歯周病の治療法について
こんにちは、日本歯周病学会認定医で市川市行徳にあります杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤幹雄と申します。
歯周病は自覚症状が少なく、気が付かないまま進行する恐れがある病気です。また、歯周病がある程度進行すると自然に治癒することは少なく、その進行を止めるためにも歯科医院にて歯周病の治療が必要にあります。歯周病の治療は検査や診断によりそれぞれの治療計画を立てて行っていきます。その歯周病の治療の初期に行われる治療を歯周基本治療と言います。今回は歯周病の基本治療について書いていこうと思います。
目次 -INDEX-
歯周病治療の主な流れ
歯周病の治療は一般的に以下のような流れにて行っていきます。
①歯周組織検査
歯周病の状態を検査します。歯周ポケットや歯肉の炎症状態、歯の動揺度、プラークの付着状態、歯を支える骨の状態などを検査します。
②治療計画の立案
歯周組織検査の結果から、歯周治療に対して必要な治療方法や手順など治療計画を立てます。現在口腔内にあるリスクファクターを取り除く計画や、保存不可能な歯がある場合は抜歯とその後の補う方法の計画などを立てる必要があります。
③歯周基本治療
歯周病治療の初期に行う治療です。後で詳しく書きます。
④歯周組織検査(再評価)
最初に行った歯周組織検査と同様の検査を行い、歯周基本治療の結果、歯周病の病状がどう変化したか検査し再評価を行います。再評価の結果、病状が治癒または安定したら⑨のメインテナンスまたはサポーティブペリオドンタルセラピーへ移ります。まだ歯周病による炎症が残っている状態では、再度基本治療を行うか、次の歯周外科治療を行います。
⑤歯周外科治療
歯周基本治療後においても深いポケットや炎症が残っている場合や、歯周病によって破壊された歯周組織を再生したい場合に行います。
⑥歯周組織検査(再評価)
歯周外科治療を行った部位に対し、外科治療後の治癒の状態を評価するために行います。治療の効果が十分でない場合は原因を分析し、基本治療や外科治療を再度行うこともあります。歯周病の状態が治癒または安定している場合は、最終的な差し歯やブリッジ治療、入れ歯治療、インプラント治療などを行う口腔機能回復治療を行います。
⑦口腔機能回復治療
歯周基本治療や外科治療後に、口腔機能(咬合や審美、発音など)を回復するために、差し歯やブリッジ、インプラント治療、入れ歯治療などを行います。
⑧歯周組織検査(再評価)
最初に行った歯周組織検査と同様の検査を行い、口腔機能回復治療後の歯周組織の状態を最終検査します。病状が安定していない場合は基本治療や外科治療を再度行うことも考えられます。病状が治癒または安定している場合はメインテナンスまたはサポーディブペリオドンタルセラピーへ移行します。
⑨メインテナンスまたはサポーティブペリオドンタルセラピー
病状が治癒の場合はこの状態を長期的に維持するために定期的なメインテナンスを行います。病状は安定しているが、歯周病の進行が休止したポケットが残っている場合は定期的にプラークや歯石の除去やプラークコントロールの状態を把握したり、咬合の調整などを定期的に行う治療によって長期的な歯周組織の病状の安定をはかります。
歯周基本治療の種類
歯周基本治療は歯周病の直接的な原因であるプラークや歯石を取り除くのと、それらが付きやすくなるなどのリスクファクターを排除して歯周組織の炎症の改善をはかる基本的な治療です。そのため、プラークや歯石の付着状態やリスクファクターを明確に把握し除去していきます。
〇ブラッシング指導
歯周病治療の成果に最も大きく関わるのが毎日のブラッシングです。さらに、そのブラッシングが効率よくプラークを除去できていることが重要です。ひとそれぞれ、歯の大きさや歯並び、歯肉の状態などが異なるため、最適な歯ブラシの選択や効果的なブラッシング法を指導することが重要です。
〇スケーリングおよびルートプレーニング
スケーリングとは歯の表面に付着した歯石やプラークを機械的に除去する治療です。
長期的に細菌性プラークや歯石が歯根面に付着していると歯根表面の歯質(セメント質)には細菌やその代謝産物を含むようになります。そのセメント質を病的セメント質といい、これらを除去し、滑沢な歯根表面にすることをルートプレーニングといいます。
歯周ポケットが深いとルートプレーニングが必要になり、歯科局所麻酔下にてスケーリングとルートプレーニングが必要になります。
〇虫歯の治療
虫歯は虫歯菌によって放出された酸により歯の表面が溶け穴が開いていく病気です。その穴にはプラークが溜まりやすく歯周病にも影響することが考えられるため、虫歯を治し、滑沢な歯面に治療することで、プラークが停滞しにくくかつ取れやすい環境にする必要があります。
〇不適合修復物の治療
適合の悪い詰め物や差し歯は適合の悪い部分にプラークが停滞します。歯周基本治療ではプラークや歯石を取り除くのはもちろんですが、プラークが停滞しにくい環境にすることも重要なため、適合不良な詰め物や差し歯はやり直す必要があります。
〇かみ合わせの調整
かみ合わせが強く当たっている歯は歯周病の進行が早まる可能性があります。必要に応じてかみ合わせを調整し、歯に過度な咬合力がかからないようにします。しかし、歯を削ることは最小限にするべきであり、調整が必要であるかどうかを検討する必要があります。
〇動揺している歯の固定
ぐらついている歯はプラークが停滞しやすく、ブラッシングでは取り除くことも難しくなります。また、歯の動揺は歯周病の治癒に影響があるため、暫間的にでも固定する必要があります。
〇保存不可能な歯の抜歯
歯周組織検査にて明らかに保存が不可能なほど歯周病が進行しているまたは、虫歯が進行している歯は抜歯する必要があります。また、保存が疑われる歯に対しては歯周治療を行いながら判断することになります。抜いた部分に対しては歯周治療用装置を装着し、歯周病治療中の機能や審美などを回復します。
〇歯周治療用装置
歯を失った部位に対して仮歯(ブリッジなど)に置き換えることで、多くの歯を失った場合は部分入れ歯などで、歯周治療中の機能的・審美的要素を回復させ、他に残っている歯の負担を軽減させたりします。主には治療中の為の装置であり、歯周病が安定した後は口腔機能回復治療にて、最終的な補綴物(差し歯やブリッジ、入れ歯など)を装着します。
〇歯ぎしりに対する治療
歯周病のリスクファクターである歯ぎしりは歯周基本治療において歯ぎしりの影響を取り除く必要があります。一般的にはマウスピースを装着することで歯ぎしりやくいしばりをしても、歯への負担を軽減させ、歯や歯周病の進行が早くならないようにします。
まとめ
歯周病の治療において必ず行う治療が歯周基本治療です。個々の歯周病の原因を探り、その原因を除去していく治療になります。広範囲に歯周病が進行している場合は時間がかかりますが、歯周組織の安定のためにはとても重要な治療になります。歯周病が疑われる際は日本歯周病学会の認定医/専門医の所属する歯科医院へ相談することをお勧め致します。