50代は入れ歯とインプラントどちらがおすすめ?違いやメリット・デメリ ットを解説
歯を失うリスクが高まる50代の方のなかには、入れ歯やインプラントを検討する方もいます。
治療を考えている50代の方へ向けて、入れ歯とインプラントの違いやそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
入れ歯とインプラント治療の違い
入れ歯もインプラントも歯を失ったときに行う治療ですが、治療方法は異なります。
まず入れ歯は、歯を失った部分に人工的に作られた入れ歯を金具で装着する治療法です。
治療には部分入れ歯と総入れ歯があり、それぞれ咀嚼機能や見た目、治療に要する期間や費用が異なります。
入れ歯の治療には手術が必要ありません。インプラントに比べて治療に時間がかからず、一部を除いて保険が適用できるため、時間面や金銭面でのメリットもあります。
しかし、入れ歯は歯茎の上に乗せている状態であるため、咀嚼力の改善はあまり期待できません。
一方インプラント治療は、歯を失った部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。
しっかり固定でき、より天然歯に近い咀嚼機能の改善が期待できることからインプラント治療を行う方も多くいます。
しかし、治療には手術が必要となり、治療後も長期的な受診が必要です。また、基本的には自由診療となるため保険は適用されません。
それぞれにメリット・デメリットや治療を受けるうえでの条件があります。医師の相談のもと、自分に合う治療法を選ぶことが大切です。
50代で入れ歯を使用するメリット・デメリット
入れ歯治療は50代の方に限らず、幅広い年代の方が行っている治療です。その理由は、インプラントと比べて治療がしやすいことが挙げられます。
50代の方が入れ歯治療を行うことには、いくつかのメリット・デメリットがあります。どちらも知ったうえで治療を選択することが大切です。
インプラントと比較しながら入れ歯治療のメリット・デメリットを解説します。
50代で入れ歯を使用するメリット
50代の方が入れ歯をするメリットには、以下のものが挙げられます。
- 自分ですぐに取り外しできるため、異変があったときに対応しやすい
- 手術が必要ないため、年齢や健康状態に左右されず治療できる
- ほとんどの場合保険が適用されるため、費用を抑えられる
- インプラントより治療期間が短い
インプラントの場合、取り付けにも取り外しにも歯茎を切開する手術が必要となります。
また、飲酒・喫煙・糖尿病などの持病の有無や状態によって、治療を受け付けてもらえない可能性もあります。
しかし、入れ歯の場合は自分で取り外し可能で、治療後に炎症や異変を感じたときにすぐに対応しやすいのが特徴です。
治療に手術は必要なく、健康状態に関係なく治療が可能です。入れ歯治療の治療期間は約2〜3ヶ月程で、治療には基本的に保険が適用されます。
そのため、仕事や家庭の事情で長期間病院に通い続けることが困難な方、費用面が心配な方におすすめです。
セラミックや金属などものによっては一部保険適用外のものもあるため、入れ歯治療を検討している方は、治療を受ける前に医師へ確認する必要があります。
50代で入れ歯を使用するデメリット
入れ歯はインプラントに比べて「健康状態を問わず治療を受けられる」「保険が適用される」「治療期間が短い」などのメリットがあります。
しかし、デメリットも存在します。50代の方が入れ歯をするうえで知っておきたい入れ歯のデメリットは、以下のとおりです。
- 見た目の不自然さ
- 装着時の違和感
- 咀嚼機能の低下
入れ歯は、人工歯を金具で固定するため、審美性の改善を期待できません。
正面から見たときに金具が見えてしまうことや、慣れるまで口腔内に違和感があるでしょう。
さらに、取り外しが容易な分、使用していくなかで変形してしまう可能性もあります。
入れ歯が変形することで起こる影響には、見た目の不自然さや食事・会話中のズレや痛みなどが挙げられます。
また、咀嚼機能の低下や噛み合わせが不安定になることもデメリットの一つです。
インプラントは顎の骨に直接固定するのに対し、入れ歯は歯茎に支えられているだけで固定力が弱いことが原因として考えられます。
天然歯に近い咀嚼力や審美性を重視したい方は、入れ歯治療よりインプラント治療の方が合っているでしょう。
50代でインプラント治療を行うメリット
50代の方は今後長く自分の歯を使うため、咀嚼機能や審美性、持続性を重視している方が多い傾向にあります。
入れ歯より機能性が高いことから、インプラント治療を検討する50代の方も少なくありません。
50代の方が、インプラント治療を選択するメリットを4つ解説します。
自分の歯を同じように噛める
インプラントは、入れ歯に比べ咀嚼力がより天然歯に近い状態に改善できます。その理由は、インプラントと入れ歯の装着方法の違いにあります。
入れ歯の固定力は弱く、食事中にズレやぐらつきを感じることもあるでしょう。
一方インプラントの治療では、顎の骨に人工歯根を直接埋め込み、人工歯を装着します。
そのため固定力が強く、天然歯と同じような感覚で食事や会話が可能です。
また、入れ歯のように味蕾を覆わないため、味覚にも影響なく改善できます。咀嚼力を重視したい方にはインプラントの方がよいでしょう。
取り外す必要がない
インプラントは人工歯根とともに固定されているため、自分で取り外すことはできません。取り外す場合は再度手術が必要となります。
入れ歯の場合、食事後や睡眠時に取り外し、こまめに洗浄や消毒を行わなければなりません。
入れ歯を長期間口腔内に入れっぱなしにしてしまうと細菌が繁殖し、誤嚥性肺炎になるリスクが高まるためです。
一方でインプラントは取り外す手間や取り外し忘れることはありません。もちろんインプラントの場合もこまめな手入れは必須です。
人前で食事をすることが多い方、あまり入れ歯を見られたくない方には、取り外す必要のないインプラントが合っているでしょう。
健康な歯を削る必要がない
入れ歯の場合、人工歯をしっかり固定するために周辺の健康な歯を削って調整します。
しかし、インプラントでは失った歯の周りにある健康な歯を傷つけることなく治療することが可能です。
では、なぜ歯を削らないことがメリットなのでしょう。それは、歯を削ると以下のようなデメリットがあるためです。
- 歯の強度が弱まる
- 神経に近づいたことで知覚過敏を引き起こす可能性がある
- 感染症のリスクが高まる
このように、歯を削ることにはリスクがあるうえ、一度削った歯はもとに戻ることはありません。
健康な歯を傷つけることをできるだけ避けることが、歯を守る方法の一つです。
インプラント治療では、歯を失った部分の治療はもちろん、健康な歯も守れます。
長い人生のなかで毎日使う歯を少しでも健康な状態に保つためにも、健康な歯を削る必要のないインプラント治療は、50代の方におすすめです。
長持ちしやすい
インプラントは、入れ歯と同じく丁寧な手入れが必要ですが、正しく手入れができていれば10〜15年程度使い続けることができます。
一方で、入れ歯は5年程度で新しくすることが一般的です。素材によって多少違いはあります。
インプラントは、正しく手入れができていれば長期間使えるうえ、機能の持続力も入れ歯より優れている治療法です。
また、入れ歯は変形しやすいため咀嚼機能の低下が懸念されます。
しかし、インプラントは噛み心地・見た目の自然さともに長期間に渡って快適に使用することができます。
50代でインプラント治療を行うデメリット
インプラント治療のメリットは、とても魅力的に見えるのではないでしょうか。しかし、インプラント治療にもデメリットとなりえるポイントがあります。
人によって重視する部分が違うため、双方のメリット・デメリットを知ることが重要です。
50代の方がインプラント治療を受けるにあたっての、デメリットとなりえるポイントを解説します。
費用がかかる
一般的にインプラント治療は自由診療のため、保険が適用されません。
手術によって治療が行われるうえに、治療後も1〜2年は定期的な検診やメンテナンスが必要となるため、治療費が高額になります。
一方、入れ歯の治療は保険が適用されるケースが多いため、費用面で見ると入れ歯の方が負担が少ないといえます。
しかし、歯科医院や条件によっては一部保険が適用されるインプラントもあるため、インプラント治療を行う際は受診している歯科医院であらかじめ確認することが重要です。
治療期間が長くかかる
通常、インプラントの治療にかかる期間は1〜2年程度です。
検診と治療方針について医師と相談したのち、まずは人工歯根を埋め込む手術が行われ、人工歯根と骨が結合するまで3〜6ヶ月待ちます。
結合したら、アバットメントといわれる歯冠の土台部分を連結させ、治癒するまでさらに1〜6週間待ちます。
歯茎の治療が終わったら、人工歯の型を取って制作し、アバットメントに装着して終了です。
また、治療後も1〜2年程度定期的な検診が必要となるため、早急に治療したい方や長期間の通院が難しい方にはデメリットとなりえます。
インプラント周囲炎のリスク
インプラントは人工歯のため、むし歯になることはありませんが周囲炎になるリスクがあります。周囲炎とは、インプラントの歯周病のようなものです。
インプラントの手入れが行き届いていないと、溜まった歯垢によって歯周病菌が増殖し、顎の骨に固定されたインプラントの周囲で炎症が起きます。
進行するとインプラントが抜けてしまう可能性もあります。予防するには、より丁寧な歯磨きや手入れ、定期的なメンテナンスが大切です。
もしインプラントやその周辺に違和感や炎症を感じたときは、早急に歯科医院を受診しましょう。
50代のインプラント治療後の注意点
インプラント治療を受けた後には、適切な手入れを行うことが重要です。
アフターケアを怠ってしまうと、感染症や炎症を引き起こし、場合によってはインプラントを取り外さなければならないこともあります。
インプラントを長期的に使うためにも、知っておくべき注意点を3つ紹介します。
歯磨き方法を工夫する
インプラントの機能を保ったまま長期間保つには、念入りな手入れとメンテナンスが欠かせません。自分でできる歯磨きの仕方を紹介します。
- 歯ブラシを細かく動かし、歯肉との境を重点的に磨く
- 電動歯ブラシを使用する
- 歯間ブラシやデンタルフロスで歯とインプラントの間を磨く
- 細かい部分はタフトブラシが有効的
- 歯磨剤や洗口剤を使う
これらは日頃の手入れとして行う内容です。インプラント治療には費用がかかるため、治療したインプラントを失わないよう継続的な手入れが必要となります。
この手入れと定期的なメンテナンスを行い、より長くインプラントの機能を維持することを目指しましょう。
薬は医師の指示とおりに服用する
術後に医師から処方された薬は、治療促進のためにも医師のいうとおりに服用する必要があります。
術後に処方される薬は、痛みや炎症を抑える薬・血液凝固防止のための薬・感染症予防など、治療に関わる重要な薬です。
もしほかにも服用している薬があるならば、医師に相談して服用することでリスクを下げられます。
激しい運動を避ける
インプラント治療で大事なことは、インプラントと顎の骨がしっかり結合することです。
激しい運動はその治癒過程を妨げ、もし強い衝撃や圧力がかかってしまった場合、インプラントが動いてズレてしまうことがあります。
また、術後は出血や腫れのリスクが高く、運動によって血流が増加すると回復の妨げになりかねません。
傷口が開いてしまうと、感染症や炎症が引き起こされるなどのリスクもあります。
術後、顎の骨とインプラントが連結するまでは激しい運動を避けることが、治療を成功へ導く一つのポイントです。
特に接触するスポーツ、球技、ランニングやジャンプなどの衝撃を受ける可能性が高いスポーツは術後1週間は避けるようにしましょう。
飲酒・喫煙を控える
飲酒・喫煙はインプラント治療の成功率を下げ、術後にも大きく影響を及ぼすため、治療後の飲酒・喫煙は控えるよう医師から言われることがあります。
多量の飲酒・喫煙は歯茎の健康状態を悪化させ、歯周病のリスクを高めることがあるためです。また、歯茎の治癒の遅れや感染症へのリスクも高めます。
なぜ飲酒・喫煙がいけないのかというと、歯茎が健康な状態でなければ治療の成功率が大幅に下がり、リスクが高まるためです。
健康状態によってはインプラント治療ではなく、入れ歯を選択せざるを得ない状況もありえます。
そのため、インプラント治療を検討している方は、飲酒・喫煙にも気を付ける必要があります。
まとめ
インプラントと入れ歯にはそれぞれメリット・デメリットがあり、歯科医師へ相談したうえで、自身のニーズと健康状況に合わせた治療法を選ぶことが重要です。
まずは歯科医師に相談し、早急に治療を行うことで、50代の皆さんの今後の人生も楽しめるようにしましょう。
参考文献
- 義歯科|東京科学大学病院
- インプラント治療|東京科学大学病院先端歯科診療センター
- 歯が抜けてしまった|神奈川歯科大学附属病院
- 補綴歯科|昭和大学歯科病院
- 入れ歯・義歯|大阪大学歯学部附属病院
- 入れ歯とブリッジどちらがよいのでしょうか?|岩手医科大学歯学部 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野
- 部分入れ歯の上手な付き合いかた|東京科学大学病院
- インプラント|日本歯科医師会
- インプラントのお手入れ|日本口腔インプラント学会
- 口腔インプラント科|北海道医療大学病院
- 口腔インプラント科|東京歯科大学水道橋病院
- 歯科インプラント治療のためのQ&A
- 歯科インプラント治療|東京女子医科大学歯科口腔外科
- 口腔インプラント科|朝日大学医科歯科医療センター
- インプラント治療|聖路加国際病院
- 自由診療に関わる治療リスクと副作用について|神奈川歯科大学附属病院
- 入れ歯とインプラントどちらがよいのでしょうか?|岩手医科大学歯学部 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野
- インプラント|大阪大学歯学部附属病院
- 入れ歯のお手入れはどのようにすればよいのでしょうか?|岩手医科大学歯学部 歯科補綴学講座 有床義歯学分野
- 「インプラント周囲炎の原因となる細菌群集構造を解明」|東京大学大学院農学生命科学研究科
- 加熱による非侵襲的なデンタルインプラント除去法の確率