歯周病にならない歯磨き法 歯周病専門医の習慣を紹介
こんにちは、埼玉県さいたま市浦和区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。
皆さんは普段歯をどのように磨いていますか?歯を磨くタイミング、ブラッシング(歯磨き)にかける時間、歯ブラシの動かし方など個人によって様々な方法があると思います。
かかりつけの歯科医院で教わった方法でも様々な磨き方があったり、同じ歯科医院さんでも昔はたて磨きを勧められたのに、最近はよこ磨きを勧められたなど結局どうやって磨くのがいいのと疑問に思われている方が多くいらっしゃるかもしれません。
今回は特に歯周病専門医から見て歯周病予防、もちろん歯周病になってしまった方にもオススメなブラッシングの仕方をご紹介していこうと思います。
その前に歯科医、特に歯周病専門医にとってのブラッシングの位置付けを知ってもらいたいと思います。
執筆歯科医師:
中西 伸介(日本歯周病学会専門医)
日本歯周病学会認定歯周病専門医、臨床歯周病学会歯周病認定医等。
《自己紹介》
ナカニシデンタルクリニック院長の中西です。近年、歯周病と全身疾患との関連性もわかってきています。歯周病や虫歯は一度なってしまうとそのあといくら頑張って磨いても治ることがないのが実情です。そこでどうせ治らないとあきらめないで1日でも早めの治療をしましょう。
ブラッシングに使用するものは?
歯ブラシ(電動も含む)、デンタルフロス、タフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス、歯磨き粉、デンタルリンス等の含嗽剤が挙げられます。
ブラッシングにかける時間は?
1回のブラッシングにかける時間も様々で、1分ぐらいで終わらせてしまう方から歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシ、デンタルリンスまでのフルコースで15分以上かけて行う方など様々です。そんなにブラッシングにかける時間ないという方も大勢いらっしゃると思いますので、時間がない方は時間をかけて磨いていただくのは1日1回で大丈夫です。特に就寝前に丁寧に磨いていただくのがオススメです。
定期的なクリーニングに歯科に行くと衛生士さんがブラッシング指導をしてくれて、またブラッシング指導かと思うこともあるかもしれませんが、私たちはこの患者さんがご自身で行っていただくブラッシングをとても重要と考えています。
ブラッシング指導は大丈夫だから、歯周病の治療を早く進めてと思われている方には、歯科医は歯周病予防、治療成功の鍵はブラッシングが握っていると考えていることをまず患者様には知っておいていただきたいのです。歯周病専門のクリニックの中には患者様のブラッシングはきちんとできるようにならなければ治療を行わないと徹底しているクリニックもあるぐらいです。
それだけブラッシングが重要であると考えています。
ブラッシング方法は?
以前はブラシを歯面に当てて上下に擦るたて磨きが良いとされていましたが、多くの研究者がプラークの除去効率などを調べた結果、今は主に2種類の方法が推奨されています(他にも方法はあります)。スクラビング法とバス法をいうものが主流です。極端に言うとスクラビング法は虫歯予防、バス法は歯周病予防と覚えておきましょう。今回は歯周病予防のバス法についてご紹介します。バス法の磨き方は歯ブラシの毛先と歯と歯肉の境目に45℃の角度にあてて、軽く小刻みに動かして磨く方法です。もっと噛み砕いて言うとブラシの先端を歯肉方向に傾け、歯周ポケット内に入れるようにして細かいよこ磨きの振動を与える磨き方です。効率よく浅いポケット内のプラークを除去でき、なおかつ歯肉のマッサージ効果もあります。くれぐれもゴシゴシこすり過ぎないように注意しましょう。他の磨き方でもそうですが強すぎるブラッシングは却って歯肉を傷つけてしまうので注意しましょう。
どのような歯ブラシを買えばいいの?
ブラッシングのグッズに関しては歯科医院で販売しているもの、ドラックストアで購入できるものなど種類が多くあり、基本的にはご自身に合うものを使用していただければと思いますが、確実なのはかかりつけの歯科医院で聞いてもらうと適切なものを紹介してもらえると思います。基本的には特別な時を除いて、歯ブラシのヘッドは大きすぎず、硬さも普通のものがいいと思います。手磨き歯ブラシが良いか、電動歯ブラシが良いかはお好みで良いと思いますが、その他の清掃補助グッズこそ確実に選んでいただきたいと思います。これはほとんどの方が30歳過ぎたら大人の必需品です。誤解されている方が多いのですが、歯間ブラシ、デンタルフロス、これらは歯周病になった方のケアグッズではなく全ての方が適応となります。虫歯も歯周病も多くは歯間部から起こるためその部分のケアが重要となりますが、多くの方は、上手な人は歯ブラシ一つで磨き切れると思いがちです。しかし残念ながらそれは歯科医でも難しいのです。歯ブラシと歯間ブラシ・デンタルフロスはセットであると考えていただきたいと思います。時間がない方は昼間は歯ブラシのみのブラッシングで、就寝前だけでも歯ブラシと歯間ブラシを併用すると良いと思います。
歯周病専門医の習慣を紹介
あくまで歯周病専門医の中でも1個人としての習慣になりますが、ご紹介させていただきたいと思います。数年前まで手磨きの歯ブラシを使用していました。通常患者さんに紹介させていただいている、ヘッドも大きすぎないもの、硬さも柔らかすぎず、硬すぎない普通の硬さのものです。もちろん色々なメーカーものを使用して自分がいいなと思ったものをクリニックにも置かせていただいています。そんな私は今フィリップスのソニッケアー(電動歯ブラシ)を使用しています。もともとは病気や加齢でうまく歯ブラシが握れなくなったり、細かく動かすことのできなくなった方のために開発された電動歯ブラシですが今はどんな方でも取り入れることのでき、なおかつ効率よくプラークを除去することができるアイテムになっています。電動歯ブラシを使い始めてびっくりしたのはプラーク除去効果はもちろん、歯面のツルツルさが全く違います。着色や細かいステインもほとんどつきません。方法は手磨きと同様バス法でに毛先を歯周ポケットに向けますが、細かい振動は電動歯ブラシが行ってくれるので毛先が当たっていればプラークを除去してくれるので負担が減り本当に楽です。新しい電化製品が苦手、自分で動かさないと信用できないなどはじめは少し抵抗ある方もいらっしゃると思いますが、本当に自分が使用してよかったなと実感しています。
今回ご紹介したことをいきなり患者さんに対して全てこのような方法で行ってください、と言うととてもハードルが高くなってしまい結局ブラッシングが変わらなかったということになりかねません。
歯科医師、衛生士は歯や歯周組織の専門家でもあると同時に、問診などをしながら患者さんの生活の背景や、性格、または口腔内に対する意識の高さなど知るように心がけています。そのため一気にハードルを上げるようなことはせず、歯ブラシしか用いてない人に対してはまず歯間ブラシを勧める、いつも同じ場所に磨き残しのプラークがある患者さんにはそこに意識して歯ブラシを当てるようにする、毎回しっかり時間を取りたいのに、仕事が外回りで昼休みに歯磨きの時間がほとんど取れない方には、夜丁寧に磨く方法を伝える、病気などで歯ブラシを握れない、細かく動かすことができない方には電動歯ブラシを勧めるなど、その方の生活習慣に合わせて、無理なく少しずつ取り入れられるように心がけています。
歯科医にとっても割と治療がメインになりがちで、患者さんと歯科医師ではブラッシングに対する重要度が違っているなと思う場面が多くあり、もっともっとブラッシングの重要性を知ってもらいたいのになかなか得られるチャンスがなくモヤモヤしていましたのでこの場を借りて少しでも伝わればいいなと思いました。