マウスピース型矯正で起こる奥歯のトラブル|放置するリスクや原因、対処法などを解説!
装置が目立ちにくく、食事や歯磨きを普段どおりに行えるマウスピース型矯正。利便性の高さからワイヤー矯正ではなく、マウスピース型矯正を選択する人が増えていますが、メリットばかりではない点に注意が必要です。例えば、マウスピース型矯正では奥歯のトラブルに見舞われるケースは少なくありません。ここではそんなマウスピース型矯正で起こる奥歯のトラブルの原因や放置するリスク、対処する方法などを詳しく解説します。
マウスピース型矯正で起こる奥歯のトラブルとは
歯列矯正中における審美面の問題は、マウスピース型矯正を選択することで解決しやすくなりますが、代わりに奥歯のトラブルに悩まされることもあります。
具体的には、マウスピース型矯正で奥歯が浮いてしまう症状や奥歯が噛み合わない症状などが挙げられます。このような奥歯のトラブルは、すべてのマウスピース型矯正のケースで見られるわけではありません。正しい診断をして適切な治療計画を立てて歯科医師の指示どおりにマウスピース型矯正を進めていけば、回避することも十分可能です。
そのためにはまず、マウスピース型矯正で奥歯が浮いたり、奥歯が噛み合わなくなったりする症状や原因について、正しく理解する必要があります。
マウスピース型矯正で奥歯が浮いている場合
まずは、マウスピース型矯正で奥歯が浮いている症状が現れる原因や放置するリスク、対処法について解説します。
マウスピース型矯正で奥歯が浮く原因
マウスピース型矯正で奥歯が浮く主な原因は、以下のとおりです。
【原因1】チューイーを使っていない
マウスピース型矯正で奥歯が浮くと感じた場合は、マウスピースを定位置まで装着できているかどうかを確認しましょう。患者さんの歯並びやマウスピースの形態によっては、相応の圧力をかけなければ定位置まで押し込むことができません。マウスピースを押し込む力が弱ければ、奥歯が浮き上がった状態となります。こうした奥歯の浮き上がりは、チューイーという補助器具を使用することで回避できます。
【原因2】マウスピースの装着時間が不足している
チューイーを使ってしっかりはめ込んでも、奥歯が浮き上がる場合は、マウスピースの装着時間を確認してください。
例えば、マウスピース型矯正のインビザラインでは、1日20〜22時間の装着が義務付けられています。この装着時間を守れていないと、歯が予定どおりに動かないどころか、歯の後戻りが生じるため、奥歯が浮き上がることがあります。マウスピースの装着時間が不足することで、奥歯が浮き上がりや歯の後戻りに悩まされるケースは少なくありません。
【原因3】マウスピースが変形している
チューイーを使って正しく装着し、装着時間も守っているにも関わらず奥歯が浮いてしまう場合は、何らかの理由でマウスピースが変形しているかもしれません。マウスピースを踏んづけたり、熱湯で消毒したりしていないか、思い返してみてください。
【原因4】マウスピースの順番を間違えている
インビザラインなどのマウスピースは、治療の開始時点ですべて完成しています。また、マウスピースの交換は厳密に決められているのですが、順番を間違えると歯列に合わなくなります。その結果、奥歯が浮き上がってしまいます。
奥歯が浮いている状態を放置するリスク
マウスピースの奥歯の部分が浮いている状態は正常ではありません。奥歯だけではなく、その他の歯にも適切な矯正力が働かず、不適切な力が加わることもあるため、早急に対処しましょう。奥歯が浮いている状態を放置する時間が長い程、後戻りのリスクも高まり、矯正のスケジュールが乱れてしまいます。
奥歯が浮いている場合の対処法
マウスピースの奥歯の部分が浮いている場合は、次の方法で対処してください。
【対処法1】チューイーを使って正しく装着する
奥歯が浮いている場合は、チューイーを使ってマウスピースを正しく装着することです。これだけで奥歯が浮くトラブルが解決することもあります。特に新しいマウスピースに交換した直後は、手だけでしっかり装着するのが難しくなるため、チューイーを使う習慣を身に付けた方がよいでしょう。
【対処法2】マウスピースの装着時間を厳守する
奥歯が浮いている症状に対して、マウスピースの装着時間を厳守することは必須となります。奥歯が浮いているからといってマウスピースの装着を一時的にやめたり、装着時間を減らしたりするのは逆効果です。その他の対処法を実践する場合においても、1日20〜22時間というマウスピースの装着時間をしっかり守ってください。
【対処法3】ひとつ前のマウスピースに戻す
奥歯が浮いている原因がマウスピースの交換順序や交換時期の誤りである場合は、ひとつ前のマウスピースに戻してみましょう。奥歯の浮き上がりが解消されたら、しばらく経過を見てください。その後、適切なタイミングを見計らって、次のマウスピースに移行しましょう。
【対処法4】マウスピースを複製する
マウスピースの変形や破損が原因で奥歯が浮いている場合は、歯科医院で新しいものを複製する必要があります。上記の3つの対処法で奥歯の浮き上がりが改善されない場合は、変形や破損の可能性が高いため、まず主治医に相談してください。
マウスピース型矯正で奥歯が噛み合わない場合
続いては、マウスピース型矯正で奥歯が噛み合わない場合の原因、放置するリスク、対処法について解説です。
マウスピース型矯正で奥歯が噛み合わない原因
マウスピース型矯正で奥歯が噛み合わなくなる主な原因は、以下のどおりです。
【原因1】マウスピースで奥歯が沈み込んでいる
ワイヤー矯正とは異なり、マウスピース型矯正では噛む部分に装置が接触します。マウスピースの厚みは0.5mm程度で、上下合わせると1.0mmの厚みとなることから、安静時にも歯と歯が噛み合い、その分だけ奥歯を沈み込ませる力が働いてしまいます。 歯ぎしりや食いしばりの習慣がある人は、奥歯に対して圧力がかかります。こうした矯正装置による奥歯の沈み込みは、マウスピース型矯正ならではのトラブルとなります。
【原因2】歯の移動距離が長い
マウスピース型矯正は軽度の症例に適した矯正法です。歯を移動する距離が長い症例に使うと計画どおりに歯が動かず、奥歯が噛み合わないという症状を引き起こすことがあります。
【原因3】マウスピースが適合していない
患者さんの歯並びの状態やアタッチメントの位置によっては、マウスピースがしっかりと適合しない場合があります。適切な矯正力が働かず奥歯が噛み合わなくなることがあります。
奥歯が噛み合わない状態を放置するリスク
奥歯が噛み合わない状態で放置し、マウスピース型矯正を続けていると、歯が計画どおりに動かず仕上がりも悪くなります。治療計画の大幅な練り直しやマウスピースの作り直しなども必要になりかねないことから、奥歯が噛み合わない状態が見られたら迅速に対処するようにしましょう。
奥歯が噛み合わない場合の対処法
【対処法1】マウスピースを調整する
上下のマウスピースが当たることで奥歯が沈み込み、噛み合わない状態を引き起こしている場合は、歯科医院でマウスピースを調整してもらいましょう。
上下マウスピースで強くあたっている部分を削るなどして、奥歯への圧力を軽減します。この処置は専門家である歯科医師しか行えませんので、自分で調整しようとするのは避けましょう。
【対処法2】顎間ゴムを使用する
上の奥歯と下の奥歯の間にすき間があることで噛み合っていない場合は、顎間ゴムの使用により解決できる場合があります。上下の顎にまたがるような形で装着する顎間ゴムは、奥歯の傾きや位置の異常を短期間で大きく改善するのに有効です。
【対処法3】ワイヤー矯正を併用する
顎間ゴムで改善できない奥歯の噛み合わせの異常は、ワイヤー矯正を部分的に併用することで適切な効果が得られる場合があります。マウスピース型矯正にワイヤー矯正を併用するコンビネーション治療は、すべての矯正歯科で対応しているわけではありません。
【対処法4】マウスピースを作り直す
治療計画に誤りがあったり、マウスピースの装着方法が不適切だと、奥歯の噛み合わせが改善されない、あるいは噛み合わせの異常が助長されるため、マウスピースの作り直しが必要となります。インビザラインの場合は、マウスピースを作り治すことになるため、矯正を再開するまでに1ヵ月程度の期間を要します。
マウスピース型矯正で奥歯のトラブルが起こる原因
マウスピース型矯正ではワイヤー矯正とは異なる原因で、奥歯のトラブルが生じます。 具体的には、マウスピースの装着時間が不足していて、マウスピースが浮き上がった状態で矯正している、マウスピースを交換するタイミングを間違っていることなどが挙げられます。患者さんの歯並びや噛み合わせの状態によっては、マウスピース型矯正だけできちんと治せないことがあり、ワイヤー矯正を併用しなければならないケースも存在しているため、きちんと診断できる歯科医師に治療を任せることが重要となります。
マウスピース型矯正中の注意点
マウスピース型矯正中の奥歯のトラブルを未然に防ぐために注意すべき点を解説します。
適切な装着時間を確保する
マウスピース型矯正は、マウスピースを1日20〜22時間装着することが義務付けられています。装着時間を守れないと、奥歯のトラブル以外にもさまざまな悪影響が生じるため、マウスピースの装着時間は厳守するようにしてください。これはマウスピース型矯正を成功させるうえでの条件です。
マウスピースを正しく装着する
マウスピースの装着時間を守れても、装着方法が間違っていたら効果は期待できません。マウスピース型矯正は、正しい位置まではめ込むことで初めて適切な効果が得られます。マウスピースの装着が間違っていると、浮き上がりが生じて奥歯のトラブルにつながりかねません。マウスピースを正しく装着できているか不安な場合は、チューイーを使うことが推奨されます。
正しく装着できているか不安な場合は、歯科医院を受診して装着方法を学びましょう。マウスピースが正しく装着された状態を歯科医師と一緒に確認することが大切です。マウスピース型矯正のマウスピースは、1日に何度も着脱する機会があることから、正しい装着方法を身に付けることが重要だからです。
マウスピースの交換時期を守る
マウスピース型矯正では、マウスピースの着脱以外にも患者さんが管理しなければならないことがあります。それはマウスピースの交換です。
例えば、インビザラインであれば1~2週間ごとにマウスピースへと交換しますが、交換時期を誤ると歯が予定どおりに動かず、奥歯のトラブルなどを招いてしまいます。マウスピースの交換時期は患者さんそれぞれで異なることから、この点も主治医に指示をしっかり守る必要があります。
歯科医院で定期的にチェックしてもらう
マウスピース型矯正は、ワイヤー矯正よりも通院頻度が低い利点があります。
インビザラインの場合は、矯正用のマウスピースがまとめて配布されるため、毎月調整のために通院する必要がありません。しかし、通院する必要がまったくないというわけではなく、基本的には2ヵ月に1回くらいの頻度でマウスピースの装着状況や歯並びの状態などをチェックしてもらわなければなりません。
歯科医院でのチェックを定期的に受けることで、奥歯のトラブルなどを未然に防ぎやすくなります。
まとめ
今回は、マウスピース型矯正で起こる奥歯のトラブルの原因や放置するリスク、対処する方法などを解説しました。マウスピース型矯正では、奥歯が浮いたり、奥歯が噛み合わなかったりするなどのトラブルがおこりえます。これはマウスピースの装着時間が足りない、装着方法に誤りがある、難症例であるなど、いくつかの原因が考えられますが、それぞれに対処法が用意されていますので、奥歯のトラブルに気付いたらまず主治医に相談しましょう。奥歯のトラブルを放置していると、さらに深刻な症状を引き起こしかねないため、対処は迅速に行うようにしてください。
参考文献