【徹底解説】歯周病と口臭をわかりやすく解説!
こんにちは、千葉県市川市市川にある『水野デンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の水野剛志です。
1. はじめに
近年、予防やお口の中を綺麗に保ちたい、治療も審美的に行いたいなど口腔への関心が高まっていることを受け、口臭という問題への関心も増えていることを実感します。そこで今回のブログでは口臭というテーマで少しお話しをしたいと思います。
2. 分類
① 真性口臭症(Ⅰ生理的口臭・Ⅱ病的口臭)
② 仮性口臭症
③ 口臭恐怖症
①真性口臭症
社会的容認限度を超える明らかな口臭が認められるものを指します。会話をしていて, 明らかに不快なにおいを感じるもの(他覚的口臭) です。
Ⅰ:生理的口臭
原因となる疾患がないものを指します。 これは主として舌苔やプラークに由来するもの, すなわち, 口腔内の清掃不良に基づく口臭を指します。
Ⅱ:病的口臭
重度う蝕, 歯周病, 唾液腺の機能低下などによって起こります。お口の中で, 原因が特定できない場合は, 耳鼻咽喉・呼吸器, 消化器などの全身疾患由来の口臭を疑います。
②仮性口臭症(自臭症)
実際の口臭が他覚的にわからない心因性の口臭のうち, 結果説明, カウンセリングで改善できるものを言います。
①口臭恐怖症
真性, 仮性口臭症に対する治療では訴えの改善が期待できず, 精神面での専門的治療が必要なものを言います。
このように口臭と言ってもいくつかの分類に分かれ、ご自身に口臭があると感じてもそれを適切に評価してもらうことが大切です。分類によりその処置方針やアドバイスが変わってきます。
3. 口臭の原因
口腔由来の口臭はさまざまな原因により発生します。舌苔、歯肉炎及び歯周炎、重度の虫歯、食物残渣、適合の悪いかぶせ物や詰め物、清掃不良義歯、唾液分泌低下(薬物、シェーグレン症候群、放射線治療、化学療法によるもの)がそれにあたります。
口腔内には無数の細菌が生息しています。我々は毎日食物を摂取しており、その一部を口腔細菌が代謝、分解する際に様々な臭気が発生します。また口腔細菌、口腔粘膜、唾液タンパク質、白血球、脂肪球、なども細菌による分解の対象となります。タンパク質や炭水化物は酵素や細菌による代謝、分解を受けて有機酸が産生、一部から臭気が発生します。
生理的口臭の最大の発生源となるのが舌苔です。舌苔付着状況と口臭の強さには相関関係が認められています。広い舌背面には多量の細菌が生息可能であり、また外気にさらされることから、多くの臭気が容易に口腔外へと放出されます。
次に口腔由来の病的口臭のなかでもっとも強い関係性を指摘されているのが歯周病です。歯周病に罹患している患者は強い口臭を示すというのは一般的に認められていることでありますが、口臭患者のどのくらいの比率で歯周病に罹患しているかを正確に示した疫学データはあまりありません。また、歯周病罹患程度と口臭リスクとの間に強い相関を認めない報告も多いです。口臭の病因論において歯周病が原因であるとするのは、歯周病患者から採取した唾液が高いVSC(揮発性硫黄化合物)産生能を示すことと、歯周ポケット内で高いVSC産生がみとめられることによります。
グラム陰性菌の歯周病菌は強い臭気を産生することから、歯周ポケット局所ではこれらの細菌の代謝により臭気が産生されるはずであると考えられています。
口腔以外に由来する口臭の原因としては、慢性副鼻腔炎、後鼻漏、鼻腔や上部気道の異物、鼻咽頭膿瘍、慢性扁桃炎、気道感染、肺がんなどの鼻咽頭疾患および呼吸器系疾患、胃食道逆流症、幽門狭窄、胃炎、ピロリ菌感染などの消化器系疾患が考えられる。また、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、肝不全も特徴的な臭気を発生させる。
一方、これらの疾患が無い健康な場合でも、ストレスのかかる状態では口臭が強くなる。さらに女性の性周期と口臭の関係も報告されている。
4、口臭症の治療
口臭症の治療は、適切な診断を行った後、その原因に基づいて行われます。
口腔内に原因があれば清掃指導、疾患治療などをおこなう。見当たらない場合は口腔内以外に由来する口臭を疑い医科へ紹介を行います。
一方、口臭検査により口臭が認められない場合は結果を説明しカウンセリングを行い患者の変化を見ます。
補助的な治療法
プラーク、食物残渣などの機械的除去以外の口臭抑制法としては、化学的コントロールがあげられます。その作用機序は含有成分により口腔細菌の殺菌、消臭、マスキングが主にあげられます。
殺菌:菌自体に働きかける。
消臭:化学的に臭いを分解する。
マスキング:良い香りで悪臭を覆い隠す。
製品としては、歯磨剤、洗口剤、ガム、タブレットなどがあげられ、その含有成分により効果は異なります。これら口臭抑制製品に共通する特徴としては、その効果が短時間しか持続しないということです。口臭の根本的な解決とはならないため特徴をよく理解し補助的に使うことが望ましと考えられます。
5、まとめ
・ 口臭が気になる場合は、まずは歯科医院を受診し相談をおこなうことが薦められる。
・ 口臭症といっても様々でありその対処法はそれぞれ異なる。
・ 口臭の原因の多くは口腔内に問題がある場合が多い。
・ 歯磨剤や洗口剤などの補助的な製品の効果は短く、根本的な治療に至らないため使用する際は理解が必要である。