最新!歯周病の原因
口の中の検診を希望されて来院された患者さんの検査を行い、歯周病と診断される方が多くいらっしゃいます。患者さんに対して歯周病の検査結果の説明を行なっていると、多くの方から「何で歯周病になるのですか?」というご質問を頂きます。
それでは何が原因で歯周病になるのでしょうか?
歯周病の原因を大きく分けると4つにわけられます。それでは紹介いきましょう。
目次 -INDEX-
1.細菌性プラーク
歯周病と一言でまとめても、色々な種類の歯周病があります。診療をしていく中でよく見られるものは、プラーク性歯肉炎、歯周炎になります。
プラークとは、歯や歯肉などに付着する多くの細菌と、その細菌が産生する代謝産物で出来ています。
歯磨きを行わない、歯ブラシが上手く歯に当たらないなど口腔清掃をしっかり行わないと、歯の表面に付着した細菌が増殖し、細菌性プラークが形成されます。細菌性プラークが形成されると、歯肉に炎症が起こります。
歯肉に起こった炎症 は“プラーク性歯肉炎”と呼ばれます。このプラーク性歯肉炎に対して適切な治療を行わないまま放置すると、歯の周りの組織(セメント質、歯根膜、歯槽骨)に炎症が進んでしまい、歯周炎に進行してしまいます。
このプラーク性歯肉炎のまま持続することもあるが、長期間放置すると大部分は歯周炎に移行します。
またこの細菌性プラークをより増加させ、除去を困難にする因子としてプラークリテンションファクター(歯石、不適合修復物・補綴物、う蝕・くさび状欠損、口呼吸など)と患者さんの生活習慣が大きく関与します。
ブラッシングやデンタルフロスの使用など、口の中の衛生管理を徹底し、細菌性プラークを除去もしくは減少させることにより、歯肉の炎症は著しく改善します。そしてプラークリテンションファクターの除去もしくは改善することにより、歯肉の炎症はさらに改善します。
2. 外傷性咬合の影響によるもの
外傷性咬合とは、噛む力が強すぎたり、歯をグラグラ揺らすような横揺れの
異常な力が見られる噛み合わせのことです。この外傷性咬合によって起こる歯の周りの傷を、咬合性外傷といいます。
咬合性外傷は“一次性”と“二次性”に分けられます。
一次性咬合性外傷
歯に過度な咬合力が加わることによって歯周組織に外傷が生じたものです。元々の歯周組織は正常であったものが、噛む力によって傷ついてしまう、というものです。
二次性咬合性外傷
歯周炎の進行によって支持歯槽骨が減少して咬合力負担能力が低下した歯に生じる外傷であり、生理的な咬合力によって引き起こされます。元々歯周病になってしまっている歯茎が、普通の噛む力で傷ついてしまった、というものです。
この2つとも、歯のぐらつき、エックス線写真では歯と骨を繋げている線維(歯根膜)の幅が広くなるような骨の吸収が認められます。歯周病に元々なっている患者さんの場合、歯の周りの組織が破壊されるのをより強くする因子になってしまいます。
外傷性咬合は歯周炎の初発因子ではないが,歯周炎を進行させる重要な修飾因子である 3)。咬合 性外傷に対する治療は,外傷性咬合を除去し,安定した咬合を確立させ,咬合性外傷によって増悪 した歯周組織の破壊を軽減することを目的とする。 咬合調整や固定は,まず細菌感染に対する処置を行ったうえで,明らかに咬合性外傷の症状や徴 候が認められた場合に行うことを原則とする。
3.全身性因子の影響によるもの。また4.生活習慣の影響によるもの
リスクファクターという言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。リスクファクターとは、疾患の発症や進行を規定する因子もしくはその予測に役立つ因子、として定義されます。歯周病にも様々なリスクファクターが存在します。細菌性プラークが歯周病の最大の原因であり、プラークコントロールが最も大切となりますが、歯周病のリスクファクターによって疾患の発症や治療に対する反応が変化します。
それではどのようなものが挙げられるのでしょうか?
・歯周病に影響を与える因子
・歯周病が影響を与える疾患
上記2つに分けることができます。
歯周病に影響を与える因子
●先天的因子
遺伝的リスクファクター
ダウン症、パピヨン・ルフェーベル症候群など
年齢・性別
低年齢層から見られる歯周組織の破壊や、進行が早い侵襲性歯周炎などは、治療を行っても予後不良となることが多くなります。また閉経後の女性におけるエストロゲンの分泌低下に伴う炎症性サイトカインの増加により、歯周ポケットがより深くなったり、より激しい歯槽骨の吸収が見られることがあります。
人種民族差
日本人ではそれほど重要ではありませんが、米国において、メキシコ系、アフリカ系、白人を比較すると、白人が最も炎症が起きにくいと言われています。
●環境および後天的因子
喫煙
喫煙は、歯周病の環境因子からみた最大のリスクファクターです。
喫煙者は非喫煙者に比べて2〜8倍、歯周病に罹患しやすいと言われています。また、喫煙は歯周病治療を行っても、治療した部分を治りにくくします。
糖尿病
糖尿病患者は歯周病になってしまう確率が高いです。特に血糖のコントロールが悪い場合は歯槽骨吸収が重症化した状態の歯周炎になっていることが多く見られます。糖尿病は体全体の免疫機能を傷害し、末梢血管の循環傷害、創傷治癒遅延が起こります。
その症状が歯周炎の重症化と関わっていると考えられています。
常用薬
副腎皮質ステロイド、骨代謝関連薬、免疫抑制薬、炎症性サイトカイン標的治療薬などは、歯周病に影響を与えると言われています。代表的なものはフェニトイン(抗てんかん薬・ヒダントイン系薬)、ニフェジピン(降圧薬・Ca拮抗薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬・カルシニューリン阻害薬)などの常用による薬物性歯肉増殖症になります。
ストレス
現代社会で生活する上で、ストレスは必ず感じるものです。そのストレスが精神の緊張状態(ストレス反応)を強くし、免疫応答に影響を及ぼすと言われています。
その他に肥満やHIV感染などが挙げられます。
歯周病が影響を与える疾患
誤嚥性肺炎
歯周病原性細菌を含めた口腔細菌が唾液などを介して気管を通過し、肺に入ると誤嚥性肺炎などが発症することがあります。
早産・低体重児出産
歯周疾患に罹患していない母親と、中等度以上に進行した歯周炎をもつ母親を比較すると、歯周炎をもつ母親の方が早期低体重児を出産するリスクが高いと言われています。
糖尿病
糖尿病を悪化させる可能性が報告されているものは、歯周炎によって生じるTNF-αというケミカルメディエーターによってインスリンの抵抗性を増大させてしまう点です。
その他にも、血管傷害性疾患、関節リウマチ、日常的な菌血症、慢性腎臓病、非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis : NASH)などの発症、進行に影響を与えるという報告があります。
まとめ
歯周病の原因について色々と述べさせて頂きましたが、歯周病発症の主な原因となっているものはやはり細菌性プラークです。細菌性プラークの除去を行うことが、歯周病治療及び予防の幹となります。毎日のブラッシングなどのセルフケアと、歯科医院における定期検診やメインテナンスでのプロフェッショナルケアを行うことが、歯周病の予防と治療に大切です。