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歯周病の人がインプラントを入れるリスクとは?

 更新日:2023/03/27

こんにちは、東急田園都市線たまプラーザの歯周病専門医が在籍する歯医者「美しの森デンタルクリニック」院長の村野嘉則と申します。
世界中で最もかかっている人が多い病気が歯周病であることをご存知でしょうか? 日本人の成人のうち8割がかかっているという報告もあります。そしてある程度進行しなければほとんど症状を感じないため、自覚されている方が少ないと言う問題点があります。
もしも歯を失ってしまった場合にどのような治療が必要なのか、みなさんご存知でしょうか?取り外しの必要な入れ歯や、失った歯の隣の歯を削って歯を補うブリッジ、顎の骨にチタン製の根を埋め込みその上に歯を作るインプラントなどが考えられますが、健康な親知らずなどの余分な歯があれば抜歯した場所に歯牙移植を行い、歯を作る事も可能です。しかし、入れ歯への抵抗感と違和感、ブリッジでは歯を削る必要があり歯へのダメージを回避したい、歯牙移植に向いている歯が存在しないなどの場合はインプラントを選択する必要が出てきます。
インプラント治療を受ける場合、歯周病に対する治療やコントロールができていないとインプラント治療の失敗などにつながる可能性があります。今回は、歯周病とインプラントにはどのようなリスクがあるのかについてお話ししたいと思います。

村野 嘉則

執筆歯科医師
村野 嘉則(美しの森デンタルクリニック 院長)

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《保有資格》
日本臨床歯周病学会認定医。日本歯周病学会認定歯周病専門医。厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医等。
《自己紹介》
美しの森デンタルクリニック院長の村野です。歯を失う原因である歯周病の治療を専門としておりますが、歯周病は歯だけでなく、全身の健康にも被害を及ぼすのではと懸念されている疾患の一つです。各科の専門医と協力することで、「なるべく歯を残す治療」を心がけています。

 歯周病とは

歯周病はお口の中に棲んでいる歯周病菌がもとで引き起こされる歯茎の炎症です。この歯周病菌は、歯に付着するプラーク(歯垢)の中に棲んでいます。このプラークを毎日のお口のお手入れでうまく落とせていないと、自身の免疫とのバランスが崩れて歯周病を発症してしまいます。
発症してもほとんど症状なく進行する病気のため、気付いた時にはある程度進行してしまうことの多い病気です。進行すると歯を支えている骨が溶けてしまい、重度になると抜歯が必要になる怖い病気です。

 インプラントとは

歯を失った部分に、人工関節や骨折した骨を止めるプレートなどにも使われている生体との相性が良い(生体親和性の良い)チタン製の根を顎の骨に埋め込み、それを土台として歯を作る治療法です。取り外しの入れ歯のような煩わしさや違和感がなく、ブリッジ治療に比べ他の歯への負担も少ない優れた治療の反面、保険外診療のため治療費用がかかることや、外科処置が必要で治療期間も他の治療と比べ長く必要であるなどの特徴があります。また、インプラントが置かれる環境は顎の骨に埋められたチタン製の根に歯肉を貫通させた歯となる装置をお口の中に装着しなければならない点です。お口の中は体内に埋め込まれる人工関節などと違い細菌がたくさん存在する環境であり、常に細菌感染のリスクが伴います。

 歯牙とインプラントの違い

通常、歯は歯茎の中の歯槽骨といわれる顎の骨の中に埋まっている歯根といわれる部分と歯茎から出ている歯冠部に分かれています。歯根と歯槽骨は直接くっついているわけではなく、歯根膜といわれる靭帯で繋がれており歯根膜は歯のクッションのような役割と無理な力が歯にかからないようにする感知器の役目をしています。また、骨の外側には、骨や歯の表面としっかり付着した歯肉でおおわれており歯周病原菌などの細菌が体内に侵入するのを防ぐ役割も担っています。
一方、インプラントには歯根膜は存在せず、骨とは直接結合しています。その為、噛む力をコントロールする感知器がない為に過度の力がインプラントにかかってしまう事があります。また、歯肉とインプラント表面は付着しにくく、付着が弱い為に天然の歯に比べて歯周病原菌が侵入しやすい事が分かっています。

 インプラントと歯周病

これまでお話ししたように、インプラントは歯と比べて細菌に対する防御能力に劣るため歯周病になりやすいことがわかっています。歯周病菌が原因でインプラント周囲に炎症を起こしてしまったもののうち、その炎症がインプラント周囲の粘膜に起きているものを『インプラント周囲粘膜炎』と言い、インプラント周囲の骨にまで炎症が進んでしまったものを『インプラント周囲炎』と言います。通常の歯周病に比べ症状が出にくく進行も早いためインプラントを行なっている方は特に注意が必要です。
また、歯周病治療を受けず、コントロールが不十分なままにインプラント治療を受けた場合と、しっかりと治療を行ってからインプラント治療を受けた場合とでは、インプラントの成功率に差が出る事がわかっています。また、なんとか手術が成功した場合でも、先にお話しした通りインプラントは歯に比べて歯周病菌に感染しやすく、インプラントが長持ちしない結果になってしまうでしょう。

 まとめ

インプラント治療を受ける前には必ず歯周病の状況確認が必要だと考えられます。もしも歯周病が発症している場合、十分な治療とコントロールが達成されていなければ、インプラント治療の成否に関わるからです。歯周病の方がインプラント治療を受ける場合このようなリスクもありますが、絶対に行わないほうがいいと言うわけでもありません。しっかりとした検査と治療および定期検診などによるフォローアップを受けていればインプラント周囲炎のリスクを最小限にすることができます。
日本人の成人のうち8割が歯周病であると言われている中で、術前の歯周病治療が必要となる可能性は極めて高いと思われます。インプラント治療をご検討の際は、歯周病治療に精通した日本歯周病学会認定医・専門医の在籍する歯科医院での検査と治療をお勧めいたします。

この記事の監修歯科医師