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小児矯正の第一期とは?第二期治療との違いや第一期のみで治療を終える注意点などを解説

 公開日:2025/01/24

小児矯正の第一期治療は、子どもの成長期を活用して歯列の基礎を整える大切なプロセスです。第二期治療と目的や方法が異なるこの治療は、永久歯が生え揃う環境を整える役割を果たします。
本記事では小児矯正の第一期について以下の点を中心にご紹介します。

  • 小児矯正の第一期治療とは
  • 小児矯正の第一期治療と第二期治療との違い
  • 小児矯正の第一期治療のみで治療を終える注意点

小児矯正の第一期について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

小児矯正の第一期治療とは

小児矯正の第一期治療とは

小児矯正の第一期治療は、6歳〜12歳までの乳歯と永久歯が混在する時期に行う矯正治療です。この時期は、歯が生え変わり、顎が成長する大切な段階であり、矯正治療により永久歯が正しい位置に並ぶスペースを確保することが目的です。歯並びの乱れは、顎の狭さや悪い癖(指しゃぶり、口呼吸など)が原因となる場合が多いとされ、これらを早期に改善することで将来的な問題を予防できます。

また、成長期に歯列矯正を行うことで、顎の発育をコントロールしながらリスクを抑え、抜歯の必要性を減らすことが期待できます。治療を早期に始めるかどうかは症例により異なるため、医師の診断が重要です。第一期治療は、将来の歯並びや噛み合わせの土台を整える大切な役割を果たします。

小児矯正の第一期治療と第二期治療の違い

小児矯正の第一期治療と第二期治療の違い

小児矯正には、第一期治療と第二期治療の2つの段階があり、それぞれ目的や方法が異なります。

第一期治療は、乳歯と永久歯が混在する6〜12歳の間に行われ、主に顎の成長を利用して骨格のバランスを整え、永久歯が生えるスペースを確保することを目的としています。この段階では、顎を広げる装置やマウスピース型矯正装置を使用し、歯並びの土台作りを行います。

一方、第二期治療は、永久歯が生え揃う12〜14歳以降に開始されます。第一期治療で整えた土台をもとに、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置を用いて歯を適切な位置に移動させ、歯列を整えます。第一期治療が終了しても、経過観察を経て第二期治療が不要になる場合もあります。

それぞれの治療期間や費用は異なり、第一期治療は約1年半、第二期治療は約2年が目安です。医師の診断をもとに、適切な治療方針を立てることが重要です。

第一期治療で使用する矯正装置の種類

第一期治療で使用する矯正装置の種類

第一期治療で使用する矯正装置にはどのような種類があるのでしょうか。以下に解説します。

床矯正

床矯正装置は、取り外し可能なプラスチック製のプレートで作られた矯正装置で、第一期治療において顎の成長を促すために使用されます。この装置の中央にはスクリューやスプリングが取り付けられており、スクリューを調整することで装置の形状や大きさを変えながら、子どもの顎に負荷をかけて徐々に骨格を広げる仕組みです。

床矯正装置は、症例に応じて設計を変更できる柔軟性が特徴で、個々の治療計画に対応できます。また、取り外し可能なため、食事や歯磨き時の不便が少なく、衛生管理もしやすいメリットがあります。さらに、学校や外出時に装置を外すことができるため、日常生活への影響も抑えられます。

ムーシールドなどで改善が見られなかった場合や、一度治療が成功しても永久歯の生え変わりで再び受け口になるケースにもおすすめです。

インビザラインファースト

インビザラインファーストは、透明なマウスピース型の矯正装置で、第一期治療での使用を目的に開発されました。成長期にある子どもの顎の発育を助け、永久歯がきれいに並ぶための土台作りをサポートします。透明で目立ちにくいため、治療中であることを周囲に気付かれにくく、外見を気にせず歯列矯正を進められるのが特徴です。

取り外し可能なため、歯磨きや食事の際に装置を外せる利便性も魅力で、口腔内を清潔に保つことができ、歯列矯正中のむし歯リスクも軽減できます。また、ワイヤー矯正と比べて痛みや違和感が少なく、快適に治療を続けられる点もメリットです。

ただし、1日20~22時間の装着が必要であり、装着時間を守れない場合は効果が得られないといわれています。また、歯並びの状態によっては適さないケースもあるため、医師の診断が必要です。

プレオルソ

プレオルソは、やわらかいポリウレタン素材で作られた既製の上下一体型マウスピース型矯正装置で、小児の歯並び改善を目的に開発されました。主に3〜10歳の子どもを対象に使用され、学校から帰宅後の1時間と就寝時だけ装着するため、子どもの負担が少なく、生活への影響ができる限り抑えられる点が特徴です。

プレオルソは、間違った舌の位置や口呼吸といった筋機能癖を改善することで、歯列や顎の発達によい影響を与えます。やわらかい素材を使用しているため装着時の痛みがほとんどなく、弾性があるため壊れにくいのもメリットです。さらに既製品であるため、印象採得や装置の調整が不要で、簡単に取り外しができるため口腔内を清潔に保てます。

また、歯並びを整えるだけでなく、舌や口周りの筋肉を鍛える”口腔筋機能療法(MFT)”の効果も期待できます。

ヘッドギア

ヘッドギアは、外部から力を加えることで上顎の成長をコントロールする矯正装置です。特に、成長期の子どもに使用することで、上顎前突(出っ歯)の治療に効果が期待できます。この装置は、上顎の成長を抑制し、顎のバランスを整えるだけでなく、上顎の奥歯を後ろに動かすことも可能といわれています。

ヘッドギアは、歯並びの改善だけでなく、顔貌のバランスを整えるための重要な役割を担います。使用時には装置が外部に露出しますが、主に夜間や自宅での装着が推奨されるため、日常生活への影響を抑えることができます。
患者さん自身が装置の着脱を管理できるため、使用時間を守ることが治療の鍵となります。

ヘッドギアは、成長期を活用し、効果的に上顎の発育を調整するための第一期治療の一環として、適切な症例に用いられる装置です。

リンガルアーチ

リンガルアーチは、左右の奥歯に固定した太い金属ワイヤーを歯の裏側にアーチ状に配置し、その弾力を利用して特定の歯を動かす矯正装置です。固定式で、歯列の裏側に位置するため目立ちにくいのが特徴です。一度に多くの歯を動かすのではなく、数本の歯を対象とする治療におすすめで、”反対咬合”など一部の矯正治療に効果が期待できます。

また、歯が抜けた後のすき間が狭くならないように歯の動きを止める役割や、ほかの矯正装置と併用して治療効果を高める補助的な役割も果たします。特に、生え変わりの時期の矯正治療で使用されることが多いとされ、マルチブラケット装置と組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。

急速拡大装置

急速拡大装置は、子どもの歯列の横幅を短期間で拡大するために使用される固定式の矯正装置です。この装置は、床矯正装置を固定式にしたような形状をしており、床矯正よりも速いスピードで上顎を横に広げることができます。

上顎は、左右の骨がくっついて形成されていますが、急速拡大装置を使用することでこの骨を一時的に広げ、隙間に新しい骨が形成される仕組みです。拡大の期間自体は短いものの、新たな骨が安定するまで装置を数ヶ月から1年程装着し続ける必要があります。

急速拡大装置は、顎が狭く永久歯が正しく並ぶスペースが不足している場合に特に有効といわれています。短期間で効率的に顎の幅を広げることで、第一期治療の土台を作り、後の矯正治療をスムーズに進める役割を果たします。

小児矯正の第一期治療のメリット・デメリット

小児矯正の第一期治療のメリット・デメリット

小児矯正の第一期治療にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下に解説します。

メリット

小児矯正の第一期治療は、乳歯から永久歯への生え変わり時期に顎の成長を利用して歯並びを整える大切な治療段階です。この治療を受けることで、顎が小さく永久歯がきれいに並ぶスペースが不足している場合でも、顎の正常な発育を促し、将来的な歯列不正を予防することができます。

第一期治療の最大のメリットは、永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保できる点です。これにより、大人になってからの矯正治療で抜歯が必要となる可能性を低減でき、矯正期間を短縮できる場合もあります。また、顎の成長を利用するため、歯並びや噛み合わせを自然に整えることが可能といわれています。

さらに、第一期治療は口呼吸の改善や扁桃腺肥大の予防にも効果が期待でき、子どもの健康全般に寄与します。適切な治療を受けることで歯に関するコンプレックスが解消され、自信を持って笑顔を見せられるようになることも大きなメリットです。

デメリット

小児矯正の第一期治療にはさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

まず、治療期間が顎の成長に合わせて長期化することがあり、子どもにとってストレスとなる場合があります。また、装置が固定式の場合は歯磨きがしづらくなり、口腔内を清潔に保つのが難しいため、むし歯や歯肉炎のリスクが高まる点が挙げられます。

取り外し式装置では、子ども自身が積極的に装置を使用する協力が必要であり、親御さんのサポートも不可欠です。特に、装置の管理や装着時間の徹底には家庭での協力が求められます。また、適切な治療時期であっても、子どもの発育状態によって開始を遅らせる場合があり、治療計画が思うように進まないこともあります。
こうしたデメリットを理解し、定期的なチェックと医師との連携を通じて適切に対応することが、第一期治療の成功につながります。

第一期治療のみで治療が終わるケース

第一期治療のみで治療が終わるケース

第一期治療のみで治療が終わる場合にはどのようなケースがあるのでしょうか、以下に解説します。

治療による痛みがある場合

小児矯正の第一期治療では軽い痛みが伴うことがありますが、子どもが強い痛みを訴える場合は注意が必要です。歯茎や骨格の歪みや腫れが原因である可能性があり、無理に治療を続けると歯列の悪化や歯科治療への恐怖心を招くリスクがあります。

痛みが数日経っても引かない、増している、または日常生活に支障を及ぼしている場合は、歯科医院で早急に相談しましょう。子どもの健康と心理的負担を考慮し、必要に応じて治療の中断を検討することが大切です。

第一期の治療で歯並びが改善した場合

第一期治療の結果、歯列が十分に改善され、永久歯が適切に生えるスペースが確保されている場合、第二期治療が不要と判断されることがあります。
この場合、顎の成長が順調で、永久歯が自然にまっすぐ生えていることが前提です。ただし、親知らずの生え方により歯列が乱れる可能性があるため、治療終了後も経過観察が必要です。

定期的に医師と相談し、歯並びや噛み合わせを確認することで、長期的な安定を維持することが大切です。

第二期治療を行うことが困難な場合

第二期治療への移行が難しい場合、転勤や転校、経済的事情、子どもの治療への拒否感などが理由で、第一期治療のみで終了することがあります。
特に小児矯正は保険適用外で費用負担が大きく、治療継続が困難になるケースが少なくありません。このような場合、治療中断が歯並びや噛み合わせに与える影響を考慮し、医師と十分に相談することが重要です。

現状を把握し、可能な対策を検討することで、将来的なリスクをできる限り抑えることを目指しましょう。

第一期治療のみで治療を終える場合の注意点

第一期治療のみで治療を終える場合の注意点

第一期治療のみで治療を終える場合の注意点にはどのようなことがあるのでしょうか。以下に解説します。

永久歯の生え方に影響が出る可能性がある

第一期治療は、永久歯が正しい位置に生え揃う環境を整えることを目的としています。しかし、この治療を中断すると、永久歯の生え方に悪影響が出る可能性があります。第一期治療では前歯を中心とした歯並びを整えるだけでなく、顎の成長を助け、後に生えてくる永久歯のためのスペースを確保する重要な役割を果たします。

治療を早期に終えることで、永久歯が理想的な位置に生えず、歯並びが乱れるリスクが高まることがあります。特に、顎が小さい場合や治療が不完全なまま終了した場合、永久歯が重なって生えたり、噛み合わせに問題が生じる可能性があります。

第一期治療のみで終了を検討する際は、永久歯の生え方や今後の歯列の変化について、医師と十分に相談することが重要です。

後戻りしてしまうことがある

第一期治療の目的は、永久歯が正しい位置に生え揃うための歯列の土台を作ることです。しかし、第一期治療のみで歯列矯正を終了した場合、整った歯並びが成長に伴って後戻りするリスクがあります。この後戻りは、歯を適切な位置に移動させた後、その状態を維持するための保定期間を設けずにケアを中断することが主な原因です。

特に、子どもの顎や歯の成長が続いている場合、矯正装置を外した後の歯列は周囲の力に影響されやすく、元の位置に戻ってしまうことがあります。このため、治療終了後も保定装置を使用したり、定期的な経過観察を行うことが重要です。

第一期治療のみで終了する際には、後戻りのリスクを理解し、歯科医師と相談しながら適切なケアを継続することで、治療の成果を長期的に維持することができます。

まとめ

まとめ

ここまで小児矯正の第一期についてお伝えしてきました。
小児矯正の第一期の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 小児矯正の第一期治療は、6〜12歳の成長期に顎の発育を促し、永久歯が正しい位置に生えるスペースを確保する治療である
  • 小児矯正の第一期治療では顎の成長を利用して骨格を整え、永久歯のスペースを確保する。第二期治療は12〜14歳以降、永久歯が生え揃った後に本格的な歯列矯正を行う段階で、歯の位置調整が主な目的となる
  • 小児矯正の第一期治療を終了する際の注意点として、永久歯の生え方への影響や歯並びの後戻りリスクが挙げられ、治療を中断すると、永久歯が正しい位置に生えず、歯列が乱れる可能性がある。また、保定期間を設けないと、歯並びが成長に伴って元の状態に戻ることがある

小児矯正は、子どもの成長期を活かして将来の歯並びや噛み合わせを整える重要な治療です。
第一期治療と第二期治療の違いや注意点を理解し、医師と相談しながら治療計画を立てることが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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