歯周ポケットを改善させる方法とは
こんにちは。日本歯周病学会認定歯周病専門医の飯島佑斗と申します。
歯周病の重症度の一つの指標として歯周ポケットというものがあります。この歯周ポケットとは歯と歯茎の間にある溝の事で歯周病が進行するとこの溝の深さが深くなっていきます。ではこの歯周ポケットは改善することができるのか、今回はこのテーマでお話をさせていただきたいと思います。
監修歯科医師:
飯島 佑斗(飯島歯科医院・院長)
目次 -INDEX-
歯周ポケットってそもそもどういうもの?
まず歯周ポケットとはどういったものかについて細かく説明していきたいと思います。
下の図のように歯と歯肉(歯茎)の間の溝の事を言います。正常な状態では歯肉溝と言われますが、一度病的な状態になると歯周ポケットという溝を形成します。この歯周ポケットは深さによっては歯ブラシの毛先が届かない状態になってしまうこともあり、その状態が長く続くとどんどんと歯周病が進行してしまうことになります。この歯周ポケットの正常値は3mm未満と言われていて、4mm〜5mm程度が中等度、6mmを超えると重度と分類されています。しかし中には歯肉の厚みが元々厚い方もいるため必ずしも病的なわけではないですが、歯ブラシの毛先が溝の奥まで届きにくいことには変わりないので注意が必要です。6mm以上の重度の歯周ポケットになってくると歯の周囲の歯槽骨と言われる顎の骨が影響をうけて、溶けてしまっている可能性もあるため歯周病専門医による治療が必要な場合もあります。
歯周病の原因ってなに?
そもそも歯周病とはどのような病気なのでしょうか。歯周病とは一部を除きほとんどが歯周病を起こす細菌による感染症と言われています。一般的に知られているお口の病気である虫歯と違い、歯の周囲の歯茎(歯肉)や歯の周囲の骨(歯槽骨)などの歯周組織と言われる部分に問題が起こります。歯周病は歯肉にのみ症状が起こる歯肉炎と歯肉炎が進行して起こる歯周炎に大別されます。
歯肉炎と歯周炎
歯垢などの汚れに潜む歯周病をおこす細菌(歯周病原細菌)によって歯肉にのみ炎症を起こすものを歯肉炎と言います。しかしそれ以外にも原因によって歯肉に病変を形成する歯肉病変と言われるものもあります。一般的に歯肉炎と言われるものです。歯の汚れである歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯肉に起こる炎症のことです。歯周炎の前段階とされています。症状としては歯肉の色調がピンク色から赤色になり、腫れ、出血、痛みなどがみられます。しかしレントゲンでは異常が見られない状態です。腫れが大きい場合には歯周ポケットの検査で異常がみられることもあります。原因としては歯垢(プラーク)ですので、歯肉炎の発症を予防するためには日々のブラッシングや歯科医院への定期検診は非常に重要となります。
歯周炎ってなに?
一般的に歯周病と言うと、この歯周炎を指すことが多いと思います。歯周病をおこす細菌による炎症が歯肉からさらに深部の歯を支える骨(歯槽骨)や歯と骨を結合している歯根膜、セメント質にまで及んでしまった状態です。
歯槽骨の吸収などに伴い歯と歯肉に歯周ポケットという深い溝を形成します。一度歯周ポケットを形成してしまうとその溝の中でかたい歯石(歯肉縁下歯石)ができてしまい、その歯石の表面にまた歯垢が沈着し炎症をおこします。
歯周ポケットは4mm以上の深さのため歯ブラシの毛先が届きづらく、さら歯周ポケットが悪化し、より歯石や歯垢の除去が困難になり悪循環をおこしてしまいます。
歯周炎にもその進行スピードによって種類があります。以前は慢性歯周炎、侵襲性歯周炎と分類分けされていましたが、2017年よりステージおよびグレード分類という分類分けに変更となっています。
症状としては歯周ポケットの形成、歯周ポケットからの膿の排出・出血、歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊、歯が揺れるなど様々な症状を引き起こします。
慢性に症状が経過していると前述の症状を自覚されるようになるまでどんどんと病気は進行し、気づいた時にはかなり重度な状態になっていることもあり、痛みを伴わないことが多いため見逃されがちで気づくと治療が非常に困難になってしまっていることもあります。また進行が急激なタイプの歯周炎は全身的には健康ですが、急激な歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊や歯周ポケットの形成を起こすという特徴があります。
家族内で同様の症状がおこることが多いと言われています。また、一般的には歯垢(プラーク)の付着している量は少なく、発症する年齢も10〜30歳くらいの若い人が多いと言われています。さらにこの歯周病を発症した人には身体の免疫の異常が認められることもあります。
歯周ポケットは治るの?
結論からいうと歯周ポケットは治ります。しかし歯周ポケットの状態から歯周病の手術(歯周外科手術)が必要になることもあります。
比較的浅めの歯周ポケットであれば歯の周囲の歯垢や歯石を除去し、ご自身でのブラッシングがしっかりとできていればそれだけで改善することがあります。重度の歯周ポケットの場合は歯槽骨まで影響がでてしまっているため、歯垢、歯石の除去だけでなく上記の歯周外科手術をしないと治らない場合もあります。
また、歯周ポケットができてしまうような方は一度改善したとしても歯周ポケットが再発するリスクもあるため再発を予防するために適切なメンテナンスが必要となります。
まとめ
今回は歯周ポケットを改善させる方法とは、というテーマでお話させていただきました。まずご自身のお口の中の状況を知り、歯周ポケットができていないか把握することが重要かと思います。歯周ポケットができていないか心配な方はお近くの歯周病専門のクリニックへ受診してみることをお勧めいたします。
歯が痛い症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。