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根管治療は2本同時にできる?治療の流れや期間など詳しく解説します

 公開日:2024/12/10

根管治療は、長い治療期間がかかったり、治療中や治療後に痛みを伴うなど、一般的なむし歯治療よりも心身への負担が大きくなりがちです。それだけに根管治療はできるだけ早く終わらせたいと感じている方も少なくありません。もし、根管治療を行わなければならない歯が2本ある場合は、同時に治してもらえるとストレスなども大きく減らせそうなものです。そこで今回は、根管治療を2本同時に行うことができるのか、具体的な治療の流れや期間を詳しく解説をします。

根管治療の概要

根管治療の概要 はじめに、根管治療の基本事項を確認しておきましょう。

根管治療とは

根管治療とは、歯の根っこのなかにある管(根管)を対象に、さまざまな器具や薬剤を用いながら、細菌感染した部位を洗浄消毒をする治療のことをいいます。

一般的なむし歯治療では、口腔内に露出している部分を削って、詰め物や被せ物を装着するため、一連の処置をスムーズに進めて行くことができます。その一方で根管とは、髪の毛程の細さしかなく、根管の中は暗くて複雑に入り組んでいるため、治療の難易度は高くなります。

治療の難易度が高く、治療期間も長い方法ですが、自然な歯を残存させることができる治療法として選択されることが少なくありません。

根管治療を検討すべき症状

根管治療は、次に挙げる症状が認められる場合に必要となります。

【症状1】歯がズキズキと痛む(歯髄炎)
安静にしている状態で歯がズキズキと痛む場合は、歯髄炎を発症している可能性があります。歯髄炎は、歯の神経と血管で構成される歯髄に炎症が起こる病気です。進行したむし歯や外傷、重度の知覚過敏が原因になります。

細菌感染を伴わない歯髄炎であれば、消炎処置などで症状の改善もありますが、細菌感染を伴う歯髄炎は、原則、抜髄を含む根管治療が必要となります。歯冠部の歯髄だけが細菌感染している場合は、例外的に歯髄保存療法という治療が適応になることがあります。

【症状2】歯の神経が死んでいる(歯髄の失活)
重症化したむし歯や外傷によって、歯の神経が死ぬことを歯髄の失活(しっかつ)といいます。歯の神経がすでに死んでいるのであれば、根管治療は不要であるように感じるかもしれませんが、実際はそうではありません。

失活した歯髄は細菌によって分解されて腐敗臭が発生します。さらに放置していると、根管内の細菌感染の範囲が広がってしまいます。外傷によって歯髄が失活した場合でも、そのままにしておくことで細菌に感染することがあり、歯が黒ずむリスクがあります。歯髄が失活してしまったケースでは根管治療が必要となりやすいです。

【症状3】歯の根の先に膿の塊ができている(根尖性歯周炎)
むし歯は、歯のエナメル質から象牙質へと進み、神経を侵して歯をボロボロにします。ここまでのプロセスはC1〜C4という4つの段階で評価できますが、むし歯による悪影響はさらに広がります。

C3やC4のむし歯を放置していると、細菌感染の範囲は根管の外へと波及していきます。歯の根の先にある穴(根尖口)から細菌や汚染物質が漏出して、歯の外側に病巣を作ってしまいます。これは根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言われるもので、感染源は根管にあることから、歯の根の先の膿の塊を除去するためには根管治療が必須となるのです。

治療にかかる期間

根管治療は、複雑な処置を要することから、短期間で終わることはありません。軽症で、根管の数も少ないケースでも根管治療のみで2〜3回の通院が必要となります。重症度で根管数が多かったりする場合は、根管治療だけでも5〜8回くらいの通院が必要となることも珍しくありません。保険診療における根管治療の通院は、1週間ごとになるのが一般的なので、1〜2ヵ月の期間は要するものと考えておきましょう。根管治療が完了した後も被せ物治療で数回の通院が必要となります。

根管治療の流れ

一般的な根管治療は、歯髄の抜髄から根管の形成と洗浄の手順で行われます。

・1回目の根管治療(抜髄)
根管治療の1回目では、レントゲン撮影や口腔内診査を行って、むし歯の進行度などを評価します。そのうえで、過去に処置した詰め物や被せ物などを撤去し、むし歯になっている歯質を取り除きます。その過程で根管の入り口(根管口)を見つけ出して形を整え、歯の神経を抜く抜髄を実施します。抜髄が完了して根管内への処置もひととおり進めることができたら1回目の治療は終了です。根管内に薬剤を入れて仮蓋をして次回の診療に備えます。

・2回目以降の根管治療
2回目以降の根管治療は根管をきれいにすることが目的となります。リーマーやファイルといわれる器具で根管を拡大や形成したり、汚染物質をかき出したりしながら細菌の数を減らしていきます。

殺菌作用のある薬剤を使用しながら、根管内の感染を除去ができれば、ガッタパーチャポイントと呼ばれるゴム系素材を使った根管充填を実施します。根管充填が適切に行われたかどうかをレントゲン撮影で確認したら治療は終了です。その後の土台作りやクラウンの製作などは、被せ物治療に含まれます。

・感染根管治療と再根管治療
根管治療は、既往歴から感染根管治療と再根管治療の2つに分けることができます。

感染根管治療は、過去に根管治療を受けたことがない歯に対して適応されるもので、一般的には抜髄から行います。一方で再根管治療は、過去に根管治療を受けたことがある歯が対象で、あらためて抜髄を行うことはありません。そのため再根管治療の方がシンプルな処置となり、治療期間も短いように思われています。

しかし、再根管治療はいくつかの理由から、感染根管治療よりも処置が複雑となり、治療期間も長くなることが少なくありません。過去に根管治療を行った歯は、根っこが脆くなっていることに加え、難治性である可能性も高いことが理由です。治療の手順も過去に装着した被せ物やコアを外し、充填物を撤去することから始めなければならず、根管治療の難易度が高くなることを知っておく必要があります。

保険診療と自由診療の違い

一般的な歯科治療では、保険診療と自由診療のどちらかを選択できます。根管治療も例外ではありません。保険診療の根管治療の場合は、1回の診療で行える処置や治療にかけられる時間、使用できる器材や材料などに制限がかかっています。そのため、保険診療の根管治療では、自由診療よりも通院回数が増えて治療期間も長くなる傾向にあります。治療成功率も保険診療は4〜5割程度、自由診療は9割程度といった違いがあります。

自由診療の根管治療では、歯科用CTによる精密診断が行えます。レントゲンでは2次元の情報しか得られないのに対して、CTなら3次元的な情報が得られるため、根管の数や形態、曲がり方などを正確に把握できます。根管治療を行うにあたっては、患歯以外をゴム製のシートで覆うラバーダム防湿を適応することで、唾液の侵入や器具を誤飲するリスクを取り除けます。また、保険診療でもマイクロスコープを用いて大臼歯の根管治療を行う場合は例外的にCT撮影が認められています。

彎曲した根管に対しては、柔軟性が高いニッケルチタンファイルを使うことで、根管に穴を開けたり、汚れを取り残したりするリスクを軽減することができます。根管充填にMTAセメンを用いれば、むし歯が再発する可能性も大きく減少することでしょう。このように、根管治療は保険と自費で大きな違いがあるため、慎重に選択する必要があります。

根管治療は2本同時にできる?

根管治療は2本同時にできる? 自費診療であれば、根管治療を2本同時に可能なケースもありますが、保険診療の根管治療では、2本同時に処置を施すことはできません。保険診療の根管治療は、1回の診療で行える治療内容や時間に制約がかかっているためです。

保険診療の制約がない自費診療なら2本同時が可能なケースもありますが、1回の診療時間が長くなり、治療費も高くなってしまいます。歯科医院の診療体制や歯科医師の技術などによっては、自由診療の根管治療であっても2本同時は対応できない可能性も十分ありますので、事前に確認しておくことが大切です。

根管治療に時間がかかるケース

根管治療に時間がかかるケース 標準的な根管治療よりも時間がかかるケースについて解説します。

根管の構造が複雑な場合

根管治療にかかる時間は、根管の構造に大きく左右されます。根管が複雑に入り組んでいたり、根っこの先の方で彎曲していたりすると、根管治療に長い時間を要します。

感染が重度の場合

むし歯が進行していて、根管の感染が重度の場合は根管治療に時間がかかります。根管内は暗くて細いことから、感染の範囲が広くて重症である程、清掃するのに手間と時間を要するのです。

再根管治療の場合

過去に根管治療を行った歯で再発した場合は、1回目の根管治療よりも長い時間がかかりやすいです。再根管治療では、以前の治療で装着した被せ物と土台を外し、充填物をきれいに取り除くところから始めなければならないからです。また、根管はすでに拡大や形成が施されており、根管壁は大きなダメージを負った状態となっていることから、再根管治療ではより慎重かつ精密な処置が求められます。これらの理由から再根管治療は、初めての根管治療よりも時間が長くなる傾向にあります。

健康状態による根管治療への影響

根管治療が必要な歯は、むし歯菌による細菌感染症にかかっているため、全身の健康状態に深く関係してきます。例えば、重篤な全身疾患を患っていたり、疲労やストレス、睡眠不足などで全身の免疫力が低下したりするケースでは、通常よりも根管治療に長い時間を要してしまいます。

根管治療中に気をつけるべきポイント

根管治療中に気をつけるべきポイント これから根管治療を受ける予定の方、あるいは根管治療を受けている方は、次に挙げる2つのポイントに注意しましょう。

健康管理

根管治療の時間や効果は、全身の健康状態によって大きく左右されることがあるため、根管治療中は健康管理に配慮しましょう。根管治療中は十分な睡眠と休息、栄養をとり、免疫力が下がらないよう努めることが大切です。

食事における注意点

根管治療中は、患歯に仮蓋が装着されます。この仮蓋は意図的に剝がれやすい状態となっているため、粘着性の高い食べ物や極端に硬い食べ物は可能な限り避けるようにしてください。食事や歯磨きの際に仮蓋が剥がれた場合は、すぐに主治医に相談しましょう。仮蓋の剥がれ方によっては、次の診療まで様子を見ることもありますが、すぐに付け直さなければならないこともあるため、トラブルが起きたら専門家の意見を聞くことが大切です。

根管治療以外の治療方法

根管治療以外の治療方法 根管治療以外の治療方法を2つ紹介します。

インプラント

根管治療が行えない程むし歯が重症化していたり、根管治療を行ったけれど適切な効果が得られなかったりした場合は、抜歯が適応となります。むし歯でボロボロになった歯を抜いて、欠損部をインプラントなどの補綴装置で補うことになります。

インプラントは、天然歯に近い見た目や噛み心地を再現できるため、失った歯の審美性や機能性、耐久性を追求したい方にはおすすめです。インプラントの治療は高額になるため、安価に治療を済ませたい方は、入れ歯やブリッジが推奨されます。

歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)

根尖性歯周炎を発症していて、通常の根管治療が適応でない症例は、歯根端切除術が有効です。歯根端切除術とは、歯の根っこの先と根尖部の病巣を外科的に切除する方法で、外科的歯内療法に分類されます。

歯茎をメスで切開するなどの外科処置を伴いますが、歯を抜かずに治療することが可能です。歯根端切除術を行っても病巣が消失しない場合は抜歯を余儀なくされる可能性も十分にあります。

まとめ

今回は、根管治療の流れや期間、2本同時に治療可能かどうかなどを解説しました。根管治療は、歯髄炎や歯髄の失活、根尖性歯周炎などで必要となる治療で、歯の神経を抜く抜髄や根管の拡大・形成・清掃などが必要となります。根管治療にかかる期間はケースによって大きく異なり、軽症なら2〜3週間、重症の場合は2ヵ月以上を要することも珍しくありません。そんな根管治療を2本同時に行えるのは一部の自由診療のみで、保険診療では1本ずつの治療となることを強調しておきます。いずれにせよ根管治療が必要な症状が認められる場合は、早急に歯科医院を受診しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正 / 一般歯科全般もOK

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