奥歯がグラグラして抜けた…そのままにしていませんか?
こんにちは、たまプラーザの日本歯周病学会認定歯周病専門医が在籍する歯医者「美しの森デンタルクリニック」院長の村野嘉則と申します。
さて、日本歯周病学会認定医・専門医のブログをご覧になっている皆さんの中で、「歯がグラグラする」「歯が自然に抜けてしまった」という方はいらっしゃらないでしょうか?もしそのような症状がある場合、歯周病が原因となっていることが多いので注意が必要です。また、歯が抜けてしまったところを、そのまま放置している方はいらっしゃいませんか?
「奥歯で目立たない」「反対側の歯で十分噛める」などの理由で放置しておくとお口の中はどうなってしまうのでしょう?
今回は、歯のグラグラの原因と、抜けてしまったまま放置するとどのような影響があるのか詳しくご説明したいと思います。
目次 -INDEX-
なんで歯がグラグラして抜けてしまったのでしょう?
1. 歯周病
歯がグラグラする症状のほとんどは歯周病が原因と言ってよいでしょう。歯周病はお口の中に棲んでいる歯周病原菌がもとで引き起こされる歯茎の炎症です。この歯周病原菌は、歯に付着するプラーク(歯垢)に棲んでいます。
そして、そのプラークをブラッシングなどのお口のお手入れで、うまく落とせていないと歯周病を発症してしまいます。
歯周病はまず、歯の周りの歯肉から炎症を起こして、歯肉が赤くなったり腫れてしまったりする歯肉炎を引き起こします。
ほとんど症状なく進んでしまうため、歯科医院で定期検診などを受けていないと発見が遅れ、さらに進行し歯の周りにある歯を支える骨である歯槽骨が溶けてしまいます。このような状態になったものを歯周炎と呼び、歯を支える骨が少なくなっていきますので、病気が進行すると歯がグラグラと揺れてしまうのです。
「歯が自然と抜けてしまった」という方の多くは、他の歯も歯周病になっている可能性が高いので「まだ噛めるから」と放置している場合はなるべく早くかかりつけの歯科医院か歯周病専門医にご相談されることをおすすめします。
2. 歯ぎしり
歯ぎしりや食いしばりなどをしていると、歯にはご自身の体重と同じぐらいの力がかかると言われています。
この力が長時間、歯に加わることにより歯を支える骨(歯槽骨)にダメージを受け歯がグラグラ揺れてしまうことがあります。
また、一般的に歯ぎしりというと、夜寝ている間にやるものと思う方が多いと思いますが、日中に起きる方もいらっしゃいます。一日に歯と歯が接触する時間は、食事などの時間を入れて20分程度と言われています。
もしも、お仕事中などに歯を食いしばっているような癖があると、歯にも負担がかかってしまいますので注意が必要です。また、歯ぎしりは歯周病を進行させる原因にもなります。歯周病の方が歯ぎしりをすると歯槽骨が吸収しやすくなってしまい、一気に歯がグラグラになるということも考えられます。
3. その他
歯周病と歯ぎしり以外では、歯の被せ物をされていて、その被せ物や土台の部分が緩んできてしまっている場合が考えられます。虫歯などが原因で固定が外れて緩んでしまっている場合、その多くが再度治療をすることで歯を残すことが可能です。歯の揺れに気づいたらなるべく早く受診すると良いでしょう。
また、稀に乳歯が残っていて、その乳歯が揺れてしまっていることもあります。乳歯が残っている場合、生えてくるべき永久歯がもともとないことも考えられます。この場合もなるべく早く歯科医院を受診した方が良いでしょう。
歯が抜けたまま放っておくとどうなる?
1. 歯の移動が起きる
歯が抜けたまま放置してしまうと、抜歯した歯と接していた隣の歯が、歯のなくなったスペースに傾いて倒れたり、噛み合っていた歯が相棒を失い伸びてきたりする、歯の移動が起きて噛み合わせが悪くなってしまいます。
2. 出っ歯になる
抜けた歯が奥歯の場合このような歯の移動が起きた結果、奥歯でしっかり噛めなくなってしまい前歯に負担がかかってきます。そのため、今度は前歯の移動が起きて出っ歯になってしまうこともあります。
3. 虫歯ができやすくなる
歯の移動により歯並びが悪くなると、歯と歯の間に隙間や段差ができて虫歯の原因となるプラークが停滞しやすくなります。その結果、虫歯になりやすくなってしまいます。
4. 歯周病になりやすくなる
虫歯になりやすくなるのと同様、歯の移動によりプラークが停滞しやすくなります。そして、歯の移動によりブラッシングも難しくなるので、歯石が付着しやすくなり歯周病を発症しやすくなってしまいます。また、歯の移動により噛み合わせが悪くなることで、歯に過度の負担がかかるようになると、歯周病が進行しやすくなります。
抜けた部分の治療方法は?
1. ブリッジ
歯の欠損が1本の場合などの場合に最も一般的に行う治療法です。なくなった歯の両隣の歯を削り、橋渡しするようにつなげた装置を入れます。固定性のため自分の歯のように噛むことができて違和感も少ないです。しかし、歯を削らなければならない、土台となる歯に負担がかかる、お掃除しにくいなど、歯の寿命に影響を及ぼすことも考えられます。
2. 入れ歯
いわゆる部分入れ歯と言われる、取り外し式の装置です。ブリッジと比べ、歯を大きく削らずに済むことや取り外して清掃できるため清潔に使用できるメリットがあります。しかし、歯に入れ歯を固定するための金属製の装置があるため見た目が悪くなることや、異物感などの違和感、噛む力が他の装置より劣るなどのデメリットもあります。
3. インプラント
歯のなくなった部分の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、それを土台にして歯の被せ物をする治療法です。歯を削らずに済み、使い心地も違和感なく見た目も悪くありません。しかし、自費治療のため費用がある程度かかることや治療期間が長くなる、外科処置が必要になります。また、歯に比べて歯周病原菌などに弱いためしっかりとしたお口のケアが必要になります。
4. 歯牙移植
歯のなくなった部分に、ご自身の親知らずなどの余分な歯や使っていない歯を移植する方法です。歯を削らなくて済むのはもちろん、インプラントと比べ自分自身の歯を使えるため、生着すれば元の歯と同じように違和感なく使用する事が出来ます。やや治療期間が長くなる、根の中の根管治療が必要になるなどのデメリットもありますが、移植に向いた歯があるのであれば、ブリッジやインプラントよりもお勧めできる治療法です。
5. その他
歯を失ってからの期間が長い場合、歯の移動が起きてしまっている事がほとんどになります。そのため、歯の移動を元に戻すために矯正が必要になったり、歯の寿命に影響を及ぼしかねない歯を削る必要が出たり、神経を取りのぞき傾きや高さを調整する必要が出てきます。なくなった歯を補わないでいると、より治療が複雑化し費用や期間も必要になるのです。
まとめ
数本の歯の欠損ではしばらくの間、特に問題なく生活できるため、ついつい歯科医院に通わず放置してしまったという患者様がよくいらっしゃいます。
歯を失ったまま放置すると残った歯に対し悪影響を及ぼし、歯周病の進行や治療が複雑化する事が考えられますので、なるべく早く治療を始める事が肝心です。
また、それ以前に歯を抜かなくてはいけない状況にならない様に、歯科医院で定期検診を受けるなど予防処置を受けて健康なお口の環境を維持していきましょう。