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歯列矯正による歯の動きの仕組みは?動きやすい方の特徴や治療期間を短くするコツを解説

 公開日:2025/12/15

「歯列矯正はどういう仕組みで歯が動くんだろう?」「治療期間が長くなると聞くけれど、自分は歯が動きやすいタイプなのか知りたい」とお考えの方もいるかもしれません。

実は歯列矯正は骨の代謝という身体の仕組みを利用して歯を動かしており、治療期間は生活習慣などを見直すことで短縮できる可能性があります。

この記事では歯列矯正で歯が動く詳しい仕組みから歯が動きやすい方、動きにくい方の特徴、さらに治療期間を短くするためのコツまで詳しく解説します。

歯列矯正による歯の動きの仕組みと過程

審美歯科
歯並びを整える治療では、装置で歯に持続的な力を加えて位置を動かします。

この力は歯の根の周りにある歯根膜という薄い膜に伝わります。歯根膜は歯とそれを支える骨との間でクッションの役割を果たしている仕組みです。

力が加わると、動かしたい方向の骨が吸収されてスペースが生まれ、反対側では新しい骨が作られます。

この骨の吸収と再生のサイクルをリモデリングと呼び、歯が少しずつ移動していく状態です。この仕組みは、骨折が治るプロセスと似ています。

治療は診断と計画策定から始まり、装置をつけて定期的に調整したり、経過を観察したりして進んでいくでしょう。目標の位置に歯が並んだら、後戻りを防ぐための保定期間に入ります。

歯列矯正での歯の動かし方

歯科衛生士と患者
歯列矯正での歯の動かし方は以下のとおりです。

  • 水平移動
  • 傾斜移動
  • 回転させる
  • 引っ込める
  • 引っ張り出す

これらの動かし方を精密にコントロールすることで、きれいな歯並びを作ります。

それぞれの動かし方について詳しく解説します。

水平移動

水平移動は歯体移動とも呼ばれ、歯の頭部分と根を一緒に平行移動させる動かし方です。歯の傾きを変えずに歯をスライドさせるように動かすのが特徴です。

例えば、抜歯をして生まれた隙間を閉じたり歯列全体を後方へ移動させたりするときに用いられます。歯の軸を保ったまま動かすため、歯根膜全体に均等な力がかかるように調整が必要です。

ほかの動かし方と比べて歯の根まで大きく動かすため、力のコントロールが求められます。理想的な歯並びを作るために欠かせない、基本的かつ重要な歯の動かし方といえるでしょう。

傾斜移動

歯科衛生士と男性患者
傾斜移動はティッピングとも呼ばれ、歯の頭部分に力をかけて傾けるように動かす方法です。歯の根の先あたりを支点にしてシーソーのように歯を傾斜させます。

この動きでは歯の頭部分が大きく動くのに対して、根の先の移動量は少なくなります。例えば、前方に傾いている歯を起こしたり、少し倒れている歯の角度を修正したりする場合に効果的です。

歯全体を平行に動かす水平移動に比べると、少ない力で歯を動かしやすいのが利点になります。特に前歯の角度を細かく調整したいときなど、部分的な修正で頻繁に用いられる動かし方です。

回転させる

ねじれて生えている歯を正しい向きに整える動きを捻転の改善といいます。これは歯の縦軸を中心に歯を回転させる動かし方です。ガタガタした歯並びの原因が歯のねじれである場合に、この動きが必要となります。

歯を回転させる際は回転の中心点を定め、そこへ適切な回転力を加えることが必要です。ワイヤーやアタッチメントといった装置を工夫して、精密な力をかけていきます。

歯の根は一本とは限らず、形状も複雑なため回転の動きはほかの移動方法より時間がかかる傾向があります。また、治療後に元の位置に戻ろうとする後戻りが起きやすい動きなので、治療後の保定がとても重要です。

捻転は見た目だけでなく、歯磨きがしにくくむし歯や歯周病のリスクを高めます。改善することで清掃性が向上し、お口の健康を長く保つことにつながります。

そのためリテーナーなどによる、よりしっかりとした保定が欠かせません。

引っ込める

スキンケア
歯を骨の方向へ沈ませるように動かすことを圧下と呼びます。例えば、伸びすぎてしまった歯を元の高さに戻したり、深く噛み込んでいる状態を改善したりするために用います。

この圧下は歯を動かす方法のなかでも技術的に難易度が高いです。歯の根の先に力を集中させ、骨のなかに歯を少しずつ沈めていくため、繊細な力の調整が不可欠です。

特に奥歯は複数の根があり、強い力に耐える構造なので圧下させるのは簡単ではありません。そのため、歯科用のアンカースクリューという小さなネジを補助的に使用して、効率的に力をかけることもあります。

治療計画には精密な診断が不可欠で、全体の噛み合わせを整え、長期的な口腔内の健康を維持する上で重要です。また歯根吸収といったリスク管理や、患者さん自身の丁寧な口腔ケアも成功の鍵となります。

引っ張り出す

歯を歯肉から引き出す動きを挺出と呼びます。これは、骨のなかに埋まってしまっている歯を正しい位置まで引っ張り出したり、歯が短く見える状態を改善したりするときに用いられる動かし方です。

隣の歯などを支点として、ワイヤーやゴムで継続的に引っ張る力を加えます。力が加わることで、歯の周りの組織が活性化し、歯は骨とともに少しずつ移動します。

歯を引っ張り出す挺出は歯を動かすなかでもスムーズに進みやすい動きです。折れた歯の根を歯肉の上に引き出して、被せ物の土台として利用する際にも応用される重要な技術の一つです。

歯茎のラインを整える審美目的でも行われます。

治療後の後戻りを防ぐ保定も重要で、計画的な力の管理が歯や歯周組織への負担を最小限に抑えます。

歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴

歯が痛いビジネスウーマン
歯列矯正で歯が動きやすい方は以下のような特徴です。

  • 成長期の方
  • 歯が動くスペースがある
  • 症状が軽度である

歯並びの治療において、歯の動きやすさには個人差があります。骨の代謝や歯周組織の状態など、いくつかの要因が関係しています。

歯を動かすための十分なスペースが元々ある場合も、治療が計画どおりに進みやすいでしょう。

それぞれの特徴について詳しく解説します。

成長期の方

歯が動きやすい特徴として、成長期にある若い方が挙げられます。特に10代は、身体の成長とともに顎骨も発達している段階です。

この時期の骨はまだやわらかく、細胞の活動も活発です。そのため、歯並びの治療で力を加えた際の骨の吸収と再生、つまりリモデリングがスムーズに進みます。

成長期に治療を始めることは、身体の成長する力を活かして効率的に歯並びを整えることにつながります。

歯が動くスペースがある

 笑顔の女性
歯が移動するためには、物理的なスペースが不可欠です。顎の大きさと歯の大きさのバランスが取れていて、歯列に余裕がある方は、歯がスムーズに動きやすいといえます。

例えば、元々顎がしっかりしていて歯が並ぶための土台が広い場合です。このような方は、抜歯をせずに歯を並べられる可能性が高くなるでしょう。

逆に、顎が小さく歯が重なり合って生えている場合、歯が動くためのスペースがありません。

その際は、抜歯をして意図的にスペースを作るなどの処置が必要になることがあります。スペースの有無は、治療計画や期間に大きく影響する要素です。

症状が軽度である

歯並びの乱れが軽度であることも歯が動きやすい特徴の一つです。問題が部分的であったり、歯の移動距離が短かったりする場合、治療は早く進む傾向があります。

例えば、前歯のわずかな隙間を閉じたり、少しだけねじれている歯を整えたりするケースです。動かす歯の本数が少なく、移動距離も短いため、歯や周囲の組織にかかる負担が軽減されます。

結果として、治療全体の期間が短くなることが期待できるでしょう。軽度のうちに治療を検討することも、スムーズな治療へのポイントです。

歯列矯正で歯が動きにくい人の特徴

笑顔で歯を強調する若い女性
歯列矯正で歯が動きにくい方の特徴は以下のとおりです。

  • むし歯や歯周病の症状がある
  • 噛む力が強い
  • 歯科医師の指示を守れていない

歯並びの治療を進めるうえで、歯が計画どおりに動かない場合もあります。例えば歯周組織に問題があったり、無意識の癖があったりすると、治療の妨げになる可能性があります。

ご自身の状態を正しく把握し、歯科医師と連携して治療を進めることが大切です。

それぞれの歯が動きにくい方の特徴について詳しく解説します。

むし歯や歯周病の症状がある

むし歯や歯周病がある場合は、歯並びの治療を始める前に、まずそちらの治療を優先する必要があります。

歯周病が進行していると、歯を支える骨が弱くなっているため、力をかけても歯がうまく移動しないことがあります。健康な歯周組織は、歯が動くための土台として不可欠です。

また、治療中にむし歯ができると、詰め物や被せ物の治療によって歯の形が変わってしまうことがあります。その結果、精密に作られた装置が合わなくなり、治療計画の変更を余儀なくされる場合もあります。

噛む力が強い

噛む力が強いことも歯が動きにくい要因の一つです。食事中や無意識に食いしばるときに歯にかかる力は、矯正装置でかける力の何倍にもなるといわれています。

この強い力が、装置による矯正力を打ち消してしまうことがあります。特に、睡眠中の歯ぎしりの癖がある方は、注意が必要です。

強い力は歯の移動を妨げるだけでなく、装置の破損につながることもあります。治療をスムーズに進めるためには、こうした癖を自覚し、必要であればマウスピースなどを用いて対処することも検討するといいでしょう。

歯科医師の指示を守れていない

男性患者と歯科衛生士
歯科医師からの指示を守れていない場合、歯は計画どおりに動いてくれません。

例えば取り外し式の装置で装着時間が不足していたり、補助的に使うゴムを自己判断でやめてしまったりすると、期待した効果は得られません。通院日を守らず、調整のタイミングを逃すことも治療の遅れにつながります。

また、食事の注意点を守らなかったり、清掃を怠ったりして装置のトラブルを招くこともあります。

治すのはご自身であるという意識を持ち、決められたルールをきちんと守ることが、治療をするうえで重要です。

歯列矯正で歯は半年でどのくらい動く?

歯が動くスピードには個人差がありますが、一般的に1ヶ月で1mm程度動くとされています。

これをもとに計算すると半年間でも歯は数mm程度しか動かないということです。この数字はあくまで目安で、治療方法や歯並びの状態によって変化します。

前歯の少しの隙間を閉じるような部分的な治療では、半年もすれば見た目の変化をはっきりと感じられることが多いです。

一方、歯列全体を動かすような治療では、半年ではまだ足りず最終的な状態まではさらに時間が必要となります。

歯列矯正の治療期間を短くするコツ

男性医師と患者
歯列矯正の治療期間を短くするコツは以下のとおりです。

  • 健康的な生活を送って新陳代謝を高める
  • 舌とお口の悪習慣を改善する
  • 歯列矯正の経験が豊富な歯科医院を選ぶ

歯並びの治療は年単位の時間がかかることもありますが、いくつかのポイントを意識することで、治療期間を短縮できることが可能です。

例えば体の新陳代謝を高める生活を心がけたり、歯の動きを妨げる癖を改善したりすることが挙げられます。日々の小さな積み重ねが、治療結果に大きく影響します。

治療期間を短くするには治療を始める段階での歯科医院選びなども重要です。経験豊富な歯科医師のもとで適切な治療計画を立てることが、効率的な治療につながるでしょう。

それぞれのコツについて詳しく解説します。

健康的な生活を送って新陳代謝を高める

歯が動く仕組みは、骨の吸収と再生という新陳代謝によって動いています。そのため、身体の代謝をよくすることは、歯の動きをスムーズにするうえでとても重要です。

バランスの取れた食事を心がけ骨の材料となるタンパク質やカルシウム、ビタミンなどをしっかり摂取しましょう。適度な運動は血行を促進し、組織の活性化につながります。

また、十分な睡眠は身体の回復と再生に不可欠です。規則正しい生活を送り、健康な身体を維持することが、結果的に治療期間の短縮にもつながるのです。

舌とお口の悪習慣を改善する

無意識に行っている舌やお口周りの癖が、歯の動きを妨げていることがあります。

例えば、舌で前歯を押す癖や唇を噛むことがあると装置で歯を動かす力と逆方向の力がかかり、治療の進行を遅らせてしまいます。

癖の改善には、専門的なトレーニングである口腔筋機能療法が有効です。歯科医師に相談し、必要であれば指導を受けながら、正しい舌の位置や筋肉の使い方を身につけましょう。

歯列矯正の経験が豊富な歯科医院を選ぶ

治療期間を効率的に進めるためには、信頼できる歯科医院を選ぶことが何よりも重要です。

経験豊富な歯科医院であれば精密な診断に基づいて、無駄のない効率的な治療計画を立てることが可能です。また、治療中に予期せぬ問題が起きた際も、的確な判断と対応が期待できます。

治療方針や期間、費用などを比較検討し、ご自身が納得できる歯科医院で治療を始めることが、満足のいく結果につながります。

まとめ

歯医者と男性患者

歯並びの治療は、歯に力を加え、骨の代謝を利用して少しずつ歯を動かす仕組みです。歯が動きやすい方もいれば、動きにくい特徴を持つ方もいて、そのスピードには個人差があります。

治療期間をできるだけ短くするためには、健康的な生活で新陳代謝を高めたり、歯の動きを妨げる癖を改善したりすることが大切です。

そして、経験豊富な歯科医院を選ぶことも治療期間を短くする重要なポイントとなります。ご自身の状態をよく理解し、計画的に治療を進めていくことで、理想的な歯並びを手に入れることができるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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