方法
顎関節症を予防するために私たちにできることはあるのでしょうか?
以下で詳しく解説します。
顎のストレッチ
顎関節症の予防と改善のためには、顎のストレッチがおすすめといえます。今回は、日常生活で簡単にできる顎のストレッチ方法をご紹介します。
- まず、口を大きく開けます。無理のない範囲で口を開けられるだけ開けてください
もし痛みを感じる場合は、痛くなる前の位置で止め、その状態を15秒間キープします - 次に、口を開けた状態で、下顎を前に突き出します。この状態を15秒間キープしましょう
- 続いて、突き出していた下顎を反対に引っ込めます
口は開けたまま、顔は正面を向けた状態で、このポーズを15秒間キープします - 最後に、口を閉じて下顎を右にずらし、これを15秒間キープします
同様に左にもずらし、15秒間キープします
これらの一連の動作を1セットとし、1日に3セットが目安となります。また、鏡を見ながら行うことで、動きをチェックしやすく、より効果を期待できます。
しかし痛みがある場合は無理をせず、自分のペースで進めることが推奨されます。
日々のストレッチを続けることで、顎関節の柔軟性が向上し、顎関節症の予防や症状の改善が期待できます。
マウスピースを作る
マウスピース治療は、顎関節症の改善や予防法として広く用いられています。マウスピースには、上顎や下顎に装着するタイプがあり、それぞれの患者さんの状態やニーズに合わせて幅広い選択肢があります。
マウスピースは、顎の筋肉の痛みや緊張を和らげる目的で使用されます。そのため、顎関節症の痛みがない場合でも、歯の噛みしめや歯ぎしりの癖がある人には、これらの癖を改善するために着用がおすすめです。
マウスピースを使用することで、症状の軽減が期待できます。
しかし、根本的な治療というよりは症状を和らげるためのサポート的な役割を果たします。
歯列矯正する
顎関節症の原因が噛み合わせである場合は、歯列矯正によって症状の改善が期待できます。 そもそも歯並びや噛み合わせの乱れは、顎関節症と密接に関連しています。 噛み合わせが正常に機能することで、顎の筋肉や関節にかかる負担が減少し、歯や歯茎へのストレス軽減も期待できます。
しかし治療期間は長期に及ぶため、顎関節症に対する即効性は期待できません。
まとめ
ここまで顎関節症の原因についてお伝えしてきました。 顎関節症の原因の要点をまとめると以下のようになります。
- 顎関節症の症状としては「アゴが痛い」「口が開きにくい」「アゴが鳴る」などが挙げられる
- オープンバイトや八重歯、ディープバイト、出っ歯などの歯並びは顎関節症になりやすい
- 顎関節症予防には顎のストレッチやマウスピース、歯列矯正がおすすめ
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てることを願っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。